水平アーチ(?)


 

 本ページは2012年総会後の懇親会で話題となったものを
素人考えで綴ったもので,日本の石橋を守る会の見解ではありません。
 

 野球のホームランや雨上がりの虹,めがね橋など,アーチと言えば曲線ですが,機能的には曲線でないアーチも存在するのでしょうか? なお「水平アーチ」とは当方の造語です。
 個人的な勝手な解釈かも知れませんが,アーチとは「鉛直方向の荷重を斜めや水平方向に変える構造物」ではないかと。ここに紹介する構造も鉛直方向の荷重を水平方向に移します。よって,これも「アーチ」と言えるのでは?
右写真は直方体(6cm×3cm×1.5cm)の木製ブロックを上下2列,各2個を水平に並べ,両側から垂直に立てた2個で挟み,輪ゴムを掛けたものです。この上に10円玉を20枚載せても崩れません。鉛直方向の重力を水平方向に移動させて安定した構造となっています。これもアーチと言えるのでしょうか? これもアーチでしょうか?
これもアーチ? これもアーチ? 鉄アレイを載せても大丈夫!
今度は上写真のように,木製ブロックを二枚重ねて6列並べ,両側に本を積み,並べたブロックが押し出されないように固定します。下のブロック4個を抜いても(下のブロックは6個とも抜いても可,マウスオン写真のように両端の2個を残した方が強いとのアドバイスも)上のブロックは落ちません。 落ちないどころか,写真のように荷重を加えても壊れません。更に,1kgの鉄アレイを載せたら,両側の本が押し出され,崩れてしまいました。しかし,両側の本を増やし重くすれば,1kgの鉄アレイも(マウスオン写真)何のその!両端さえ動かなければ,更なる荷重にも耐えることができます。
水平アーチ(?) 輪石の自重を含む鉛直方向の重力は,水平方向に並んだ輪石の上部では中央方向へ,下部では両岸方向へと向かう力(またはそれらの逆方向の力)が生じ,輪石の耐圧縮性と堅固な盤石の為,中央方向へも両岸方向へも動けず各石間の摩擦力も大きくなり,輪石はより安定した構造に。
水平アーチ(?) 上下逆方向の力が生じ輪石が傾くことで,連結された輪石の長さは水平方向へ伸長。それが両岸盤石への力となり,各石間に働く摩擦力も更に大きくなり,盤石さえ固定されていれば,輪石はより確固たる構造を保つことになり,石が押しつぶされない限り,輪石は落下しないのか(?)

 「直線的なアーチ(?)も存在するのか?」との発想です。上の写真のような実験の結果,鉛直方向の荷重を水平方向の輪石に伝え,究極的には両側の盤石へ伝わります。アーチを「鉛直方向の荷重を斜めや水平方向に変える構造物」と考えると,これもアーチではという結論(?)に。輪ゴムでなく,伸縮しないもので固定すれば,更に大きな重量に耐えられるのではないかと。本を利用(両側を釘や接着剤で固定しても可)してみました。見た目には直線でも,輪石の内部に見えないアーチが存在しているのでしょうか。鉛直方向の力と水平方向への力の関係は?精密な計量機器等を使って実験できれば,より詳しい構造分析ができるかも知れません。合掌アーチの延長上に水平アーチ(?)。それとも「橋脚のない桁橋」なのでしょうか。検討,確認すべきことも多いのですが,あいにく力学等の知識を持ち合わせていません。当方の勘違いもあるのでは。アドバイスいただければ幸いです。


 実はこのような構造の石橋が大分県で平成21年5月に撤去されています。発明橋1連目の平面図と側面図の略図(別名:鬼飛瀬橋,桐木橋)といい,豊後大野市(旧大野町大原と旧朝地町市万田の間)の大野川支流平井川に架かっていました。大分県内に数多くの石橋を残している石工「川野茂太郎」が大正年間に架橋したものでした。
 発明橋は直方体の石材を並べた3連構造,橋長18m 橋幅1.8m(コンクリート増幅部0.9m)。
 1連目は8個の拱石(輪石?桁石? 右図は平面図と側面図の簡略図)を水平に並べたもので,各拱石は横幅34cm,縦幅40cm。2連目は9個の拱石(?),拱石の幅は1連目と同じ。3連目は,14個の拱石(?),拱石の横幅は34~ 36cm,縦幅58cm。
 不思議なのが,右上の簡略図からも分かるように,直方体の石材は橋脚と平行に並べただけで,桁橋のように橋脚の上には乗っていません。桁(直方体の石材)を支えるものがないのです。それでいて何故,石材が落ちないのか? 撤去工事担当者の話では,拱石間にはモルタルが詰められているだけで、その他の崩落防止策は無かつたとのことです。(「豊後大野市歴史民俗資料館年報2 平成20年度」を参考に)

 「発明橋」は珍しい貴重な石橋だったのですが,撤去を前提とした橋梁新設計画が突然持ち上がり,文化財担当者が知ったのは事業着工後だったとのこと。文化財指定がなされていたら,計画段階から文化財保護担当者も協議に加わったはず。「文化財指定」の意味は大きいのです。最低でも,部材の保存だけでもできたのではないかと悔やまれます。消えてしまってからでは取り返しがつきません。もの言わぬ文化財には代弁者が必要です!よろしければ日本の石橋を守る会に入会し,「もの言わぬ石橋たちの代弁者」になって下さい!
 
 本ページは日本の石橋を守る会が確認しているものではありません。単なる素人考えを綴ったもので,間違いもあるかと思っています。更には拙い文で分かり難い部分も。間違い等は判明次第訂正致します。
 実験前は「何故落ちない?」「両側から強く押し付けることから生じる摩擦から?」と考えたのですが,強く押し付ける必要もなく,両側は固定しておくだけでいいようです。ブロックの傾きによって発生する外への力が水平ブロックをより堅固な構造にし,自らを支えているようにも見えます。普通のアーチ以上に単純かつ不思議な構造ではないかと思っています。しかし,本当に確固たる構造なら,もっと他にも応用実例があってもいいはず。私が知らないだけで,他にも応用例はあるのでしょうか。水平アーチ(?)の名称はともかく,不思議な魅力に取りつかれているところです。(2012/07/11,成田)
 会員の尾上様より「実験結果を見ると、桁の長方形の中にアーチを想定しても両端の取付け部分の説明がつかないようです。隣り合う輪石の上端の圧縮強度で、死・活荷重に抵抗しています。「アーチとは言えない」かもしれません。桁橋とも眼鏡橋ともいえず、新しい概念の石橋かもしれません」とのアドバイスをいただきました。アーチではなかったのですね。興味深い構造ではあるようですが,水平アーチは幻の名称となりました。ありがとうございました。(2012/07/22)
 土木関係の知人によれば,各石間の摩擦が働いているからで,利用例が少ないのはアーチに比べ効率が悪いから。「アーチとは言えない」とのことでした。夢が一瞬しぼんだ気分にもなりましたが,水平構造という利点を生かす活用法もあるのでは・・・,実際に石材を使って,も少し調べてみたいものです。ご助言いただければ幸いです。(2014/07/27)

最終更新:2014/07/27


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