シナリオ運営上の問題は、波多間へたどり着けるかどうかでしょう。
プレイがだれてきたら、DMは何らかの救済措置を、迷わず取るべきです。
ここに書かれた、波多間へのたどり付き方は、あくまで指標であって、唯一の回答ではありません。
その場のノリと、そのシーンにふさわしければ、どんな方法でも採用すべきです。
マスターもプレイヤーも楽しんでこその、テーブルトークですから。
ルールの解釈も、全員が納得すれば、ルールブックに書いて無くても、それで良いのです。
魔術師の放課後
フェイズ1:プロローグ
導入部終了の後、掃除の時間に入ります。参加PCは、学年、クラスはバラバラでかまいません。
管理しやすいと思えば、全員を同じくらいにしてしまってもかまいません。
ただし、PCの担当の掃除場所は、裏庭になります。もしくは、ゴミ捨てで焼却炉に向かうなどしています。
突然、悲鳴を聞きつけます。誰かに襲われているというより、何かを見つけてしまったような感じの悲鳴です。
悲鳴元である講堂(体育館でも可、とにかく人気のないところ)の裏には、一人の女生徒が立っています。
◆学年とクラスが同じならば、そのPCは、女子生徒を知っています。
それ以外のPCが、女子生徒の素性を聞いてきたら、加護チェックを行います。
加護チェックの修正値
PCと女性との学年が同じなら+10%、違うなら−20%
PCの性別が、女性なら+10%
PCがクラブ活動の部長、副部長ならば、+10%
教員ならば、+30%
事務員ならば、+10%
なお、PCの所属クラブが生徒会なら無条件で知っています。
知っているPCがいたら、女子生徒の名前、亀井栄子の情報を与えてください。
声をかけるても、声をかけなくても、ゆっくりと、振り返るその目には、生気がなく、虚ろな感じです。
何よりも、異常なのは、大きく膨らんだ腹。妊婦のようと言うよりも、
カエルにストローを刺して膨らませたときのように、異常なまでに膨張してます。
布の裂ける音がして、スカートが滑り落ち、ブラウスのボタンははじけ飛びます。
限界まで膨れ上がった腹の皮は薄くなり、中が透けて見えます。
中に何かいる。手足を動かししている何かが。凝視したPCと目があった瞬間、中ににいる何かと目が合います。
腹は割け、女生徒の前にいたPCは血しぶきを頭から被ります。
◆血しぶきを浴びたPCは、混乱チェックを行ってください。
その他のPCも精神力チェックを行い、失敗すると、気持ちが悪くなって嘔吐。MPに1D6ダメージです。
血を吹き出しながら仰向けに倒れた女生徒の腹から、地獄絵図でみた事のある物体が、出てきます。
日本史の資料に載っていそうな、物体です。やせ細り、骨と皮しかないような手足とは逆に、
不健康に膨れ上がった腹。象のようなしわがれ、かさついた皮膚。
その物体は、つながったままの女生徒の腸をくわえており、ガムを噛むように、くっちゃくっちゃと音を立てて噛み、
血糊のついた顔で、コレ以上ないくらい不気味に、にたり、と笑います。
「なんだ、お前も欲しいのか?」
しわがれた声が、頭蓋骨の中で幾重にも反響していき、甘美な響きへと変わっていく。
◆PCが返事をしたら、シンクロチェックをしてください。
◆戦闘に入ります。餓鬼1匹、命運1を持つ。中ボス扱いです。PCが1レベルUPするように調整してください。
授業終わりですので、たとえ木刀や竹刀といえど、使用できません。防具も学生服のみです。
使用できる武器は、ほうき(木の棒扱い)、と石だけです。
ただし、マグネタイトだけは、コンピューター使いにあげてください。
◆餓鬼を見た事による、『悪魔との遭遇』で、覚醒チェックを行えます。
餓鬼が倒されると、緑色の腐汁になって地面に染み込んでいきます。
一瞬だけ、正体の分からない虫をすりつぶしたような、異臭がしますがすぐに消えていきます。
直感チェック成功で、、コウモリの羽を持つ、犬ぐらいの生物が飛び去っていくのが見えます。
◆トリックの「鋭い勘」を使用してもかまいません。
残念ながら、人型で、黄土色の肌をしています(使い魔インプ)
飛び去った方向は、特殊教室連で、二階の窓から、こちらを眺めている人物が居ます。
加護チェック成功で、生物教師の波多間良一と分かります。
◆加護チェックに失敗しても、クラス写真や、卒業アルバムなど、調べればすぐに分かります。
