キャプテンラヴ

あたし、傷つく覚悟ならあるわ。
今、あたしの胸の中には、一つの大きな想いがあるの。その想いに、全力で立ち向かっていくって、決めたの。

失敗したら傷つくとか、そんなことも、考えていない。保証も、約束も、何もいらない。
あたしの武器は本気ってことだけ。それだけで立ち向かっていくって決めたの。
怖いなんて思わないわ。
その人はきっと、あたしの想いと真っ正面から立ち向かってくれるから。本気でね。

−上遠野文絵『キャプテンラヴ 愛のギターオンファイアー!』


プレイステーションでの表現の限界ギリギリに挑んだ作品。CGとかではなくて、文章を含めて。
真っ向から、恋愛論を取り上げた、驚異のゲーム。モテるための10の法則とか言うバカネタではなく、『人を愛するとは』『人を好きになるとは』そう言うことを、正面から捕らえたゲームなのです。

ある意味、非常に哲学的なゲームと言えましょう。

パッケージからは、お気楽特撮モノにしか見えないし、どう見てもセンスのいいデザインとは言えず、営業や広報の拙さもあって、地に埋もれてしまった、代表的な名作と言えましょう。発売元の東芝EMIがソフトウェア事業から、総撤退と言うのも、広報や営業の拙さにつながったのかも知れません(つまり、撤廃する部署に金や人員は割けないと)。

お気楽なパッケージとマニュアル。そして、だめ押しのように『雑君保プ』先生の四コマが、2編収録されており、否が応でも、コメディーの域を超え、ギャグゲームであるかのような印象を与えます。が、電源を投入し、ゲームを始めると、それらは全てフェイクであったことに気がつきます。

と言うのは、少し誇張されていますが、全体を通して、コメディー部分は箸休め程度でしかなく、全編重く、そしてどうにも熱いのです。恋愛シュミレーションのぬるま湯のような恋愛に憧れ、エロゲーのような愛を至高とするような貴方に必要ななのが、このゲームです。

魂かけて、人を愛したことがありますか。愛する人のためなら、他人を、しかも好意を持ってくれている人を傷つけられますか。そんな、めちゃくちゃ重たいゲームです。

ただし、ヒロインをタレントの遠藤久美子さんが、演じているため、ひじょーに間抜けです。が、ゲームを進めているウチに、愛美って、こういう感情の起伏が薄い、鼻の詰まった声で喋りそう。と思ってしまえるから、アラ不思議。キャラクターとストーリーに魅力があれば、役者の演技力なんて、無意味なのね。と考えされられます。

さて、ゲームの方ですが、一応、ギャルゲーに入ります。
んが、通常のギャルゲーが、恋人同士になるまでをゲームとしているのに対して、このキャプテンラヴは、恋人同士になってから、物語が始まります。女性と恋愛に深いトラウマを持つ主人公が、初めて好きになった女性であるヒロイン愛美。そんな二人の仲を裂くかのように、主人公のまわりに女性が現れます。

この女性達もまた、恋愛に対して、深い傷を負っているのです。そして、同じ臭いのする主人公に引かれていくのです。そう、愛美との愛を成就するためには、彼女たちを振らなければなりません。彼女たちの傷は、作中で語られます。さらにその傷をえぐるような事をしなければならないのです。

一話、一話、丹念に描かれており、ファンタジックな恋愛ばかりを描いている、そこいらのヌル恋愛ゲームとは、訳が違います。まさに、真剣勝負。そしてそれは、「論撃」と言うバトルシステムで表現されています。いわば、口げんかとも取れるのですが、己の信じる恋愛観を武器に、相手を論破していくのです。

それらのことを除外して、単純にゲームとして見ても、演出や構成の巧さ、キャラクターの造形。十分に名作と言えるでしょう。
キャラクターボイスのキャスティングも絶妙です。エンクミ以外は…ですが(笑)。

私のお薦めは、カミィこと上遠野文絵の話です。『本気の想いをぶつけて、本気の想いを返してくれるのなら、その痛みはただの痛みじゃない。今の私には、傷つく覚悟がある。』(うろ覚え)、ずっしりきましたわ、コレ。

さて、本気の想いをぶつけることの出来る、友人、恋人、家族がいますか?。その人は、本気でその想いを、どういう結果でアレ、返してくれますか?。ゲームやって、これほど考えされられたゲームは、後にも先にもコレだけです。

私は、非常に恋愛感情の薄い人間ですが、コレのおかげで真の恋愛と言うモノの、末端を覗けたような気がします。
今なら、再販で1500円。1500円で、コレだけの体験が出来るのならば、安すぎです。
お勧めです。心の底から、万人に、老若男女に進めることが出来ます。

第一話とエンクミさえ、乗り越えられたら、感涙と深い感慨の洪水で、貴方の胸はいっぱいになることでしょう。
パールハーバーや、FF]で感動できるような人なら、なおいっそう知って欲しいと思います。




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