クラウドもあまり場を離れては、エンリックに対し非礼かと思い、中へ紛れ込む。
 もっとも、カイル卿には気が付かれていたらしい。
 大広間の宴が終わった後、問い質された。
「姫と親しげにお話されていたようですね。殿下にしては随分と社交的でいらっしゃる。」
「別に道案内の礼を言っただけだ。」
 あやうく口を滑らした事は黙っている。
 会話の内容を聞かれない内に、他に思い当たったことをカイル卿に訊ねた。
「あのような年頃の姫がおられるとは聞いてなかった。」
「私もです。せいぜい十三、四歳くらいかと思っていたのですが違っていたようです。」
 隣国とはいえ、所詮、他国である。
 情報が正確に伝わるとは限らない。
 貴族が早婚であるのは、さして特別な事ではないが、一体国王が何歳の時の御子なのかと、二人は考えてしまった。
 親子というには、あまりに年が近そうだ。

 若い君主と美しい姫。
 垣間見た活気あふれる都。
 ドルフィシェと何が違うのか。
 さぞ、退屈するのではないかと不安に思っていたクラウドだが、いらぬ心配だったようだ。
 これから始まるダンラークでの日々は、思ったより楽しい予感がするのである。

 陽だまりのひととき(1)  第十六話  TOP