10/29企画
君と共に
(注:パラレルです)


 もっと大人になったら迎えに行くよ、キラ。
 幼い日、交わした約束。
 近隣の国同士の結びつきとはいえ、アスランとキラは想いの通じ合った仲だった。
 傍目に政略結婚でもいい。
 お互い十六になった年、突然事態は変わった。
 アスランの父、パトリックはキラの国に対して戦を仕掛けたのである。

「どういうことですか、父上!?大体、キラは、あの国の姫は私の許婚なのですよ!」
 いきなり戦支度を始めたパトリックに対して、アスランは怒りを隠せない。
 原因は昔からの領土争いだが、アスランとキラが婚約した時点で解決したはずだった。
「姫との婚約?破棄したに決まってる。お前には新しくシーゲル王のラクス姫との話を整えた。」
「そんな一方的な…!」
「黙れ。そんなことはどうでも良い。お前も出陣の準備をしろ。」
 息子の言う事を聞いてくれる父ではない。
 ラクスとの婚約とて、一時的なものだろう。
 温和で知られるシーゲルにしてみれば、国家間の均衡を保つ意味で承知したことと思うが、いつまたパトリックの気が変わるか知れたものではない。
 慌ただしい城内で、アスランはキラの身を案じた。
 さぞ心細いだろうに。
 何とか止めさせたいと、必死にパトリックを説得するが、状況はすでに悪化の一途を辿っていた。
「敵の王女など捕らえて晒し者にしてくれよう」
 パトリックの言葉を聞いたアスランは愛馬のイージスを駆って、城を飛び出す。
(間に合ってくれ。)
 もう追っ手がキラに迫っている。
 抵抗すれば殺すのもやむなしとの沙汰があれば、城に引き立てられる前に、命がない。

 パトリックの攻勢が早かったため、キラは万一のことを考え、護衛の騎士と共に城を脱出していた。
 せめてキラだけでも落ち延びさせようと、養子に行った双子の兄、カガリの元へと赴く最中だ。
 人目を避け、森の中を潜り抜け、馬車を走らせる。
 敵の影がない道を通るようにしても、国境に近付くにつれ、兵の数も多くなる。
「待て!怪しい奴。キラ姫の一行か!?」
 襲い掛かる兵に応戦しながら、キラを馬に乗せ替え、
「お逃げください、姫!」 
 供の者が叫んだ。
 馬を走らせるものの、不慣れなキラでは追いつかれるのも時間の問題だ。
 後ろから聞こえる蹄の音が増えてくる。
(もうダメかもしれない。)
 弱気になった瞬間、背後からキラの手綱を引く手が伸びた。
「こっちだ、キラ。」
「アスラン!?」
 今や敵になってしまった国の王子が目の前にいる。
「どうして…。」
「助けにきたんだ。兄君の所へ行くんだろう。」
「でも、そんなことをしたら…。」
 アスランは一人しかいない世継ぎだ。
 寝返ったとあれば、波紋も大きい。
「構わない。キラのためなら。」
 国も父もすべてを投げ打つ覚悟はとうにできてる。
「貴方の名に傷がつくわ。」
 女のために国を裏切った卑怯者。
 なんと謗られることか。
 泣きそうなキラにアスランは笑って見せた。
「キラを守り抜くのが、俺の名誉であり誇りだ。」
 この手にキラが残れば、他に望むものなどない。
 相手が自国の王子と知り、怯む兵の隙を突き、手の出せない他国の領内へ入り込む。
 どうにか切り抜けて、互いに恋人の肩を抱きしめた。
「愛してる。キラ。もう離れない。」
「私も愛してるわ。アスラン。」
 愛しい者の存在を確かめるかのように、唇を重ねあう。
 数多の困難が待ち受けようと、触れ合った手を離すことはしない。
 誰よりも大切な存在は、今、ここにある。

                            <完> 

      

 アスランお誕生日おめでとう♪企画。
 題して「アスラン王子にキラ姫をプレゼントしてあげよう」(笑)
 やっぱりお持ち帰りさせてあげたいじゃない?
 欲をいえばウエディングドレスでリボンかけてと思ったんだけど♪(アタマ大丈夫か?)
 本編モードだとキラの女難の相が消えないので、あえて姫設定にして晴れてアスランは王子に。
 なんといってもアスランがキラに走った時は見直したよ。
 キラのためにパパも国も婚約者も捨てる度胸があるなんて、男だねー。
 すごくカッコ良くみえた。
 ファンタジー仕立てなのは、ただの趣味です。
 愛する人のために、すべてを賭けてというのが萌なので♪