ちょこまかと書いてはいるのですが、一頃にまとめておくべきかと。
ハリウッド銃撃戦学校のおかげで、軍事や戦術における誤解が、かなり浸透しており、日本は州兵制度や、徴兵義務もないで、さらに誤解しているアマチュア作家はもちろん、プロ作家もかなりいます。(バズーカ とか対戦車ライフルのクイックドロウはやめてくれ、マジデ。というか、バズーカを収納する状況がまずあり得ない)。
たとえば、手榴弾。洋物軍隊FPSの浸透でだいぶ浸透してきていますが、通常使われるのは破片手榴弾(いわゆるフラッググレネード)。もちろん、爆発の圧力によってダメージを与えるものもありますが、対人用のものは、手榴弾が炸裂することで、細かい破片となり、その破片で人間を殺傷するように出来ています。その為、爆発力は意外と大したことはなく、ソファのウレタンクッションの下に置いて、押さえつけると、ウレタンを貫通できず、被害をゼロに出来るそうです。ハリウッド映画にあるような、部屋に手榴弾を投げ込んで、爆発させると、窓から中の人が飛んでいくようなことはありません。
実際にやったら、部屋の中に、ミンチができあがっているだけです。また、グレネードランチャーも、対人用のものは、破片が飛び散ることで殺傷するため、車を破壊するような威力はなかったりします(対戦車用の弾を使えば別)。RPG7のような、対戦車ロケットとグレネード(榴弾)を混同しているわけですね。
さて、少し例を挙げて、説明させていただくとしましょう。
アクション映画によくあるシーンです。
仮想シチュエーション
テロリストが立てこもるビルに到着した、熱血刑事とクール刑事。テロリストはビルの窓からマシンガンを撃ってきて、ビルに近づくことも出来ない。
熱血「くそう、俺が突撃する、援護してくれ!」
しびれを切らし、駆けだした熱血刑事を撃とうとして、思わず身を乗り出したテロリスト。それを冷静に撃つクール。
「まったく、オレがいないと何回死んでることか」
さて、間違いに気がつきましたでしょうか。
端的に言うと、これは援護ではありません。熱血刑事を囮にした狙撃です。根本から違っているわけですね。
援護といった場合、本当はどうするべきだったかというと、クール刑事は、犯人がいる窓のあたりに、攻撃を続けるだけで良い。
人間誰しも、攻撃されているのに窓から顔を出す人は…たまにいるわけですが…普通しません。当たる当たらないは関係なく、自分の近辺に着弾があれば、まず身を隠します。身を隠す以上、攻撃は出来ません。これによって、熱血刑事は、銃撃の危険なく移動できるわけです。
こうした、命中弾を得る目的でなく、相手の行動を阻害する目的の射撃を、制圧射撃と言います。
分隊支援火器と呼ばれる、軽機関銃(M60とかMG34とか)以上は、こうした目的のために使われることが多い。もちろん、純粋な攻撃用にも使われますが。
分隊支援火器の機関銃の中には、グルーピング(集弾率、つまり命中精度)が良すぎる。とクレームをつけられた銃もあります。制圧射撃をする以上、当てるつもりはないので、ある程度、弾がばらけてくれないと逆に困るわけです。
まぁ、ぶっちゃけて言うと、相手を伏せさせるための射撃。という奴です。特に現代では、 一般歩兵もボディアーマーを着用するのが当たり前になっているため、一般歩兵の銃は、相手に命中させるためでなく、相手を伏せさせるため。という目的が主になってきており、その為、各国の軍隊は、少しでも弾が多く持てる ようにと、小口径で軽量の弾を採用する傾向にあります。
さらに、榴弾による砲撃も、制圧射撃に含まれます。敵陣地への砲撃の間は、塹壕といえど、奥に避難していないと、砲弾の破片で十分死ねます。味方は、砲撃がいつ休止するか分かっていますから、最後の砲撃のあと、敵が塹壕の奥から出てきて、 攻撃態勢が整うまでの間に、移動し接近する。コレを繰り返すのが、第二次大戦の塹壕戦の基本でした。砲手の運が良いのか、敵の運が悪いのか、砲弾がたまたま、司令部を直撃し、敵に大ダメージを与えることもありますが、これはあくまでラッキーパンチ。
