六、紫陽花おばば


街を歩いていたときに、道路沿いに10段から15段の短い階段を上って入る病院があったのですが、そこの階段に、サマードレスというのでしょうか、ワンピースの様なモノを着たおばあさんが、ひどく疲れたように座っていました。

歩道は、狭く、階段の下の方に座っていたおばあさんのすぐ前を通る形になってしまうので、「すいませんけど、通ります」との意味で軽く会釈して通り過ぎた訳です。

通り過ぎたモノの、あまりにも、存在が希薄。人の気配が無さすぎるので、気になって振り返ったところ、そこにあったのは、紫陽花の鉢植えでした。

まぁ、黄昏前の時間帯で、ぼーっと歩いていたので、脳内映像が混線しただけの、幻覚だとは思いますが。今にして思えば、着ていたサマードレスと言うか、ワンピースのようなモノは、生前の祖母が持っていたよう記憶もちらりと。

二、三日後、同じ道をとおったら、その鉢植えは撤去されてました。疲れているように見えたのは、枯れそうだったのか。などと感傷的に思うことも、しばしば。

まぁ、それだけの話です。



戻る