あれはまだ、大学生だった頃。東北への野宿ツーリングの練習に、近場へ野宿ツーリングに出かけた時のことです。
奈良と三重の県境ぐらいだったか、すでに三重県だったか忘れましたが、舗装林道並の山道(一応、番号が振られている県道ではあった)で日が落ちてしまいました。当然街頭なんてモノはなく、このままだと、転落の危険を感じたので、自動販売機の前(少しでも光量が欲しかった)で買ったばかりのテントを設置(買った機材の実験も目的の一つ)し、実際に体験しないと分からない、日用雑貨の欠品をメモしていたりしました。
初めての野宿なので、緊張して眠れません。浅い眠りと言うよりも、一時間程度気絶しては、目が覚めると言う繰り返し。それを何回したでしょうか。
突然外で、男女の談笑の声と、二人分の女物のサンダルが土を噛む音がします。田舎の事ですので、この辺のヤンキーは、まだ女物のサンダルで闊歩するスタイルなのね。と、特に害意も無いようなので無視を決め、再び眠ろうと努力を続けることにしました。
その努力を決めた瞬間。道沿いに歩いていたであろう足音と話し声が、私のテントと道路を挟んで反対側の辺りで、消えました。どっかの茂みで、ナニでも始められたら、うっとしいのぅ。と思ったモノの、五分、十分経っても、声どころか、人の気配すら感じない。
いろいろな考えが脳裏をよぎります。よく考えたら、足に合わない女物のサンダルで、こんな山奥まで来れるのか?。車の音は無かったし、ライトも感じなかった。散歩って言っても、付近に家など無し・・・・
ホラー映画で、カップルでも先に殺される男。物音を確認に行って帰ってこない下っ端。テントから出て状況確認したいけど、出たら負けだ。と、ナイフを握りしめているウチに、寝てしまいました。
寝たり起きたりを繰り返していたので、気が付かない間に、意識が跳んで、そのうちにカップルが帰っていったと言うのが濃厚ですな。きっと手前で車を止めて、夜景でも見ながら散策していたのでしょう。きっとそうです。
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