PCが気がつかないようでしたら、誘導してください。なお、PCたちから、この指摘がない場合、
推理力は、低めと判断し、調査パートでのハードルを低く設定してください。
その日一日は、警察から事情聴取を受けます。
事情聴取は、きっちりこなしても、かまいません。警察関係者のNPCとの出会いのきっかけにしても良いでしょう。
◆特典(汚職警官/警察コンピューターへの進入)か、PCが教師であると、捜査状況が手に入ります。
もしくは、親しくなった警官がいれば、その人から、情報が入ります
◆内蔵(腸と子宮)が存在せず、噛み切られている。解剖の結果も、内側から破裂。残っている臓器から、歯形が取れたが、肉食獣の様な歯形で、誰とも合致しない。そもそも、先に内臓を食い散らかして、内側から飛び出るなど…
上記の情報は、何日か後、警察の意図的なリークにより、新聞に載ります。
PCたちが、調査パートで行き詰まり始めたら、新聞や警官で誘導してください。
フェイズ2:調査
事情聴取から解放された翌日、PCたちは、謎を解くべく情報収集を始めるでしょう。
PCが欲しがるであろう情報を箇条書きにしておきますので、適宜回答して上げてください。
話の流れとしては、インプを発見できていれば、容易に波多間を調べにかかるでしょう。
そうでない場合、亀井栄子と波多間が、ともに生徒会活動をしていた事へ、たどり着くように、誘導してください。
警察に事情聴取された時点で、死亡した女子生徒の素性は、PCたちの知るところになっています。
以下、一般生徒や教員への聞き込みで、得られる情報です。
魅力チェックでも良いですし、対象となる生徒を選んだら、自動で与えてもかまいません。
プレイヤーが、ダレて来ているようであれば、簡略化して行くことが、重要です。
◆波多間良一に関する情報
先生の評判は、両極端です。外見は、そこそこなので、熱心なファンもいれば、なんかは虫類じみてて気持ち悪いと言う生徒も居ます(男女問わず)。
授業態度は、可もなく不可もなく。退屈な授業を繰り返しています。
・波多間先生って。クールで格好いいよね(女子生徒)
・波多間先生って、ロザリオしてるけど、キリスト教徒なのかな(生徒/教員)
・波多間先生って、は虫類みたいで大ッ嫌い。なんか冷血漢だよね(女子生徒)
・波多間先生は、生徒会の顧問教師だ。
・夜勤とか、宿直も自ら買って出るため、上の方の受けは良い。教師同士のつき合いは、ほとんど皆無(用務員/教師)。
◆亀井栄子に関する情報
おとなしいだけの生徒で、とくに目立つような事は、何もありません。どこにでもてる普通の生徒で、
特徴と言えば、双子の妹と生徒会の書記と会計をしていることぐらいです。
・亀井栄子は、波多間先生と仲良かったみたい。準備室にも足繁く通っていた。
・現在残っている生徒会の女子生徒は、妹の亀井美子(17)だけ
・亀井美子は、栄子と双子だから、いろいろと大変だろうな。
・取り立てて、美人ってワケじゃないけど、不思議な魅力は確かにあったよ。姉妹でね。
◆シナリオのフラグ
キーとなる情報です。
・焼却場に犬の死体が投げ込まれていた(生徒/教師/事務/用務員)
・壁に雀が叩き付けられていた(生徒/教師/事務/用務員)
・腐った魚が放り込まれた(生徒/教師/事務/用務員)
・コガネムシが大量に潰されていた(生徒/教師/事務/用務員)
◆殺された生き物たちの場所は、線で結ぶと、五芒星(星形)になるように、設定してください。
栄子が殺された講堂(体育館)裏が、最後の一角となります。
◆『五つの生き物』と言うくくりの場合に、虫、魚、鳥、犬、人となるのだそうです。
出典の書物が見つからないので、私がシナリオのために、多少歪めている可能性があるので
鵜呑みには、しないでください。ともあれ、これらを生け贄にして、召還の儀式を行うのです。
◆その他
ミスディレクションであったり、単なるギャグだったりする、実害のない情報です。
・夜に忍び込む生徒がいて困る(用務員)
・そんなことは、警察に任せて、授業に集中しなさい(生活指導)
・きっと○○○(好きな学校の怪談ネタを入れてください)のたたりよ。
これらの情報から、波多間が怪しいとまとまったところで、次に進行します。
フェイズ3:立証
