7 元素と原子

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アウトライン
1.物質を作るもと・・・地球表面、宇宙、人体を構成する元素を説明。

2.原子の構造・・・電子、原子核、陽子数、原子番号、質量数、中性子数などの説明。

3.同位体・・・同位体、放射性同位体、放射線などを説明。

4.原子量・・・キログラム原器、原子の相対質量、同位体の存在比と原子量の計算

5.原子力発電と放射性同位体・・・主に高レベル放射性廃棄物の処理問題を考えさせた。

授業の内容

物質を作るもと

 われわれの世界は何千万種類もの物質から構成されているのだが、その物質を作っているもとになる物質(元素)はわずか100種類あまりにすぎない。しかも、約100種類の元素は均等に存在するわけではないので、下の表から分かるようにわずか10種類程度の元素で大部分の物質ができているのだ。

 元素の存在度














 
地球表面※ 宇宙 人体
元素 元素 元素

Si
Al
Fe
Ca
Na

Mg

Ti
Cl
 
49.5
25.8
 7.56
 4.70
 3.39
 2.63
 2.40
 1.93
 0.87
 0.46
 0.19
 

He

Ne


Fe
Mg
Si

Ni
 
55.6
42.1
 0.721
 0.855
 0.186
 0.103
 0.237
 0.068
 0.066
 0.025
 0.020
 




Ca



Na
Cl
Mg
 
65
18
10
  3
  1.5
  1
  0.25
  0.2
  0.15
  0.15
  0.05以下
 












 
※地球表面とは我々の生活に関係する地殻の上部、海水、空気などの化学組成。クラーク数という。
**コメント**
わずかな元素で、多種多様な物質が作られていることを説明しました。「地球表面で一番多い元素は?」とか「宇宙で一番多いものは?」などの質問に、生徒は興味があるようです。

時間があるときは、次のような話をします。
1.宇宙で一番多い水素は核融合という反応でヘリウムになり、エネルギーを放出している。これが太陽のような恒星が輝いている理由である。大きな恒星では、輝きながら周期表の鉄までの元素ができる。

2.恒星の寿命がつきて最後に爆発するときは、鉄以降の元素ができる。

3.地球には、鉄以降の元素があるから、昔、輝いていた星が寿命を終えて爆発し、その後、物質が再び集まってできたものだ。
4.われわれの体もそういう元素でできているから、われわれは「星の子」だ。
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原子の構造             もどる

問1 ヘリウム原子を例にして、原子の構造を述べなさい。

                       質量       電荷
      (電子)・・・・・・・・・・・・・・(1/1840)    (−)
  原子 
      (原子核) (陽子)・・・・・ 1          (+)
             (中性子)・・・ 1          (なし)

問2 元素は約100種類あり、それぞれに対応する原子がある。違う元素では、原子の構造のどこが違うか。

 
 (陽子数が違う)

問3 原子番号、陽子数、電子数の関係を述べよ。

  (原子番号 = 陽子数 = 電子数)

   陽子数と電子数が等しいので、原子は電気的に(中性)である。

問4 質量数とは何か。

  (質量数 = 陽子数 + 中性子数)

 電子の質量は陽子や中性子に比べて小さいので(無視)できる。

問5 元素記号(原子記号)と原子番号、質量数はどういうふうに表すか。

  (省略)

**コメント**
ClのCや、COのOは必ず大文字にするように注意しました。
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同位体                    もどる

問1 水素にはH、H(重水素、ジューテリウム)、H(三重水素、トリチウム)という3種類の原子がある。それぞれの原子の原子番号、陽子数、電子数、中性子数を答えよ。









 

 

原子番号

陽子数

電子数

中性子数


 

 

 

 


 

 

 

 


 


 


 


 


 








 
 
 このように、同じ元素の原子でも質量数の違うものがあり、これを同位体という。つまり、同位体とは(陽子)数が同じで(中性子)数の違う原子どうしである。

【放射性同位体】

 同位体の中には放射能をを持つ原子があり、これを(
放射性同位体)という。
この原子は原子核が不安定であり、分裂してしまう性質を持っている。原子核が分裂するときに放射線を出す。

【放射線の種類】

 放射線には次の3種類がある。

 α線・・・高速の(
ヘリウム)の原子核(陽子()個と中性子()個でできた粒子)の流れ

 β線・・・1個の中性子が1個の(
陽子)と1個の(中性子)に変化するとき、この(電子)が高速で放出されたもの

 γ線・・・非常に波長の短い(
電磁波

 例えば、238Uはα線を出して違う原子(問2)にひとりでに変化してしまう。この原子はさらにβ線を出して他の原子(問3)に変化し、その原子もβ線を出して・・・・というふうに次々と変化し、最終的には206Pbになって安定になる。

