三、白蛇


小学校低学年の頃だったでしょうか…学校から帰ってくると、玄関前に置いてあった牛乳受けの上に、白蛇がとぐろを巻いていたのです。胴の直径は、一センチ有るか無いかと言う細くて、体長も伸ばしきったとして、30センチもあれば良いような小さい物だったのですが、黄色がかった白と鱗のぬらついた輝きは、確かに本物でした。

当時の自宅の玄関は、襖や障子の様に横に滑らせるタイプの扉だったのですが、蛇がいたにもかかわらず、蛇に近い方の扉を開けて、なんの恐怖心もなく家に入りました。そして、ランドセルを投げ込み、もう一度白蛇を見ようと、玄関に戻るともういなくなってました。

時間にして数秒。辺りを見回し、牛乳受けを動かしたりしましたが、蛇の姿はありませんでした。数秒でたどり着けるような身を隠せる場所もなく、ナイロンロープやホースなど、見間違いの元になりそうなものもなく、随分と不思議思ったものです。

幻覚だったのか、それとも、やはり野生の生き物、ましてや超一流のハンターであるヘビ族ですから、子供の目をかいくぐるのに数秒もあれば、充分だったのかも知れません。

今にして思えば、あまりに存在が稀薄だった感じを受けます。幻覚か、はたまた神性だったのか。


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