ドルフィシェでも、婚礼の祝福で人々は沸き返っていた。
街並みの様相もダンラークとは違う。
それでも賑わう声は同じだ。
歓迎されていることに、ティアラは安堵を覚える。
クラウドが待っていてくれるとはいえ、見知らぬ土地だ。
他国の王女であるティアラを素直に受け入れてくれるか心配はあった。
同行しているエルデ公は、ティアラの気丈さと健気さに感嘆する。
おそらく長旅は初めてだと思われるのに、まず周囲へ気遣いを見せる。
さぞ疲れや不安を抱えているだろうに、自分の事は何一つ言わない。
(殿下は良い姫をお選びになった。)
今頃、都でティアラの到着を指折り数えているに違いないクラウドの姿を、頭の中で想像するのであった。
ティアラが宿泊する場所には、ドルフィシェに入って以来、必ずクラウドからの便りが届いている。
カードに短い文章ではあったが、ティアラへのねぎらいが綴られている。
一日の終わりに読むと、ティアラは心がやすまるのであった。
ようやく都の郊外に達すると、明日はもうドルフィシェの都だ。
クラウドが、毎日、暦と地図を広げ、ティアラの足取りを追っている。
やっと会えるかと思うと、夜が明けるのが待ち遠しい。
カーテンを開くと、窓の外一面に星が煌めいている。
この星の下に、もうティアラはいるのだ。
(早く朝になればよいのに。)
残る僅かの時間を気の遠くなるような長さに思いつつ、クラウドはティアラのことを考えるのであった。
第二十話 TOP