「二度目のね。」
そうだろう。いくらなんでも、若すぎる気がした。
「でも、他人じゃないんだ。叔母さんでもあるから。」
どうも、複雑な家族の事情があるらしい。
「本当の親がいないのは嘘じゃないさ。まあ、何かややこしくて。俺の名前、本名なんだけど、地球じゃ少しは知られた家なんだ。聞き覚えないかなあ。」
ヴェスナー・レギン。
レギン家。そういわれてエリックとクリフは顔を見あわせた。
「おい、まさか、あのレギン財閥か?」
広く名を知られた有数の大企業。
手がけていないものはない、とまで言われている。
クリフが思い出したように、言った。
「確か何年か前、当主が宇宙船の事故で亡くなったっんじゃないか。」
「それが親父。あの事故、俺も一緒にいたんだ。まあ、運良く助けられたんだけど、しばらくして気が付いたら死亡者リストに俺の名があってね。」
宇宙船の事故ではよくあることだ。
救命シャトルが事故現場から離れて救出される例もある。
ヴェスナーは爆風でかなり流された上、意識が戻って、自分が何者であるか思い出すまでに時間もかかった。
その間に生存は絶望と判断されたらしい。
「その時、もういいやと思ったんだ。何考えてるんだか、お袋の妹と再婚したものだから、うるさい親戚もいたし。弟も生まれてたしね。」
当時十歳足らずだったとはいえ、いつもごたごたしていた家の雰囲気は好きでなかった。
もちろん父や新しい母との間柄は普通だったが。
結局、事故による遭難者として養護施設に預けられ、奨学金で何学年もスキップして、ポリス・アカデミーに入った。
いまさら、名乗り出るつもりもなかったのに。
「もめてるんじゃないか。」
エリックが呟いた。
資産家に多い後継者問題。
宇宙船事故の行方不明者が何年もたって、生存が確認されることだってある。
ヴェスナーが本人の意思で帰らなかっただけなら、ただの家出だ。
「まずいなあ。学校に手を回されたら卒業と就職がパアだ。」
教官からの呼び出しがないところをみると、母のモニカは黙って引き上げたのだろう。
もし、このまま連絡を取らなかった時には、どうなるか。
迷っている内に十日が過ぎた。
卒業まで手抜きのない訓練のおかげでくたくたで寮に戻ったヴェスナーは、またも受付で声をかけられた。
「お客さん、来てるぞ。」
またかと思って、玄関に引き返そうとした。
「居残りで帰らないとでも、言っといて。」
その時、後ろから呼び止められた。
「兄さん!?」
ぎょっとして、ヴェスナーが振り返る。
モニカではない。
濃い茶色の髪をした少年と、金茶の髪の少女。
「ウィリアムとキャサリン…か?」
ヴェスナーとは異母兄弟。
十三と十一になるはずだ。
「やっぱり兄さんだったんだね。」
ウィリアムが嬉しげな声をあげる。
ちょうど人の出入りが多い時間だ。
人目を避けて、談話室に入る。どうせ、皆食堂に直行だ。
座ってから二人に尋ねる。
「どうした。こんな所まで。誰かに頼まれたか。学校は?」