シナリオ


ホラーシナリオは、マスターとプレイヤーの間でコンセンサスが成り立っていないと、ゲームが成り立ちません。その辺のことは、よく話し合ってみて下さい。

ゾンビから逃げまどい、生き残ることだけが目的のまさしくB級映画を想定したB級シナリオです。


地下の王国

フェイズ1:プロローグ

探索者がギリギリで乗り込んだ地下鉄は、最終列車だけあって客もまばらで、どこか異世界に紛れ込んだような違和感を感じます。酔っぱらいや、柄の悪い若者たちが、冷やかしの言葉を発します。

捨てられた新聞の一面には、地下鉄構内で作業員が行方不明?。とあります。拾って目を通したならば、点検にいった作業員が行方不明になっており、ホームレスに襲われた?と言う記事になっています。

列車そのものが悲鳴を上げるように、金切り音を出しながら、急停車します。回避ロールに失敗すると派手に転倒してしまいます。

程なく車内アナウンスが入ります。
「事故により運行不能となりました。車掌の指示に従って、線路へ降りて下さい」

車掌は、ドアを開け、線路へ降りて、進行方向とは逆、前の駅まで歩くように指示します。降り際に指示があります。

線路のレールには、高圧電流が流れている。
暗いので、足元に注意すること。
不用意に物に触らないこと。

車掌は答えられる範囲ならば、答えてくれます。

事故の原因について
「地下坑道に不法に住み着いているホームレスたちがいて、どうもそれを跳ねてしまったようです。またその際に電気系統に異常が出たらしく、列車が動かなくなりまして。コンピューターが異常を感知して、すぐに対応してくれるはずです。」

前の駅まで
「だいたい二、三キロでしょうか…線路管理用の出入り口があるのですが、ホームレス対策に中からは開閉できないようなタイプに順次変更されていますので、駅まで歩いていただくのが確実です」

車掌は、何名かの男性に頼んで、女性や年寄りが路上に降りるのを手伝って貰います。全員が降りたのを確認すると、先導するように歩き始めます。車掌は非常用の懐中電灯を持っています。

線路脇を歩くので、なんとか二人並んで歩れますが、線路側にいる人は、気が休まるヒマがないでしょう。

ココで探索者には、隊列のどの位にいるかを聞いておいて下さい。乗客は探索者を含めて20名ほどです。


フェイズ2:リトル・ペイルライダー

薄暗い中、とぼとぼと歩いていくと、下りの列車が通過していきます。最後尾の車両にいる車掌が敬礼します。そのニヤリと笑った顔が、白骨に見えた気がします。列車が駆け抜けた後、なま暖かい風が吹き付けて、逆に背筋を寒くさせます。

下水管が破裂しているのか、所々、天井から水滴がイライラさせる嫌なリズムで、落ちてきます。あちこちに水たまりがあり、雨水と生活排水が混じっているためか、とても嫌な臭いがします。

程なく、先頭を歩いていた人たちから悲鳴が上がります。確認するまでもなく、ネズミの大群が駆け抜けていきます。きーきーと耳障りな叫び声をあげながら、まるで毛皮の絨毯が、波打って迫ってくるような感覚に襲われます(0/1d4)。

特に害はありませんが、レールと接触して感電死したネズミの肉の焦げる嫌な匂いと、ネズミ自体の異臭が自然と顔を歪めさせます。

感電死したハズのネズミがぴくりと動いた気がしますが、その後動くことはありません。ただ電圧のせいでしょう(要目星ロール)。


再び、とぼとぼ歩いていくと、今度は後ろから、悲鳴が上がります。

探索者が最後尾にいた場合、一人の女性のハイヒールが折れ、悪態を付いていると、一瞬にして毛皮を纏いました。ネズミが覆い被ったのです。

悲鳴を聞いてたどり着いた場合、ネズミに取り憑かれた物体が見え、他の乗客が、上着や何かを振り回して、ネズミを取り払おうとしています。

(目星ロール)振り払われたネズミにおかしな点を見つけます。濡れているだけかと思ったら、どうやら焦げ、眼球がはみ出し、手足の無いモノもいます。それがまた、動き出し、どこかへ走り去ってしまいました(0/1d4)

なんとかネズミを振り払ったら、振り払うのに参加していなければ、乗客が悲鳴を上げ、腰を抜かし、走り去っていきます。

参加していたなら、ネズミ囓り取られて、悶死した女性の死体を目撃します(0/1d8)

