クトゥルフシナリオの運営について

「どうやってするかって?。手探りでやるだけさ」
−アルベルト・アインシュタイン


恐怖の演出法にもつながるのですが、私が注意しているシナリオ運営時の事柄を列記します。


◆探索者は殺さない
当然な様ですが、クトゥルフはホラーゲームで、神話生物は強大だから、探索者を殺しても良い。と言う人もいます。つーか、ボックスタイプの頃のルールブックには、探索者の二、三人は殺して、緊張感を高め、恐怖感を煽るように。と言う記述があったりします。

ですが、学生にしろ、社会人にしろ、貴重な休日や自由時間を削って、参加してもらっているのですから、ゲームから疎外する結果となるようなキャラクターの死亡は避けるべきです。ラストシーンで死ぬならまだしも、序盤で死んでゲームアウトになったら、そのプレイヤーはどうすればいいのでしょうか?。

NPCを与えたり、最初から探索者を複数もってシナリオに挑むという手もありますが、プレイヤー人数が2,3人ならば収拾がつくでしょうが、5,6人のプレイヤーだと混乱は必至です。また、プレイヤーの方も、捨てゴマキャラクターを作ることでしょう。

NPCを与えると言うのも、考え物です。シナリオの根幹に関わるキャラクターは与えられませんし、どうでも良いようなNPCがいるなら、死ぬのはそう言うNPCからにするべきです。

登場人物が死んでいくと、サスペンス風味が加わり、次は自分かも知れない。と言う恐怖感がわき起こります。恐怖感を煽る手法の一つです。ですが、探索者全員が主人公であるテーブルトークではあまり有効策とは言えません。せいぜい、NPC二、三人分が限界でしょう。

プレイヤーにもよりますが、NPCは所詮その他大勢であり、そのNPCが探索者と血縁であっても、あまり感慨はないようです。ただし、私はハッキリ言って、クトゥルフ向きではないプレイヤー相手にしかやったことがないので、一般的な(クトゥルフに理解ある)プレイヤーには通用するかも知れません。

少し、話がそれましたが、序盤からデストラップ(即死罠)が、ふんだんに用意されている海外の既製シナリオは嫌いなのです。一番良いのは、生かさず殺さずが一番良いのですが。


◆エンディング(後日談もしくはオチ/さげ)を用意する
これはクトゥルフに関わらず、私のシナリオ制作の基本方針です。
古代のゲーム「ミステリーハウス」時代のように「アナタハ、タカラモノヲテニイレタ」で、終了するのは味気ないではないですか?。映画でも、目的を達成したシーンで終わる物は多いのですが、やはり尻切れトンボの感じが拭いきれないと思います。

最後に、もう一コマ、日常に戻る瞬間を演出したり、軽く笑いの取れる結末(オチ)を入れたり、キャンペーンでしたら、次への伏線を少し臭わせることで、ストーリーに深みが出ると思いますので。

無理矢理、例を挙げますと、水戸黄門で悪代官を懲らしめて、黄門さまの高笑いで終わったら、気持ち悪いでしょう。黄門様ご一行のお見送りがあってこそ、本当のエンディングになるのだと思います。逆に言うと、あの程度の描写や内容で構わないわけですね。時代劇のドラマツルギーつーか構成は、本当に勉強になります。

繰り返しになりますが、クトゥルフのシナリオって、謎の生物の正体は「ディープワン」でした。おしまい。と言うもの結構あるのです。クトゥルフ・コンパニオンの「四つの神殿」なんて、未完じゃないのか?と思っています。

後日談なんかを、きちんと演出することが本当のエンディングだと思います。スタッフロールで誤魔化している映画とか多いですけどね。つーか、後日談があってこそ、きっちりと話を落とせるのだと思います。私は。


◆戦闘はナシ
クトゥルフにおいて、戦闘が発生、それはシナリオの失敗です。間違いなく。特に、現代日本を舞台にした場合、BADEND決定と言えます。キーパーは戦闘を発生させるべきではないですし、安易に武力で解決しようとするプレイヤーには、クトゥルフではなく、ゴーストハンターやら、女神転生の方を薦めましょう。

ただし、撃退するのに罠を仕掛けるのは、別物です。また、罠に誘い込むのに発砲したりと言うのは正論です。が、それは戦闘には入らないでしょう?。時間的な圧力を加えるために、戦闘ラウンドで行動を規制するという手もありますが、純然な戦闘をしているわけではありません。ので。