導入シナリオなので、現実の魔道の召還儀式に則ったモノには、しませんでした。
雰囲気と、簡単な謎になれば良いとの、判断です。知識のある方は、改修してみてください。
五芒星の中心が儀式の場所で、時間は満月の夜の丑三つ時です。
情報が集まり、場所の推論がたった、その日の夜(または、翌日)が、ちょうど満月の日にあたります。
PCが気がつかなければ、DMはそれとなく誘導してください。
オカルト知識を持つPCがいれば「オカルトの基礎」を使用したり、トリックの「鋭い勘」を使用したり、
魔道技能者ならば、魔道の発動チェックと同率で、判定し、成功すれば知っていることにしてもかまいません。
コンピューター技能者のパソコン通信や、ESPの予知なんかも、使えるでしょう。
予知の場合の情景の一例を挙げておきます。
『「星形の中央に、満月の光が突き刺さり、星は砕け散っていく。突如、冷たい陽光が差し込んで、当たりが真っ白になる。」とても切なくなって、PCは目を覚まします。そして、自分が泣いていることに気がつきます。』
PCが現場に到着すると、魔法陣を描き、祭壇の上に、美子を載せて、儀式の真っ最中です。
下校せずに、待ち伏せしていると、うつろな目をした美子をつれた波多間に出会います。
どのみち、波多間は、一瞥をくれただけで、仲間を呼びだし、自身は儀式に没頭します。
祭壇の側から、コボルト(地中から)、インプ(付近の影から)、ゴースト(中空から)、ゾンビ(用務員)、ゾンビコップ(巡回中だった警察官)。ゾンビの二体は。真新しい死体です。敵の強さはPCの数と、ダイス運によって調整してください。
一体が倒された時点で、波多間も、儀式を継続しながら戦闘に加わります。
基本戦術は、マハザンで体力を削り、仲間のどれかの体力が半分になったら、メディをかけます。強敵には、集中してから、シバブーで無力化を狙います。
10ターンの経過、もしくは波多間だけになった時点で、太陽のような光が祭壇に射し込みます。
雲間から、差し込む光は、おごそこかで神々しく、宗教画の中にいるような、錯覚に陥ります。
波多間は、戦闘そっちのけで祭壇にひざまずき
「おお、メシアだ…腐敗した世界を廃し、正しき秩序へと…神の怒りを和らげ、迷える者を導き、永遠の幸福が約束された千年王国へ…救いの御子よ…」
光を浴びた美子の腹が膨らみ始めますが、以前の様に限界を超えて膨張はしません。
敵意(PCが攻撃を宣言)を向ければ、牙と爪を生やして襲いかかります。
チャネリングのポゼッションとして扱って下さい。憑依しているのは餓鬼で、命運2点を持ちます。
美子が先に倒されると、目や口から、光を発し、お腹を大事そうに抱えがら、自身が発した光にかき消されていきます。
波多間が倒れると、美子も崩れ落ちます。
「忘れるな…遠からず、神の裁きが…いくつもの太陽が降り注ぎ、光が全てを焼き尽くす…神の怒りが…」
と言い残して波多間が倒れると、守護天使であるウオッチャーが浮かび上がり、天上へ光を投げかけます。
天からは、蜂蜜色の緩やかにウェーブのかかった金髪をゆったりとなびかせ、ローマ時代を思わせるような衣をまとい、真っ白な鳥の翼を、優雅にはためかせながら、一人の天使が降りてきます(大天使ライラ。レベル45)
天使が両手を掲げると、あたりは昼のように明るくなったと思うと、ホワイトアウト。
そこかしこで、たいまつを水につけるような音と、苦悶と感謝の声が響き渡ります。
エリコの光ですので、ダークを持つPCにも、ダメージが及びます。PCを殺さないようにしてください。
光を浴びると美子の牙と爪も崩れ落ち、呼吸も安定していきます。
天使は「闇に染まりし、同胞の解放。感謝いたします」の声を残し、昇天していきます。
波多間も、栄子も、昇天して行くのか見えます。肉体は残っています。
フェイズ4:エピローグ
警察は、一連の出来事を、すべて波多間に押しつけて、猟奇殺人事件として解決します。
ただし、美子は妊娠四ヶ月程度にあり、中絶できません。教師のPCが居れば、完全なる処女懐妊だと、聞かされます。
波多間の言うとおり、メシアが生まれるのか、栄子のように、怪物を生むのか…誰にも分かりません。
補記:女児を生みます。冒頭の女神の転生体として。
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