冒険の導入として、キャンペーンのつなぎとして、使用できる思います。ボスの魔法使いを強化したり、ゾンビの数や種類(ゾンビオーガーとか、ゾンビゴーレムことフレッシュゴーレムとか)で、調整できると思います。ゾンビでなく、スケルトンにすれば、難易度を下げることも出来ます。
これもまた、裏設定も何もない、ただの退治シナリオですので、気楽に。一応、ソードワールド用に書いていますが、元々はD&D用のシナリオでしたので、変換は容易いと思います。
フェイズ1:帰郷
シーン1
PCたちは、グランジ村に逗留しているか、到着したところです。グランジ村は、林業主体の比較的小さな村ですが、良質の材木が取れるので、潤っている村です。伐採した木材で、筏を組み、下流の街へ行くことで、輸送コストを浮かせています。
間引いた若木や、半端な木材を利用した木工も盛んで村に入ったPCは、すがすがしい木の匂いが充満していることに気がつくでしょう。す。宿の料理は、川魚や鳥などバラエティーは豊富です。
すでに、パーティーとして結成しているならば、特に問題はありません。時間は現代で17時程度、山越えをするにはちょっと微妙な時間で、グランジ村に宿泊を決めることになります。
初回の冒険ならば、各PCは、バラバラの目的でこの村に到着しており、待ち合わせで、逗留しているか、到着したとか、隊商の護衛を終えた帰りとか、各人の状況を聞いて下さい。
そうして、くつろいでいると、村全体が騒然としているような騒ぎで、外を見れば、皆、どこかへ向かってるようです。宿の主人ですらも、あとを女将にまかせて、飛び出して行ってしまいます。
女将さんに聞いても「さあ、河原の方で何かあったとしか…」としか答えてくれません。外の通行人を捕まえても同じです。
好奇心のあるPCなら、河原へ向かうでしょうし、クールを気取っているなら、宿に残るでしょう。どちらでも構いません。
シーン2
河原に到着すると、人だかりがありますが、その中央は開けていて、ドーナツ状に人が集まっています。中央には、横たわる男性と、立ちつくしている男性が居て、周囲の人間は、なにかひそひそと小声で話し合っています。
PCたちが、周りの村人に話しかけても、話をはぐらかされてしまいます。よそ者に話して良いのか、判断がつかないためです。中央の男性に話しかけても、呆然としていて、なにか、ぶつぶつ言ってますが、上手く聞き取れません。
補:軽い感動用の下準備とするならば、男の呟きは「そんな…そんなバカな…ボクじゃない、僕のせいじゃない」と言う類です。ただし、これを入れると、プレイヤーがミステリー調と勘違いする可能性があります。
横たわっている男性は、ずぶぬれで川から引き上げられたようです。一目見て、死んでいると分かります。右半身が、つぶれており、巨大な棍棒で殴られたようです。僧侶やセージ(冒険者なら分かるかも)ならば、死後かなり経っているのが分かるでしょう。死因が溺死でないのは明かです。
やがて、口ひげを蓄えた壮年の男性が、人の輪を切り開いてやってきます。死体を見るなり「こいつは確かに、ジョーだな…」と呟きます。PCが中央に出ずに、人の輪にいるならば、中年の男が、なにやら呟いたことは分かります。
口ひげの男は、PCたちを呼び集めると、宿屋に行こうと誘います。彼は、自分はこの村の長で、リンゼイ・ハロルドであると名乗ります。
シーン3
河原に向かわなかったPCも、ハロルド村長が呼び出し、テーブルに座らせます。
「皆さんを、冒険者と見込んでお願いがあります。」
と切り出すと、事の子細を話し始めます。
流れ着いた遺体は、ジョナサン・ハロルド。村長の兄で、林業の組合長をしてました。ジョーは、伐採の時の事故(枝打ちで、木に登っているとこへ、切り倒した木が倒れ込んできた)で、一週間ほど前に、葬儀をし共同墓地へ埋葬した。
事故の原因となったのは、村長の息子で、遺体の側で立ちつくしていた男。
「バカ息子でね、ジョーが復讐に来たとほざいているよ、まったく」
共同墓地は、川の上流にあり、もし増水や大雨で、墓地に何かあったのならば、流れ着いたのが一体だけというのは不自然。