医者の探索者や、乗客の中にいた看護士が、死亡を確認します。破傷風の危険もあり、担架もない状態では連れて行くわけにも行かず、放置していくことにおります。上着を掛けたりして出来る限りのことをして去る用に車掌や看護士が薦めます。


フェイズ3:ニガヨモギの水

しばらくすると、カツン…ぺた…カツン…ぺた…と言う音が後ろから聞こえてきます。
振り返ると、ネズミに殺されたハズの女性が、歩いてきます。顔から頭皮まで、無惨に引き剥がされ、落ち武者の様なザンバラ髪です。

唇のない剥き出しの歯茎でにやりと笑ったように見えます。その目は、遭難して十日目にしてようやく、美味そうに焼けたステーキを見つけた様な目をしています(0/1d8)。

走って逃げるならば、回避の二倍ロールが必要です。失敗したなら、足を取られて転びます。

幸運ロールに失敗すると、転倒してしまいます。転倒したら、この恐るべき汚水の水たまりに顔を突っ込むことになります。また、幸運ロールがファンブルだった場合、レールに触れてしまったコトになります。CONの五倍ロールに失敗すると電撃により麻痺します。麻痺しても、しなくても、1d4のダメージを受けます。

伝染型のゾンビですから、頭部を破壊すると活動を停止します。辺りに武器なりそうな物は、鉄パイプと砂利ぐらいな物です。


フェイズ4:クォヴァディス(どちらへ行かれるのですか?)

ココから先は、展開は自由です。想定される出口は。点検用の出入り口と、通気用ダクトかマンホール、駅のホームまでたどり着くかです。

途中、排水をモロに被っても良いですし、転んだ拍子に水たまりに顔を突っ込んでも良いです。このイベントを処理して下さい。オチの伏線になります。

通気用ダクト。
そもそも、登る手だてがありません。外は繁華街らしく、喧噪と楽しげな声が聞こえます。探索者の叫び声は、雑踏と喧噪に踏みつぶされ、届きません。楽しげな声と足音が、無常感を浮き彫りにします。

マンホール。
錆びかけた鉄のはしごが付いていますが、錆びて脆くなっていますし、水に濡れて滑りそうです。登攀に成功し、STR20との対ロールに成功すると、重いながらも、マンホールはゆっくりと持ち上がります。が、とたんにとてつもなく重い物が乗ってきて、ピクリとも動かなくなります。

点検用出入り口の階段
数人のホームレスがたむろしています。車掌が階段へ駆け込み、「お前らも…早く」と声をかけたところで悲鳴が上がります。ホームレスたちが車掌に襲いかかります(0/1d8)。
ゾンビは食事に集中しますから、気をひかないようにすれば、登っていけます。

階段を上っていくと、二体のゾンビが階段の踊り場で横になっています。「一ドル貸してくれ…」とうわごとを繰り返すだけで、実害はありません。ただし、点検用の出入り口は、改修されたタイプでカードキーがないと出入りできません。

作業員もゾンビ化して、生前の行動、点検補修のために巡回しています。実は冒頭で跳ねてしまったホームレスとは、この作業員のゾンビです。最初の女性ゾンビを撃退し、ネズミの群をやり過ごして、列車の先頭にまわれば、開閉用のカードキーが手に入ります。もちろん、飛び散った死体を見て(0/1d10)、死体を漁らなくてはなりません。

たとえ、列車の進行方向に進んだとしても、動勢は変わりません。

そうでなければ、駅のホームまで逃げるコトになります。ホームの明かりが見えたら、最後の遭遇を起こしても構いません。


エンディング

無事に地上に出ると、細菌用防護服で完全武装した救急隊が病院に搬送してくれます。

転倒し汚水に顔を突っ込んだり、戦闘で傷を負ったり、汚水をかぶったりしたPCは、手足がこわばったり、腹痛や寒気を感じます。そのコトを救急隊に言うと、しばらく問診して、顔が真っ青になります。

「死後硬直だ…」

運転をしていた救急隊員は、突然、悲鳴をあげ、急ハンドルを切ったため、電灯にぶつかります。

その衝撃で、放り出された探索者は、道路を虚ろに彷徨う人々の群を見ます。救急車に轢かれたはずの人間もゆっくりと、起きあがります。

なんとか正気を保ち、助かった探索者は目にした光景に愕然とするでしょう。誰も事故を気にしません。彼らが気にするのは、美味そうな血の詰まった肉である貴方だけです。悲鳴と共に、横転した救急車の窓ガラスが血に染まります。虚ろな戦友の目が鈍く輝いています。



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