オープニングから。
『新星(N◎VA)は、その輝きを失った。』
拳を振りかざして演説を続ける若いカリスマ。いくらここがアンモニアアベニューだからとて、そのセリフは臭すぎる。
『日本軍のもたらす見せかけの平穏が、我々のN◎VAから輝きを奪ったのだ』
奇しくも、声の主は進行方向にいるようだ。足を進めるごとに熱の入った弁舌がさらに大音量になっている。
『N◎VAはN◎VAであって、ニホンではない。立てよ、N◎VA人よ。今こそ悲しみを怒りに変えて立ち上がるのだ』
若きカリスマの絶叫にハウリングが入る。コピーブランドのエコーズでも埋め込んでいるのだろう。青春をかけた絶叫も、ここでは、マネキンの客引きの声や、メジャーデビューを狙うカブキの歌声と大差ない。足を止めるモノもなく、雑踏の一部のように、みな通り過ぎていく。
だが、若いカリスマはさらに陶酔を深め、己の弁舌に酔いしれていく。酔いを醒ましたのは、安っぽいホイッスルの音。予想とは裏腹に、見事なフットワークで駆け抜けていく。そんな彼を追うように、似たような若者達が欠けていく。いや、似ているのではない、同じ顔だ。グレイの髪をオールバックにした、眼光鋭い眉無し男の集団。
「ポーザーか」
歴史上の人物や、ドラマや映画の俳優と全く同じに整形するポーザーギャング。どこかの政治家の顔だったのだろうか。検索をかけようかと思ったが、無駄なカロリーを消費する必要はあるまい。
「おい、奴らはどこへ行った」
酔っぱらいにつかみかかるのは、日本軍の治安維持部隊。ブラックハウンドの姿も見える。猟犬どもの主がようやく姿を現した訳だ。これから狩りが始まるのだろう。
あの若いカリスマの言うとおり、N◎VAはその輝きを失ったのかも知れない。
アマテラスが注ぎ込む、光の奔流。あの光は、我々へもたらされている恩恵なのか。それとも、我々の魂を吸い上げているのか。
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