クラウドが大喜びで触れ回ったため、一日でティアラの懐妊は広まっていった。
 生まれてくる子が男か女かは議論の沸くところだが、やはり王子であって欲しいいう願いは万民にある。
「父親になるのか。」
 クラウドは大変楽しげである。
 最初の子であるから無理もないとカイル卿は思いつつ、
(あれでもう少し自覚と責任感がついてくれれば。)
 心の中で呟いた。

 弟や妹の出産準備を一緒になって手伝ってきただけに、ティアラも何をどのように整えればよいかはわかる。
 ただ自分の身に起こってみると、とまどいもあり、父も母もいない心細さもある。
 かわりにクラウドは前にも増して優しくなり、ビルマンもメリッサもレジーナも気を遣ってくれる。
 生まれてくる子供のために、ティアラが編み棒を動かしていると、メリッサとレジーナも、不慣れな手つきながら、一緒に作ろうとするのであった。

 ダンラークのエンリックには一足早いクリスマスプレゼントとなる。
 ティアラとクラウドからの個人的な手紙を、それぞれ何度も読み返した。
 大いに喜び嬉しがった後で、複雑な表情をする。
「こんなに早く孫ができるとはな。」
 エンリックもまだ三十代。
 充分に若いし、子供達も幼い。
 マーガレットの横で寄りかかっているアシューを見て呟く。
「子供も孫も年が変わらないな。」
 さすがに、これ以上マーガレットに子が生まれないことを祈る。
 孫より小さい子供はやはり気が引けるのであった。

 もちろんティアラ懐妊の報はダンラーク中の人間も喜んだが、ティアラの子、すなわちエンリックの孫になると思うと、一様に妙な感じを覚える。
 「お祖父様」と呼ぶには、少々ためらってしまいそうな、国王であった。




 今回からドルフィシェ中心の展開になります。
 これを機に背景色も変えてみました。
 雰囲気に合わせた壁紙を使うこと(筆力を素材でカバー…)もあると思いますが、基本はこの色。
 なんとなくイメージカラーが二色あった私の趣味です。
 今後も「陽だまりの庭」によろしくお付き合いください。
 
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