「そこであなた方に、何が起こっているのか確かめて貰いたいのです」
報酬は、一人頭200ガメル。すでに、パーティー状態ならば、全体(5−6人PTと仮定して)で1000ガメルの線を狙います。十分に交渉して下さい。ただし墓地を見て帰るだけで200ガメルならば、かなり割が良いと言えます。
「こんな小さな村ですし、急なことですから、余りご用意できません。食事宿泊費は、こちらで負担させて頂きますので」
村長は、一人頭300ガメル。PT全体で1500までは、妥協します。
フェイズ2:作業員募集中
シーン1
グランジ村の墓地は、川の上流。村から歩いて1時間たらず。と言ったところです。軽装健脚ならば30分で行けるでしょう。
グランジ村では、病死や老衰での死亡より、伐採作業中の事故死が圧倒的なので、伐採場に近いところが、墓地となりました。倒木に巻き込まれた遺体は、損傷が激しく、余り運びたくない。と言うのもあるようです。
川は穏やかで、澄んでおり、増水や大雨という事は無さそうです。
シーン2
歩いて1時間と言うことで、丁度日も暮れ始め、墓地に着く頃には黄昏時も終わろうかという、薄暗がり。湿った重たい風も生暖かく、冒険者といえども、ちょっと躊躇してしまう感じです。
レンジャー技能保持か、エルフ、エルフ村育ちのハーフエルフ、グラスランナーならば、掘り返した土の匂いがすることに気がつきます。(知力+レンジャー技能。エルフとグラスランナーは、知力+冒険者レベル。目標値8)
薄暗がりですが、まだ明かりは必要ではありません。墓地では、数人の人間が、墓を掘り起こしています。
PCたちが声をかけても、完全に無視して、作業を続けています。ある程度まで近寄れば臭いで、シャーマンならば、インフラビジョンで分かりますが、見るからにゾンビです。
ゾンビたちは、掘り当てた遺体を喰うでもなく、大八車に乗せています。既に数体が乗せられています。骨だけに近いモノもありますが。コメディーチックな演出が欲しい場合、掘り出そうとしたゾンビの腕が抜けるとか、つるはしを振り上げたら、腕が落ちたとか、そんな描写入れるのもアリかと。
ゾンビたちに害意は無いようですが、攻撃されれば、自衛します。自衛の場合でも、数体のうち、三体だけがPCの相手をして、残りのゾンビは、見つけた新人をつれて奥へ消えていきます。
ダイス目イカサマしても、逃亡を成功させた方が楽ですが、人事部ゾンビを全滅させた場合、このまま村に戻って報告する。さらに探索を続けると言う2パターンに大別されると思います。
探索は、レンジャー技能で判定するまでもなく、大八車の車輪のわだちが、森の奥へと続いていて、これをたどれば容易に目的地に着けます。
シーン3
村に戻った場合は、村長と交渉すれば、もう少し報酬を釣り上げられるでしょうし、村長も、真相の究明を依頼してきます。この場合、一人頭500までアップ。PT単位だと3000まで出します。ただし、この場合、魔法使い側も察知しますので、敵の戦力は増強されます。また、暗くなっていますので、わだちの発見には、レンジャー技能による判定、難易度10を必要とします。
暗いうちはイヤだと、朝を待ってから追跡すると、既に作業場はもぬけの殻で、酷使されたゾンビが横たわり、腐敗を初めて、ヒドイ有様です。村長は、報酬を支払いますが、後かたづけの代金として、かなりの額を間引いてPCに渡します。一人頭100ガメル程度の報酬となります。
発掘現場には、羊皮紙の束が落ちて(捨てて)あり、ここが魔晶石の作業場であったことが分かります。賃金ゼロの労働力で、一山当てたことは、冒険者ならば容易に察しがつくでしょう。
フェイズ3:ただいま労働中
シーン1
ゾンビのあとを付けたにしろ、わだちの跡をたどったにしろ、しばらく行くと、森が開け、崖に出ます。崖に穴を開けているところで、一見すると、夜を徹しての穴掘り作業のようにも見えますが、作業員たちは、全員ゾンビウォークです。
不用意に(罠感知を宣言しない。もしくは、察知チェックに失敗。技能は、シーフ、レンジャーどちらでも良い。)、近づくと、罠を踏むことになります。これは、撃退罠ではなく、警報です。PCたちに実害はなく、罠の存在そのものに気がつかないかも知れません。