風や大気の状況で、砲撃はだいぶ流れていくので、現在でも、だいたいこの辺ぐらいの狙いで撃っています。ピンポイントでねらえたら、戦闘機によるピンポイント爆撃は必要なくなりますしね。
以上は、歩兵観点による援護射撃ですが、搭乗兵器による援護となると、話は変わってきます。特に航空機における援護。となると、後ろを取られて必死に逃げている味方機、それを追いかけるのに必死の敵機。出来る援護といえば、味方機に気を取られいる間に、敵機の後ろを取り、攻撃をやめさせることです。
日本のゲームにおける援護射撃は、厳密に言えば、追加攻撃か、共同攻撃であり、援護には全くなっていない。上記でも述べたように、援護射撃の根幹は、相手の行動を阻害することであって、命中させることではありません。 ゲームにおいて、本当の意味での援護射撃とするならば、相手の回避を下げる。というのが妥当でしょうね。 アクションポイント制のSLGならAPにダメージと言うことも出来ます。ちなみに、パワードールでは、防御射撃を行うと、APを減らすことが出来るようになっています。自分が撃たれても減りますけども。
そうしたことを加味すると、ガンキャノンの存在意義がぶれている事が分かります。まぁ、ガンダンクのキャノン砲でさえ、直接照準で撃ってしまう世界ですから、揚げ足取りも甚だしいのですが。ガンキャノンが行いうる支援とはどういう形が取れるでしょうか。携行火器はビームライフル。360ミリキャノンは、徹甲弾です(榴弾を直接射撃するのはあまり意味がないですから、キャノン砲を曲射するシーンは見たことがない)。
……何もないですね。中距離支援MSではなく、中距離狙撃MSですね、ガンキャノン。ガンタンクは遠距離狙撃ですね。マシンガンなら、それこそ制圧射撃を加えることも出来ますが、 ビームでは命中弾を与えないと意味がない上に、発射回数に難がありますしねぇ。 83のモンシアは、ビーム光を見せることで、相手を萎縮させるという見事な心理戦を仕掛けましたが。
また航空機のような援護を行うのではあれば、大砲かついでる鈍重なキャノンタイプよりも、ノーマルタイプの方が良いですし。どちらかと言えば、タンクやキャノンが砲撃する間の安全を保つために、白兵タイプが戦うといった感じになるのでは?。さらがら、爆撃機を護衛する戦闘機のような。
そもそも、MSの汎用性とは、携行火器による使用目的の幅の広さ。たとえば、戦車は、自走砲のような支援砲撃には不向きですし、逆に、自走砲は、主力戦車のように、戦車対戦車の戦いは出来ません。
しかし、MSならば、武器を持ち替えることによって、すべての距離に対応できるワケです。それこそ、バズーカで支援砲撃。マシンガンで制圧射撃。ピンポイント攻撃も可能。にもかかわらず、肩に大砲を乗っけてしまっては、使用目的が限定されてしまい、本来の汎用性を損なってしまいます。
作中で、まともな支援射撃をしているのは、これまた0083のチャック・キース少尉。コンペイトウの戦いで、ウラキの「敵を押さえてくれ」 に対して、まぁ、キース本人は当てるつもりで撃っていたのでしょうけど、やみくもな射撃を続けることで、相手を回避に専念させ、その隙に、ウラキがガンダムで墜とすという。シーンがあります。ミノフスキー粒子によって誘導兵器が使えない世界ですから、張り付いて仕掛けるよりは、ある程度距離があった方が良いのかも知れませんが…手持ち武器で十分な気もしますねぇ。
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