さらに二年の後、ティアラは待望の王女を生む。
 二人続けて男児だったので、そろそろ女の子と皆、願っていた。
「名前、どうしようか。」
 クラウドがティアラに聞く。
 姫なので、母親の意見も考慮するつもりなのだ。
「私は呼びやすくて、覚えやすい名が良いですわ。」
 できればごく普通の名の方が親しみやすい。
 ティアラ・サファイアという自分の名は父の想いが込められているとはいえ、小さな頃は随分難しくて立派だと、とまどったものだ。
 クラウドは二人の息子以上に悩んだ挙句、あまりいないような名前を考え出した。
 パール・クリスタル。
 ティアラは耳にした瞬間、ためらっった。
「真珠と水晶だ。清楚で眩い姫になるように。」
 父親なりに意味があって選んだらしい。
 多分、ティアラ・サファイアの名にちなんでのことだろうが、すでに決めているようなので、ティアラも承知してしまった。

 ドルフィシェから慶事の報はダンラークに何度も届けられ、エンリックは子供達に囲まれた愛娘の幸福そうな様子を頭に思い描き、満足するのであった。


  第二十三話  TOP