なお、ゾンビの動きをよく見れば、同じ道、同じ順路しか通ってない事が分かります。
PCたちが堂々と入った場合でも、ゾンビたちは、意に介せず、作業を黙々と続けます。
侵入が感知されている場合は、崖にうがった洞窟にさしかかったところで、兵隊ゾンビの奇襲があります。ゾンビなので、インフラビジョンなどには反応しません。ので、よほどのことがない限り、不意打ちは成功するでしょう。戦闘用と労働用は完全に別個ですので、死闘を繰り広げている横を、もっこを担いだゾンビが通り過ぎたりもします。
戦闘が2−3ターン経過すると、「なんじゃ騒がしい」と魔法使いが顔を覗かせます。状況が五分か、ゾンビ優勢ならば、そのまま戦闘に加わります。劣勢ならば、部屋に戻ります(フラッシュゴーレムの準備)。また、状況が劣勢なったら、部屋に戻って、ゴーレムを起動させます。
もし、一度村に戻っている場合には、後ろからも兵隊ゾンビが現れて、挟み撃ちにされます。さらに、続いて、スリープクラウドが飛んできます。「こそ泥めっ、ワシの宝だ、誰にもわたさん」と、ここで決戦となります。
なお、魔法使いは、横取りされるぐらいならば、とMPが足りなくなれば、発見した魔晶石も乱用します。さらには、直衛のゾンビゴーレム(フレッシュゴーレムも連れています。)
もし、スリープクラウドで、PCが全滅した場合、魔法使いは、ゾンビに命じてPCたちをしばり、そこいらに閉じこめます。魔法使いは、決して邪悪ではなく、ただ単に、賃金ゼロで裏切らない労働力としてゾンビを使っているだけで、誰も傷つけては居ない。と言うことをお忘れなく。
魔法使いにしても、あらかたの作業は終わっており、わざわざ殺す必要などないのです。PCたちがどうにか脱出した頃には、魔法使いは立ち去った跡で、死体に戻ったゾンビたちが、散乱しています。村長は、再埋葬をPCたちに要求し、支払うはずだった報酬は、香典として没収するでしょう。
また、脱出を面白くするために、門番として、フレッシュゴーレムを残していくのも良いでしょう。
シーン2
村に戻らず、侵入も感知されないならば、安全に洞窟にたどり着けます。メインの坑道の他に、入り口側に、一部屋掘ってあり、そこで魔法使いとおぼしき人物が、なにか作業をしています。作業台、と言うよりも、テーブルの上には、遺体が乗せられており、「ここの死体はどうなっとるんだ、こんなボロでは、労働力にならんっ、パーツにすらならんっ。捨ててこい」と、誰もいないのに命令してます。
倒木による圧死が主な死因のため、遺体の損傷が激しく、ゾンビとしても使い難いようです。ジョー伯父さんの遺体も、損傷が激しく、墓場からヘッドハンティングされたものの、レイオフされたようです。
ここで飛びかかれば、不意打ちです。杖を奪えば、魔法使いは完全無力となります。シーフの忍び歩き判定で、目標値14で、その狙いは成功します。スリープクラウドや、シェイドによる攻撃もあるでしょう。
が、魔法使いは、杖の他に、指輪も焦点具にしてあり、製造途中のフレッシュゴーレムを起動させます。ここでラストバトルです。フラッシュゴーレムは、片腕です。データのモノより弱体化させて下さい。魔法使いは、魔晶石を用意していないので、MPが尽きれば終わりです。
もし、魔法使いが眠っても、フレッシュゴーレムには、侵入者排除の命令が生きているので、PCたちを排除しようとします。
補:D&Dでプレイする場合、おそらくスリープで、魔法使いを眠らせるでしょう。その場合でも、上記の通り、ゴーレムはPCたちを排除しようとするでしょう。なお、エキスパートにあるゴーレムでは、少々強さが半端なので、ウッドとボーンの間ぐらいの強さで、フレッシュゴーレムを創作しましょう。ヒットダイスは3か4ぐらいが良いでしょう。PCのレベルが2〜3ならば、ウッドゴーレムが丁度良いと思います。
フェイズ3:倒産処理
魔法使いのゾンビ化は、半端なもので、魔法使いを倒してから、夜が明ければただの死体に戻ります。
