翌朝、カミーリャはアーナディアとファリアーナ、それに妖精や動物達のもてなしを受け、おみやげに籠に山ほどのきのこと木の実をもらった。
「本当は家まで送ってあげたいのだけど。ここからなら帰れるでしょう。」
 アーナディアは村へと続くはずの森の小道まで送って来てくれた。
「はい。ありがとうございました。」
 カミーリャが礼を言い、アーナディアをもう一度見上げると…。
 朝日を受け、茶色の髪が一瞬金色に輝いたと同時に、その姿は消え、いつの間にかカミーリャは家の近くに立っていた。

 カミーリャは急いで家に戻ると、母と心配して来てくれた物知りのおじいさんに、昨夜の不思議な出来事を話した。
 するとおじいさんは語った。
 昔、この地に神の命で降りてきた天使達の話を。
 ようやく天に帰るという日、一人の天使だけは地上に残った。
 自然をこよなく愛し、森から離れられなかったのだ。
 天使の友であった月光の精も説得しようと地上に降りたまま、戻らなかった。
 困った事に妖精まで一人、また一人と天使に魅かれ、天上を去る。
 ついに神は妖精の王と相談し、二度と天に還らぬ約束で天使の持つ翼を取り上げ、妖精達と共に森を封じ込めてしまった。
 長い年月が経ち、天使の金の髪は大地の茶に、空色の瞳は森の緑に変わったという。
「その天使は探そうとしても見つからない。カミーリャのように森で困った人だけに姿をみせるんじゃろう。」

 その言葉通り、カミーリャは二度と森でアーナディア達に会うことはできなかった。
 しかし、この不思議な出来事を忘れることなく、年老いて土に還る日まで、絶えず子や孫に語り続けた。
「森には優しい天使と妖精が動物と暮らしているの。そして森で迷った人達を守ってくれているのよ。」

                           <完>




 この話を書き直したのは、四回目くらいになります。
 どうもネタにつまると使いまわすらしい。
 最初に書いたのが、小説を書き始めた頃。何と中学時代。(何年前だ!?)
 原文は「ですます調」。(笑)
 一応、古い作品を引っ張り出した言い訳をしておきます。
 本当に初期のファンタジー、というより小説書き始めたばかりの作品。
 ついでに女の子が主人公!
 おまけに動機が笑える。
 県だか市で秀作を集めて作る文集があるんだけど、選考に出すから書いてみろと担任に言われて。
 創作部門というのがあったんですよ。
 どうして担任にバレたのかも不思議なんだけど。
 二本書いたんだけど、見事落選。
 文集読んで納得。空想的すぎたんだ、この話。
 どこか童話っぽい私の作品と比べて、載っていた作品は現実味があった。
 高一の頃、アーナディアの天使時代を書きたくなって、ノート一冊分に仕立て直したのに、肝心のノートが紛失!(泣)
 懐かしさと悲しみのこもった短編です。
 

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