「中食(なかしょく)」

 レストランで食べる外食でもなく、自宅で料理して食べる内食でもない。コンビニ弁当やファーストフードの持ち帰りなど、調理や盛りつけをせずそのまま食べられる食料品のことだ。不景気をものともせず、市場規模は急速に拡大して今や五兆円を優に超える。
 中食による「個食」の拡大は家庭崩壊の元凶と嘆く向きもあろう。だが、われらが移動体メディア研究会のメンバーでもある武庫川女子大助教授、藤本憲一氏が言うように、中食としての弁当はモバイル文化の先端であると同時に、古来からの伝統文化なのだ。実際、利用者は意外にお年寄りが多いという。食べる量も少なく、面倒な調理や片づけを気にしなくてよいことがウケているとか。日本人の携帯好きは意外とこんな所に通じているのかもしれない。
(関西大総合情報学部講師)

1999年5月3日  『よいこの今ドキ語』  毎日新聞東京本社版朝刊9面

岡田朋之 おかだともゆき  

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