また、作業現場の先は、古代王国時代に使われていたメインの坑道へつながっています。崖を強引に掘り進んで、メインの坑道とつないだ。と言う訳です。
魔法使いは、古文書を持っていて、それは作業場にあります。ソーサラーかセージで古代魔法語を取っていれば、容易に読むことが出来ます(魔法使いが、単語の意味とか書き込んでいるため)。
ここが、古代魔法王国の魔晶石発掘現場であったことが分かります。本坑道の先には、一次加工所があり、原石から削られて形が整えられた魔晶石があります。精神点は入ってない。
二次加工所に残っていたモノには、精神点が入っていますが、魔法使いが、かき集めていますので、加工所には残っていません。魔法使いが生きていれば、その辺のことは喋ります。魔晶石は、一人一個渡るようにして下さい。精神点は、2D6+5ぐらいが妥当でしょうか?。
また、魔法使いの作業場には、新人発掘中に見つけた、埋葬品が野積みにされています。これは、PCが捕まった場合でも、放置されています。小さな村の一般市民のモノなので、価値のあるモノはありません。
本坑道にいると、時折、うなり声が聞こえてきます。思わず背筋が寒くなるような声で、風のせいとも取れなくもありませんが、シャーマンがいれば、風の精霊力はないことは分かります。
また、少し勘の良いプレイヤーならば、安全に廃坑にしたならば、採掘したモノをおいていく訳がない。と言うことも気がつくでしょう。何かがあって、廃坑に追い込まれた。のかも知れません。
どちらにしても、ここから先は、別の物語です。次回のセッションで本坑道の探索にするか、それとも封印するのか。それは、マスターとプレイヤーが決めて下さい。
なお、死体の処理を放置していると、村長から、香典と称して、報酬からごっそり引き抜かれます。
「また、埋葬せにゃならん。あんたらも、意に反してとは言え、元村人と戦ったことは、気がかりじゃろう?」
それを防ぐには、魔法使いに、ゾンビにゾンビを埋葬させるように命じることです。埋葬が終了していると、村長はちょっと悔しそうに、報酬を全額渡してくれます。また、ソーサラーが希望すれば、グランジ村特性のメイジスタッフをくれます。装飾価値が高いだけで、特に何も変哲はないのですが。他に希望者がいれば、木の皿とか工芸品を一人一点貰えます。
現金はいらないので、工芸品を。と言えば、合計で一人三点まで貰えます。実は、大きめの街で売れば、最低でも木皿一枚300ガメルにはなるシロモノだったりする工芸品です。メイジスタッフなら、800にはなるでしょう。目が利くかどうかは、シーフなり、セージなりで判断して下さい。実際の価値は、ダイスで決めると面白いかも。
フェイズ4:予告編
キャンペーンの寄り道に、本シナリオを使用したのならば、本坑道の探索は、あまり進めません。
導入シナリオとするならば、本坑道の奥に、なにかキャンペーンのキーとなるようなアイテムや、情報を設置しておくと、ひょんな事から、大事件に。と言う感じにはなると思います。
今後の展開としては、材木運びを兼ねた川下りで都市に向かう。これまで通り、陸路で向かう。などが上げられます。
なお、軽い感動シーンを取り入れたい場合、以下を追加。
魔法使いの部屋から、墓場から掘り当てたとおぼしき一冊の本が出てきます。それは、日記で、ジョー伯父さんは、伐採の初仕事で、父親を死なせてしまったことが書かれています。
「弟の私が、村を継いだのも、兄のたっての願いだったからだ。汚れた身で代表など務まらぬと。だから、兄はその償いのために、身を粉にして村に尽くした。その兄が、お前の優しい叔父が、お前を哀れむことはあっても、恨むことはないだろう。兄が私にデスクワークばかり押しつけたのも、事故の身代わりになるためだったのではないかと思っているほどだ。」
「私の誇るべき兄、お前の大好きな優しい伯父さんが、愛して止まぬこの村へ、一日だけ戻ってきたのだ。歓待してやろう。そして、毎年今日のこの日を、帰郷の日として、旅立った家族と大いに盛り上がることにしよう」
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