総括


一言で言うと、難解です。

別段、特に難しいシステムでは無いですし、奇抜なシステムでもありません。では、なぜ難しいのか。

あまりに完成された世界観がそこにあるからです。また、自らも「ストーリーテリングシステム」と名乗っているぐらいのシステムですから、システム云々よりも、ロールプレイを重視することも、また難しさです。

ストーリーテラー(いわゆるマスター)は、もちろん。プレイヤーも、血族の歴史を熟知しておく必要があります。かなり、人を選ぶゲームと言えるでしょう。

PCは、血族、つまり吸血鬼です。よって、単純な退治モノでお茶を濁すのはとても難しい。なぜならば、血族の敵は、基本的には、血族でしかあり得ないためです。派閥争いがあるので、穏健派と急進派との単純な構図に持ち込めなくも無いですが、それでも、陰謀劇がベースとなります。

吸血鬼と言っても、色んなタイプがありますが、古今東西のタイプを氏族(クラン)と呼び、一般的なゲームの職業のように分類されています。シルクハットに、タキシードという定番スタイルは、ヴェントルーというクラン。狼に変身するのは、ギャンレル。怪物じみた外見を持つモノは、ノスフェラトゥといった具合です。

全体の雰囲気としては、ノリの軽いアクションではなく、インタビューウィズバンパイア、その原作の夜明けのヴァンパイアの雰囲気が一番近いです。ブレイドは無理だけど、ハンターD(オール英語のアニメの方)なら出来るかも知れません。

強大な力に溺れ、楽しむ。と言うよりは、夜にだけしか生きられず、血に飢えれば獣に成り下がる怪物たちが、いかに獣を抑え人間的に生きるか。吸血という殺人を犯さなければ生きていけない血族が、人間性を保つのは難しく、自らの内にある獣に理性をいつ食い尽くされるか。と言うことに怯えながら生きる。と言うのが主題になるかと。

このシリーズは、ワールドオブダークネスという一連のシリーズで、独立している他のルールとリンクさせることも出来ます。ワーウルフ、メイジ、レイスなどありますので、それらを敵役に設定することも出来ますが、それはそれで、難しさがあります。

ちなみに、ワーウルフには、混沌という明快な敵がいるので、とりあえず、ワールドオブダークネスをやってみたい人は、ヴァンパイアより、ワーウルフを購入した方が良いかも知れません。

システムは、と言うと、パッと見、トワイライト2000や、ダークコンスピラシーに近い印象(スキルを得た分シートのマーカーを塗りつぶす辺り)を受けますが、大別すると、ダイスプール方式ですが、シャドウランのモノよりも簡略化されていて分かりやすいです。

簡単に紹介しますと、能力値+技能値の合計だけ、d10を振り、ストーリーテラーが指定した難易度以上の目がいくつあるか。と言う方式です。成功した分だけ、より仕事が完璧になると言う仕組み。

敏捷3、格闘2のキャラクターが相手をパンチするとき、難易度は通常の6だとすると、判定は、敏捷+格闘の合計5このダイスで、6以上が何回出るか。と言うことになる。成功したダイスの数が多いほど、手痛い一撃となるわけです。

また、ダイスの1の目が出ると、成功したダイスを打ち消します。打ち消せるダイスがない、つまり一つも成功していないところに、1の目を出すと、大失敗となってしまうわけです。このシステムのおかげで、意外と判定は成功しないものとなってます。

まぁ、このストーリーテリングシステムでは、判定方法は、不公平性が無いようにするためと、乱数によるイベント(乱数による物語の揺れは、より高いドラマを生む事も多い)のためにだけ存在するようなモノなので、その気になれば、サイコロなど振らなくても良いように出来てはいます。

このゲームでは、ゲームのセッションを史劇と呼びます。それに相応しいほど、配役や立ち回りに気を遣うゲームではあります。演じると言うことを突き詰めた、ゲームの域を超えた感じさえします。

それが難しさでしょう。ただ、忘れてはならないのは、難しさの規模は、やり遂げたときの喜びの規模でもある。と言うことになります。

一番大変なのは、吸血鬼好きを集めるか、吸血鬼好きに作り替える努力でしょうね。



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