数日後、もう一人看護婦かわりにと、今度は修道女を紹介された。
「是非にと所望だから。」
 診療所の噂を聞きつけてとのことだという。
 すでにエセルがいるからと断ろうと思ったリュオンは本人に会って絶句した。
 修道女姿になっているとはいえ、見間違うはずもない。
 妹のマリアーナ。
「お世話になります。」
 神妙に頭を下げたマリアーナも驚きを隠せない。
 久しぶりに兄と顔を会わせれば、伝え聞いた医師だったのだ。
 さらに診療所にはエセル。
「姉上!?」
「エセルなの?本当に!?」
 思いがけず兄弟が再会する。
 三人共、もう家族には会えないかもしれないと考えていた。
 それぞれの場所で、別れの挨拶もせずに離れてしまったのに。
 マリアーナとエセルは性格が元来素直でおとなしく、連れ出したリュオンが迎えにこないのならと、修道院で過ごす決心も付きやすかったのである。

 ひとしきり忙しさにまぎれ、診療所に患者がいなくなった後、マリアーナはためらいがちに口を開いた。
「お兄様。あの、お父様達はどうしておられるかご存知ですか。お会いになられてますか。」
 リュオンがディザにいながら、診療所で生活を送っているのはわかっても聞かずにはいられない。
 エセルもずっと気がかりだった。
 リュオンは他の家族のことは何も言わないので。
 二人の真剣な目を見て、
「今度、一緒に父上の往診に行くか?」
 リュオンが手術を要する患者のため、休診していたのを知っていたエセルは顔色を変えた。
「まさか兄上が担当したのは父上だったのですか。執刀は兄上が?」
 リュオンは頷いた。
 隠しておいたとしても診療所に二人が出入りしていることは、いつか王宮にも届くかも知れない。
「一人でやったわけじゃないが。」
 本人達に再会の意志があるなら連れていっても良い。
 俗世と縁を切ったとはいえ、まだマリアーナもエセルも子供だ。
 都にいれば懐かしさもあるだろう。
 たとえリュオンが王宮を飛び出した年頃に近いとしても。
 せめて見守っていきたい。
 リュオンが還俗して医師となっているように、自分達の信じる道を歩めることを。


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