終幕:最後の妖怪大決戦


「小十郎さぁん、お待たせしましたぁ。」
脳髄をほどいてしまいそうなほど、甘ったるいストロベリィミルク声が、背中に飛びついてきた。
この緊迫した空気をものともせず、縦ロールの髪を揺らしながら、屈託のない笑顔の女の子が、抱きついている。
まゆきにも匹敵する、蝋のような白い肌。あんずのような愛らしさと、那水にも劣らない、たわわな胸。
そして、日本人の憧れ、天然のハニーブロンド。その名の通り、蜂蜜のような、しっとりとした金髪。

あれ、背中から…背後には、窓しかないハズ…この子どうやって…
疑問の答えを捜すほど、落ち着いた雰囲気ではない事に気がつくのに、時間は必要なかった。

空気が痙攣している。月でさえ、これから起こる惨劇に耐えかねて、目をそらし、雲の中に隠れていった。しかし、意外と野次馬らしく、少し顔を覗かせては、また隠れると言うことを繰り返している。
「ちょっと、あんたなにしてんよ。小十郎からはなれなさいっ」
「そーだよ、あんずのお兄ちゃんに何してるの。」
どこからか訪れたライムという異国の女性は、あんずとすずめの凶眼をも無視し、抱きついたまま、器用に正面に回り込む。
いわゆる、お姫様だっこ状態。
「小十郎さぁん、あの日の約束覚えていますかぁ。大きくなったらぁ。やんやん。」
蝋細工のような白く透き通った頬に、ほんのりと朱が入る。何とも言えない愛らしさが、押さえきれない感情がこみ上げてくる。

「ふーん」
ああ、空気ってこんな音を立てて割れるんだねぇ。ああ、明日の朝日は拝めるのかなぁ。
「朝日なんて、必要ないよ。小十郎はずっと夜の世界で、私と一緒に永遠に生きるの。」
あいてっ…き、牙ぁ。か、噛みついたぁ。
「ふふ、あと一度の口づけで、小十郎は私たちの仲間。第五世代のヴァンパイアとなるのよ。私のぉ、お父様はぁ、クランのプリンスですからぁ、不自由はさせませんよぉ」
すずめの一撃で、ライムの首が在らぬ方に曲がり、電撃、吹雪、重力波の波状攻撃。
「いたいですぅ。いきなり、ナニするんですかぁ、もぉ〜」
ふくれっ面で、折れた首を付け直すライム。うーわー。

「おーい、おう、小十郎。嫁に来たぞ。」
は、どちら様。
「なに言ってんだ。小学校の頃、約束したろう。ラウラだよ。って、今日満月かぁ」
・・・・て事は。小さい頃手術したとか言うビクトリアちゃんとかも。
「約束・・・守ります。ビクトリア、小十郎と結婚します。」
おれって、何とかランドのプリンスか。体は伸びないぞ。まぁ、一カ所だけは伸縮するけど。
「半助っ、小十郎を里へ。事の次第を長へ。」
「こうなったら戦となっても仕方在りません、」
おお、妖怪大戦争、水木先生大喜び。
「反省がないっ」
「縦回転っっっっっっっ」
跳ね。アッパー気味の掌打。月が頭上を通り過ぎ、頭の上を床が通り過ぎていく。このまま月にでも逃げたいよ。
「小十郎っ、迎えに来たよ。」
「ヤダな忘れたの。もう、時間がないの。さあ、月に帰るわよ。」
もしかしてかぐや姫さんデスかぁ。も、何も考えない。何も言わない。



あとがきという名の保身
若干の手直しをしたとはいえ、まさに「認めたくないものだな、若さ故の過ちというモノは」状態。
オチてないしねぇ。ちゃんと起承転結つけて書いた初の代物だから…って、ちゃんと起承転結ついてないんだってば(泣)。
たぶん、というか確実に、ちまちまと書き足し、書き直していくと思います。


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