さまざまな試みにも関わらず、嫌な事態を避けることが長期間できない場合に生じる無力感。ドメスティック・バイオレンスの被害者の心理状況を説明する上で注目されていた心理学用語が、少女監禁事件の発覚で頻出している。
「なぜ逃げ出せなかったのか」多くの人が感じる疑問への一つのわかりやすい説明であることは確かだ。しかし、有効であるはずの心理学用語はそのわかりやすさから広まると、適切な状況を離れ、次々と自称「患者」を生み出し、陳腐化してきた経緯があることを考えると危険を感じる。近年では、トラウマやアダルト・チルドレンなどがその好例だ。
「ココロの時代」といわれ、占いや心理学が流行る中では、安易にわかろうとしないことこそ大切なのではなかろうか。
2000年2月21日 『よいこの今ドキ語』 毎日新聞東京本社版朝刊4面
松田美佐 まつだみさ
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