前編
初顔合わせから意気投合したエンリック、クラウド、ジェフド。
三人でゆっくりしたいと言い出したのは誰だったか。
たまには息抜きと、なにやら画策。
人の知らぬ間に、こっそり外へ抜け出した。
それぞれ、城や王宮を振返り、呟いた。
「さて行くか♪」
待ち合わせの日時、約束の場所に到着したエンリック、クラウド、ジェフド。
「お互い無事に会えて良かった。」
皆、晴れやかな顔つき。
「やはり抜け出すのは昼に限る。」
無断で国を出てきて、とんでもないことを言っていた。
もちろんダンラーク、ドルフィシェ、カルトアでは大騒ぎ。
エンリックはお茶の時間が過ぎても執務室に戻ってこない、クラウドは子供達の寝顔を見に行ったきり、ジェフドは散歩と称して、どこまで行ったのか。
「何を考えておられる、陛下は!?」
それぞれの国の臣下達は、同じ台詞を口にした。
国元の騒ぎをよそに、てくてくと三人は歩いていた。
今後の相談で語り明かす事になりそうなので、初日は野宿。
「外でご飯だ。」
一番喜んでいるのはエンリックである。
(はしゃいでるよ、この人。)
クラウドとジェフドはピクニックと勘違いしてるようにしか見えなかった。
森の中、焚き火を囲んで持ち寄った食料で、簡単な食事をする。
乾肉、チーズ、パンなど、皆、持参している。
エンリックは菜園で取れた野菜とワインの小瓶まで三人分持ってきた。
「重かったでしょう。父上。」
「美味しいですね、このワイン。ダンラーク産ですか。」
クラウドとジェフドが感心する。
エンリックの荷物の半分は食料らしい。
随分軽くなったとエンリックが笑っている。
雑談を交えて、色々話し合う。
「旅費は私が何とかできると思うけど。」
ジェフドはもちろん竪琴を持ってきている。
久々に吟遊詩人が出来ると、内心嬉しくてたまらない。
三人なら木賃宿に泊まってもいい。
「洗濯は各自。掃除はいらないね。買出しと料理は交替で…。」
「料理?」
ジェフドの話の途中でクラウドは怪訝な顔をした。
「もしかして、できない?」
「ティアラの手伝いしたことないのか?」
ジェフドとエンリックの驚いたような質問に、クラウドは黙って頷くしかない。
「野菜の皮むきも?」
「スープくらい作れない?」
料理がまったく何も出来ないことを確認したエンリックとジェフドは呆れたように言った。
「あ〜あ。これだから坊ちゃん育ちは。」
クラウドがそんな事を言われる筋合いはないと返せる雰囲気ではなかった。
「仕方ないから、薪割りと水汲みだね。それから後片付け。」
どんどん増やされてる気がして、クラウドは
「枝、拾ってきます。」
と、その場を逃げ出した。