「globe@4 domes」 岡田朋之


 昨年発売されたアルバムが実に四三〇万枚もの売上げを記録。去る五日、今年度の日本ゴールドディスク大賞のグランプリ・アルバム賞に選出された、小室哲哉率いる人気グループのglobe。その初の全国ツアーが今月一日、大阪ドームの柿(こけら)落としを皮切りに始まっている。「globe@4 domes」と題されたこのライブツアー、東京、福岡、名古屋と続く公演のすべてをドーム球場でおこなうというスケールの大きさだ。そのうえチケットはすべて完売しているとのこと。初日の大阪ドームにも、主催者発表で三万六千人の聴衆が集まった。
 規模の大きさは会場のキャパシティだけではない。舞台セットもおびただしい数のビデオプロジェクターや照明などを天井近くまで組み上げ、それをサポートする調整卓も、まるでテレビ局をそのまま移したかのようである。マルチメディアを標榜(ぼう)する日本最大の某通信企業が冠についているだけあって、その名折れにならぬようにといったところか。画面上にはさまざまなビデオクリップや、演奏するメンバーのアップが映し出されるほか、大型ワークステーションによるリアルタイムのコンピューターグラフィックスまで用意されるほどの凝りようである。
 二時間半近くにおよんだステージはこれらのセットを縦横に駆使し、終盤には小室の弾いていたハモンドオルガンを空中に飛ばして爆発させるなど、なんでもありの世界。小室自身が「ディズニーランドやスピルバーグの映画のようなものを望んでいた」というだけあって、ほとんどテーマパークさながらといったところだろうか。売れ筋ということで何かと皮相的に取り上げられがちな彼らではあるが、これだけ集まった聴衆をすっかり堪能させるだけのものを見せるところはさすがだと言えよう。
 その一方で、ツアーにあわせて発売されるニューアルバム「Faces Places」のなかには、「プリクラ」をテーマにした曲や、「ベル友」を思わせる歌詞など、最大の支持層である少女たちのいまの生活感覚に訴えるモチーフが随所に織り込まれていて、そのあたりの気配りの細やかさも抜かりがない。
 そういった意味も含めて、小室哲哉は新しいメディアやテクノロジーがもたらす夢というものをエンターテインメントとして私たちにわかりやすく提示してくれる、今日では貴重な存在なのかもしれない。インターネットバブルがはじけたといわれたり、勇んで購入したパソコンが満足に動かず、そのまま死蔵してしまう人が増えたりと、ひと頃のマルチメディアをめぐる熱気に疑問が投げかけられつつある昨今、オピニオン・リーダーとして彼が果たす役割は小さくないともいえる。
 今後はアジア各国で同様のツアーを計画しているというが、はたして海外でどこまで通用するか。今年も彼らの動きは侮れないようだ。

1997年3月14日  『メディア人間学』  京都新聞朝刊16面

おかだ・ともゆき  

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