補足:戦闘したがるプレイヤーには、二種類あります。クトゥルフというゲームが判っていないだけか、資質がないかのどちらかです。資質がない場合は諦めるしかないのですが、そんな人はマレです。私の劣悪プレイヤーでも、戦闘はあまり起こしません。まぁ、神話生物には、勝てないことが判っているからかも知れませんが。

クトゥルフがどんなゲームか知らしめるために、本来のゾンビを出すことをお勧めします。ファンタジーゲームのやられ役としてでなく、本来の姿のゾンビです。つまり、銃弾を撃ち込まれようが、胴体を二つに切断されようが、関係なく動き回るゾンビを、です。

ゾンビをバラバラにすれば、バラバラになって追いかけてきます。上記の胴体で切断されたなら、上半身は腕だけで這い寄り、下半身だけで歩いてきます。と言う感じで進行すれば、まっとうなプレイヤーなら、どんなゲームか察してくれると思います。ちなみに、火をかけてきたら、スケルトンにして、追いかけてあげましょう(笑)。


◆手掛かりは多めに
コレだけ出しておけば、どんなバカでも気づくだろう。と言うぐらい、ヒントは出しておくのがコツです。技能チェックに失敗したり、プレイヤーがまったく気がつかなかったりする事は良くあります。反面、なんでコレだけで見破るか、お前は。と言うプレイヤーもいたりするので、参加メンバー次第の、キーパーのさじ加減なのですが…察しが良い人が居ない場合の方が圧倒的でしょうからね。

また、コンベンションなどで、参加者の素性がまったく判らない場合も、手かがり、ヒントは多めに残しておき、それでもだめな場合の救済策を複数用意しておくべきでしょうね。

余談:なお、察しの良い人が作るシナリオは、難解なことが多いです。なぜならば、自分だったら気づく。と言う判断でシナリオを制作するため、他の人間には、なかなか気がつかない仕掛けを沢山作るのです……私もこのタイプに当てはまります……他人のシナリオで、序盤で黒幕を解き明かしたりとか…その事件以降、あまり謎解きには参加しないようにしています(笑)。他のプレイヤーが行き詰まったら、マスターに質問し、進行を促す様になりました。私と同タイプの方、こういう方法はいかがなもんでしょ?。

ま、察しの良いプレイヤーと言うのは、一般生活でも察しが良い事が多いので、私が言うまでもないでしょうけどね(笑)。


◆アイディアロールを使いこなす
RPGマガジンで、クトゥルフ通信を連載されていた牧山昌弘さんなども、よく言っているのですが、いわゆる「怖い考えになっちゃったロール」として、アイディアロールを使うことです。

通常、プレイヤーは知らないけれど、キャラクターが知っているか。と言う判定に使われるわけですが、プレイヤーは思いついていないけど、キャラクターが思いつく(想像する)か、どうかに使用するわけです。コレにより、状況を推測させる事で恐怖を演出し、ストーリーを誘導することが出来ます。

例えば、身長二メートル、体重135キロの筋肉男が首の骨を折って死んでいます。アイディアロール失敗してしまえば、ただの死体です。しかし、アイディアロールに成功した人間は、そんな身長二メートルのスポーツマンの首をへし折ることが出来る人間とは、一体どんな体格なのでしょう。そもそも、それは人間なのでしょうか…ってな具合で、プレイヤーに説明すれば、恐怖を演出できます。

上記の場合、もちろん診断技能の方が適当なのですが、探索者に医者がいるとは限りませんので。


◆演出を考える
クトゥルフだけに限られないのですが、話術や演技を恥ずかしがらない。と言うのも実に重要なことです。ですが、恥ずかしいんですよね、意外と…怪談話をする落語家さんとか、機会があると見ておく(聞いておく)ことをお勧めします。ストーリーも参考になるのですが、話すときの間合いや呼吸、タイミングも素晴らしく勉強になります。

やはり、淡々と棒読みするよりは、少しでも感情が入っているほうが、臨場感が出ますから

小技として、上記の牧山さんや朱鷺田さんも言っているのですが、サイコロを無駄に振る。と言うのもあります。マスタースクリーンの裏でね。なんのチェックなんだ?。と言う恐怖感です。映画での足音に相当するわけです。

が、クトゥルフ不向きプレイヤーの場合、探索そのものを拒絶しはじめる可能性(「嫌だ、行きたくない」「死にたくない」)がありますのでご注意を。



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