濡れた服が何とか乾いた頃、リュオンはエセルの寝顔を見つつ、静かに部屋を出た。
 なるべく静かに廊下を歩いていたのだが、
「まだ夜は明けていませんよ。」
 と、言葉をかけられた。
 修道院の一日の始まりは早い。
 すでに起きている人間もいて当然だった。
「すみません。あの子をお願いします。」
 見つかったリュオンは頭を下げて、慌てて外へ走った。

 できるだけ遠くへ。
 人目につかぬ場所へ。
 三人一緒にいなくなったのだから、ばらばらに行動するとは考えてないだろう。
 自分さえ追っ手を振切れば、マリアーナとエセルの居場所は知られまい。
 それなら、一刻も早く、二人から離れよう。
 リュオンは再び、あてのない道を駆けて行った。


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