RYUSEI, The Rising Dragon


The oldest stick rocket in Japan

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< THE ROCKETs OF JAPAN >
コゲチャ作

図1 龍勢の上昇

図1 龍勢の上昇

我が国には古くから「龍勢」あるいは「流星」(どちらも読みは「りゅうせい」)と呼ばれる木、竹などの筒に黒色火薬をつめて打ち上げる農民ロケットが存在しており、現在までに埼玉県吉田町、静岡県清水市草薙、静岡県岡部町、滋賀県米原町などの日本各地にて伝承されている。
吉田町の龍勢の場合、龍勢の最も古い記録は明治時代に龍勢の打ち上げが椋(むく)神社に奉納された記録があるが、それ以前にも住民が自由に打ち上げられていたものと考えられている
形状としては火薬筒に方向安定のための竹の棒をくくりつけたもので、丁度、笛ロケットを巨大化した様な形になっている。吉田町の龍勢の場合、頭の部分は長さ約60cm、筒の内径は3寸(約9cm)、矢柄(安定棒)の長さは約18mである。これを打ち上げ櫓(やぐら)に垂直にセットして導火線に点火すると白煙をはきつつ轟音を響かせながら上空300m以上に上昇する。このありさまが昇天する龍に似ているので「龍勢」、あるいは夜空の流れ星にたとえられて「流星」の2通りの呼び名がついたと言われている。
龍勢の起源は明確な記録がなく明らかではないが、戦国時代に発達した狼煙(のろし)から発展したのではないかという説が有力である。
図2 頂点近くまで上昇した龍勢

図2 頂点近くまで上昇した龍勢

図3 龍勢の構造

図3 龍勢の構造

参考:日本各地の流星/龍勢 一覧
コゲチャ作「THE ROCKETs OF JAPAN」(http://www.bekkoame.ne.jp/‾yoichqge/)より

吉田町の龍勢


毎年10月10日の体育の日(2000年からは10月の第2日曜日に変更)に椋神社秋の例大祭として龍勢が奉納される。朝9時から17時まで約15分間隔で30本ほどの龍勢が奉納される。
奉納者は1カ月程前から各流派ごとに龍勢の製造を始め、1週間程前に煙火業者の作業所で火薬筒に火薬が詰められて祭りの当日まで厳重に保管される。祭りの当日の早朝(午前零時)に煙火業者の倉庫から人家の少ないコースを選び龍勢安置所まで火薬筒が輸送されると奉納者は朝までに火薬筒を固定し背負い物の取り付け、最後の作業をする。作業が完了すると龍勢は打ち上げ順に並べられ、お払いを受け、打ち上げを待つばかりとなる。
打ち上げの順番が近づくと奉納者は安置所より龍勢をかつぎ、打ち上げ櫓まで練り歩く。櫓までつくと龍勢の頭部に綱を結び、櫓の上部につけた滑車によって引き上げて固定する。最終点検が終了すると導火線を下げ、大幣束を大きく左右に振って最終的な清めをして人員は退去する。

図4 打ち上げ櫓へ運ばれる龍勢

図4 打ち上げ櫓へ運ばれる龍勢

図5 奉納者は龍勢をかついで打ち上げ櫓までねり歩く

図5 奉納者は龍勢をかついで打ち上げ櫓までねり歩く

一方、観客席側では大幣束を大きく左右に振られたのを合図に流派の代表者が「トザイ トウザイ〜 ここに掛け置く龍の次第は...」と独特の口調で口上を始める。奉納の耕地名(企業名やグループ名)、流派、玉名(背負い物や仕掛けなど)を述べ最後に「...これを椋神社に御奉納〜」を合図に櫓が白い煙につつまれる。数秒後「ゴォーッ」という轟音と共に龍勢が打ち上がる。白煙が龍の様に一直線に上昇し、見事に上空で背負い物(花火や落下傘)が花開くと観衆から拍手と歓声が上がる。
正確に数えたわけではないが、見学した印象では奉納された龍勢のうち約半分が「筒っぱね」(地上で爆発した)又は「居づくまり」(噴射をしたが上昇しない)と呼ばれる失敗で上空へ打ち上がらず、無事に打ち上がっても、そのうちの半分が途中で墜落したり、空中爆発したり、上空で背負い物が開かなく失敗してしまう。見事、空高く打ち上がり、上空で花火あるいは落下傘を花開いて観衆から拍手と歓声が上がる大成功の龍勢は全体の4分の1もない。

図6 筒っぱね(地上で爆発した)

図6 筒っぱね(地上で爆発した)

図7 居づくまり(噴射をしたが上昇しない)

図7 居づくまり(噴射をしたが上昇しない)

図8 龍勢の頭の部分 背負い物として唐傘が取り付けられている

図8 龍勢の頭の部分 背負い物として唐傘が取り付けられている(龍勢会館)

龍勢会館

平成4年に吉田町は龍勢まつりを広く町外に紹介すると共に伝統ある民族芸能を伝承保存することを目的として龍勢会館をオープンさせた。館内には龍勢各流派の紹介をはじめ、龍勢の歴史や龍勢の制作の行程が実物模型と写真で分かりやすく展示されている。ビデオシアターでは大型スクリーンにより龍勢の迫力ある打ち上げシーンを音と映像で再現ており、また、吉田町内の観光案内を紹介するコーナーもある。
別館では実物の打ち上げ櫓の上部を再現し、音と光と共に龍勢まつり当日の臨場感が再現されている。

参考文献

龍勢関連のホームページ

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