5/18企画
続・君と共に
(注:パラレルです)


 父よりも幼馴染の婚約者キラを選んだアスランは、今や敵となった故国の兵の目を掻い潜り、
キラの双子の兄、カガリのいるオーブへと急いだ。
 ようやく城門の前に辿り着くと、キラを抱きかかえ、愛馬イージスからアスランは大声を
張り上げる。
「開門!カガリ王子の妹姫キラを送り届けに来た!開門!」
 ガラガラと橋桁の鎖が落ちる音が耳に響く。
 ただ一騎だけ、城内に駆け込んだ後、再び城門は堅く閉ざされた。

「キラ!無事で良かった!」
 城内を案内されている途中、廊下を走ってくる人影。
「兄様!」
 懐かしい同じ顔。
 双子の兄、カガリだ。
「心配してたんだ、キラ。よくここまで…。」
 妹を精一杯優しく抱きしめ、喜んでいると、キラの背後のアスランが視界に映る。
「お前、アスラン!よくもキラのいる国を…、この裏切り者!」
 迷わずアスランに掴みかかろうとするカガリを、キラは必死に止めた。
「やめて、兄様。助けてくれたのは、アスランよ!」
「離せ、キラ。私は許せない。」
 怒りに燃えたカガリに、もう一人声をかける者がいる。
「落ち着きなさい、カガリ。」
 オーブの城主ウズミ。
 現在のカガリの父である。
「でも、こいつのせいでキラは国を追われたんだ。ムウ兄様やマリュー姉様も…。」
 ムウはキラとカガリの兄で「エンデュミオンの鷹」の異名を持つ武人であり、その妻マリューは
共に愛馬アークエンジェルを駆る女騎士。
 今も国の攻防のため、戦っているはずだ。
 キラを城の外に脱出させたのは、苦戦を強いられている証拠だが、カガリがいるオーブに
援軍を求めてこないのは、中立国である立場を慮ってのことだろう。
「アスランを責めても仕方がなかろう。それにキラを守ってくれた礼を言うべきではないか。
彼とて、パトリック王に逆らっての行動だ。」
「俺はいいんです。婚約者ですから。」
 とにかく疲れているキラを休ませようと、カガリは侍女のマーナに世話を頼んだ。
 アスランもカガリが部屋まで案内してくれたが、
「あまり城内をうろつくなよ。」
 アスランは、まだ信用されてない事を悟り、頷いた。
 地下牢に放り込まれなかっただけ、ましというものだろう。
「あの、カガリ…。」
「何だ。キラと同じ部屋なんて、使わせられないぞ。」
 カガリの言葉に、アスランは慌てて首を横に振る。
「そんなことじゃなくて!済まない。父の企みに気が付かなかった。俺はバカだから。」
「バカなら、仕方ないさ。私も言いすぎた。」
 あっさり肯定されてしまい、二の句が告げないアスランだった。

 キラが逃げ込んだことで、パトリックの目はオーブへも向き、勝手に決めたアスランの
婚約者ラクスの父、シーゲルの元に攻勢の要請が届く。
 だがシーゲルとウズミは親交が深く、援軍を出すならオーブの側へという意見も多い。
 何しろパトリックの王子アスランがキラを伴って自軍を抜け出している以上、ラクスとの婚約は
成立していないと思って良い。
 当然オーブでも窮地に立たされているキラとカガリの母国を助けるべきだと主張する者もいる。
 だが領内への進攻がない現在、無用な戦火の拡大を防ぐ意味で、ウズミとシーゲルは
パトリックに対し、停戦勧告を繰り返した。
 しかし、パトリックはウズミとシーゲルが手を組んだと解し、兵を送り込んでくる。
 国境の砦を破られたシーゲルは、まず娘のラクスを城外へ逃がした。
 行く先はオーブである。
 臨戦態勢になったオーブで、カガリも出撃の準備に追われ、アスランも加勢する気だが、
いかんせん敵国の人間。
「お前、自分の国を敵にまわせるのか。」
 カガリの言い分はもっともだ。
「俺の他にも、父についていけないと思ってる者はいる。話せばきっと耳を傾けてくれるさ。」
 アスランが城を抜け出す際、見逃してくれた従兄弟や幼馴染達。
 戦場で刃を交えることにはなりたくない。
 まさに出陣しようとする恋人と兄を前に、キラは心配そうな表情を見せるしかなかった。
「そんな顔しないで。笑って見送ってほしい。キラ。」
「アスラン、無事でいて。兄様も。」
「もちろん。」
 アスランとカガリは同じように笑顔で応え、やはり見送りに出ているラクスにカガリは言った。
「姫。今度は貴女の歌が聴きたい。」
「喜んで。カガリ様。」
 ラクスは名だたる歌の名手として知られているのである。
 
 意を決してオーブを出立したものの、結局アスランはパトリックと対峙することはなかった。
 軍勢の入り混じる中、突然城が崩壊したのである。
「武器庫の爆発か!?」
 誰もが、そう思った。
 アスランが生まれ育った城は、目の前でがれきと化した。

 真相は生き延びた者の証言で、後日明らかになる。
 不老不死の妙薬の研究をしていた魔術師クルーゼが、逆に老化を加速する薬を作り出し、
誤って飲んでしまい、身の不運を呪った彼はパトリックの野心を増幅させる術をかけ、自分の
命が尽きる時、より多くの道連れをと、城の武器庫に罠を仕掛けていたのだった。

 アスランは傷心の身をしばらくの間、オーブですごしたものの、城と主を失った故国を
見捨てるわけにもいかず、
「再建する手伝いならしよう。」
 とウズミやシーゲル、キラの兄ムウも言ってくれた。
「アスラン。私も付いていくから。」
 キラはアスランに微笑む。
「ありがとう。キラ」
 今は、その笑顔が支えだった。
 

 かくして数年後。
 再建された城での最初の行事は、アスランとキラの結婚式であった。
 招かれた賓客の中には、キラの兄ムウとマリュー夫妻、カガリとラクス夫妻の姿もある。
 互いの国を行き来する内、カガリとラクスは恋仲になったのだ。 
 真っ白なウエディングドレスのキラを、アスランが両腕で抱き上げて大広間に現れる。
「愛してる。」
 同じ台詞がアスランとキラ口からこぼれ、キラのウエディングベールが揺らめく。
 二人の唇が重なり合い、盛大な拍手と喝采が沸き起こるのだった。


                           <完>

 
      
 
  お誕生日おめでとう♪キラ&カガリ!
  どうにか間に合ったよー。
  しかしキラのお祝い企画の話か、これ。(笑)
  カガリもお祝いなので、ちゃんとラクスを。
  ほら、丸くハッピーエンドに納まった。
  一応、考えてた筋書き部分もあるけど、長くなるのではしょってしまいました。
  あくまで「5/18企画」なので。
  ウエディングドレスにお姫抱っこ、ああ幸せ気分♪(脳内妄想中)