これも、フェアリテールハードカバー・ブランドで、映画の広告のような、広告を出し、ちょっと話題となりました。各雑誌の編集や、広報の一言コメントを広告紙面に載せるという手法です。アメリカ映画で良くやってますね。「これは〜〜を越えた。雑誌編集長」とか。
さて、このゲームのパーツの一つ一つは、良くできていて、大変面白いのですが、全部合わせると、つまんないゲームと言う不思議な作品です。まるで、顔のパーツ一つ一つは、美しいのに、顔全体としてみると、なぜか不細工に見えてしまうような、不思議な印象です。
映画界を舞台に、しがない私立探偵が、猟奇殺人を解決する。と言うストーリーです。犯人像が二転三転、容疑が濃厚になると、殺されると言う推理小説そのものの展開をしていきます。犯人もあっと驚く人物で、横溝正史もビックリです。
で、猟奇殺人、異常心理、狂気と言う三段論法が成立するように(現実世界では成立しませんが)、このゲームでも、狂気について触れられています。ですが、目立った、際だった考察や、意見はなく、ありふれた壊れてしまった殺人者の域を出ていません。推理モノとしては、良くできているモノの、猟奇、狂気モノとしては、今ひとつです。
狂気に対する考察というか、狂気に関して、ちと勉強不足の感は否めないでしょう。まぁ、一般の認識にあわせたのかも知れませんけど。その他の小物はよく調べてあります。麻薬のダウン系、アッパー系を使い分けていたりして、素晴らしいです。
ヘロインは、モルヒネや阿片すら生成されるので、ダウン系で、微睡みにちかい感覚に取り憑かれます。つーか、実際寝ます。ヘロイン常習者が、暴れるのは禁断症状からで、投薬されると興奮するわけではありません。逆に、コカインは、アッパー系で、高揚感をうむ興奮剤の一種です。
麻薬というと、とにかく暴れまくる。と言う決めつけている小説の多い日本において、めずらしい作品でした。
ゲームシステムも、古めかしい、確かに古いゲームなのですが、その当時でさえ古いと感じさせる物でした。移動できる箇所を全てまわり、全てのコマンドを試し、フラグを捜す。そんなシステムです。
移動、クリック、移動の繰り返しの作業を強要されては、ストーリーに集中できません。当然、フラグ順に行動しないといけませんし、何の会話やメッセージが、フラグだったかも非常に分かり難いので、移動できる場所を延々と回り続けて、あらゆるコマンドを、メッセージが変わらなくなるまで続けるという、作業を強要されます。
当時はまだ、サウンドノベルとか、ノベルゲームスタイルが存在してなかったので、仕方ないのかも知れませんが、フラグの場所をもう少し分かりやすくしても良かったのではないでしょうか。ストーリーが売りならば、システムは、それを阻害しない程度にとどめるべきではないかと。
肝心のシナリオはと言うと、実はそんなに良くできたものではありません。典型的な、盛り上げることには成功したが、オチが弱い。と言う作品です。終わり方、ENDマークの出し方とか、フェードアウトの仕方は上手いのですが、私に言わせれば、マリアの正体が分かったときに、もうワンパンチ欲しかったです。ただ、つなぎ合わせているだけじゃなぁ…
しかし、そのオチのアイディアには深く感銘を受け、テーブルトークの女神転生のシナリオとして秘蔵しているのですが、なかなか完成しません。流れとしては、映画「ペンタグラム」と、この「マリアに捧げるバラード」を足して二で割った感じを狙っているのですが…あ、完成してもアップ予定はないです。完全にパクリシナリオですからね。換骨奪胎もしないですから。
ラストシーンで、私が脳裏に浮かんだのは、次のようなモノローグです。ご記憶にある方、もしくは制作スタッフの方、いかがなもんでしょうかね?(笑)。
『その顔は全てを憂い、疲れ切った表情を浮かべているが、どこか微笑んでいるようにも見える。それは、この世の全てを、包み込むような、柔らかな暖かい笑顔。まるで、悪戯っ子を見る母親のような、少しの憂いと、慈しみと慈愛に満ちた笑顔。本当に、この人が、この聖母が具現したら、世界はきっと救われた…』
こんな感じで、エンディングの予定です。このシーンを効果的に見せるために、シナリオ練り続けていますが、なかなか難しいです。
ただ、マリアに捧げるバラードは、複数エンドであり、真のエンディングでは、どうなっているのか私は知りません。何しろ、ドコにフラグがあるのか分からないですし、CGの閲覧モードも、エンディングファイルも無いので、どうやって調べればいいのか皆目見当もつきません。どこかに、攻略しているサイト無いですかねぇ…
ともあれ、推理モノとしては良くできています。猟奇モノとしては、少々味付けが薄いモノの納得はできる仕上がりです。ただ、システムが不親切極まりなく、ストーリーの流れを阻害しない程度の足かせにして欲しかったと思います。
典型的な作り込みの足りないゲームでしょうね。
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