問2 この原子の原子番号、質量数、原子記号を答えよ。

   (
原子番号90、234Th

問3 この原子の原子番号、質量数、原子記号を答えよ。


   (原子番号91、234Pa)
**コメント**
高校1年生にはちょっと難しい問題ですが、陽子数が変わると原子番号が変わり、違う元素になることを説明しました。
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原子量(原子の質量の表し方)         もどる

質量の基準は何か

国際キログラム原器
  1kgの基準になるもの、約39mmの円柱形の標準器
  白金90・イリジウム10の合金で、15年間かけて作られた(1899年)
 普通に、私たちのまわりにあるものの質量は、このキログラム原器の質量を基準にしている。

**参考資料**
「帰ってきたキログラム原器」朝日新聞、1993,7,5
(内容)
日本のキログラム原器(工業技術院計量研究所・つくば市)が、パリにある国際キログラム原器との比較を終えて帰ってきた。

キログラム原器は白金イリジウム合金製で、扱うときは脱脂した鹿の皮を貼った特性ペンチを使い、職人芸的な手際の良さが求められる。

計量研では二重のガラスでおおい、温度が安定な地価倉庫に秘蔵している。厳重管理のかいがあって、日本の原器は百年間で百万分の7gの狂いしかなかった。
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原子の質量はどれくらいか
 例
   H   1.6735×10−27kg
   He  6.6465×10−27kg
  12C  19.926 ×10−27kg
  14N  23.253 ×10−27kg

問1 上の例のように、原子ひとつの質量はきわめて小さく、扱いにくい。そこで、原子の場合はキログラム原器ではなく、どれかひとつの原子の質量を基準にしている。歴史的には、まず最初に基準になったのは水素原子で、その質量を1として、他の原子がその何倍の質量かを表したものであった。これを、原子の相対質量という。

 水素原子1個の質量を1としたとき、He原子やC原子の相対質量はいくつになるか。

・He原子

  
(1.6735×10−27 : 6.6465×10−27 = 1 : x)
  
( x = 4 )

・C原子


   (省略)

現在の原子の質量の基準

 現在、原子の質量の基準になっているのは12C原子で、その質量は(
12)と定められている。
(この基準でも、H原子を1としたときとほぼ同じ値になる。)

同位体と原子量

 自然に存在する各原子には、たいてい同位体があるので、同位体の相対質量の平均値が、原子量である。

問3 塩素は35Clを76%、37Clを24%含んでいる。塩素原子の原子量を求めよ。

     (省略)

問4 原子量の基準は12C=12である。次の問いに答えよ。
(1)アルミニウムの原子量は27である。アルミニウム原子1個の質量は、12Cの何倍か。(2.25倍)

     (省略)

(2)マグネシウム原子1個の質量は12Cの2.0倍である。マグネシウムの原子量はいくらか。(24)

     (省略

問5 次の各問いに答えよ。
(1)銅原子には63Cuと65Cuが存在し、天然の銅原子には63Cuが60.2%、65Cuが39.8%含まれている。銅の原子量はいくらか。(約63.8)

     (省略

(2)天然の銀は107Agと109Agからなっており、銀の原子量は107.9である。銀原子1000個中には107Agが何個存在しているか。(550個)

     (省略)

原子力発電と放射性同位体 

**コメント**
ラジウムを例に、半減期の意味を説明しました。

次に、原子力発電所の中では、いろいろな放射性同位体ができてしまうことを説明。特にプルトニウムは猛毒で、半減期が24000年であることを知らせました。

そして、原発が解体されると、高レベル放射性廃棄物がゴミとして出てきて、それは300年間埋めておく計画が有力であることを説明。(資料:「原発停止 巨大なゴミに 300年先の世代に責任がとれるか」朝日新聞、1998,5,1)

また、アメリカでは核兵器関連の核のゴミが、ニューメキシコ州の埋設場に運び込まれていることや、ネバダ実験場に隣接するユッカ山の地下には、原発や核兵器からの高レベル放射性廃棄物を地下処分する施設の計画があることを知らせました。
(資料:「核兵器のゴミ、抗議の中埋設場へ」朝日新聞、1999年4,3 および 「地下処分場にゴーサイン 米の高レベル放射性廃棄物 環境団体は計画反対」千葉日報、1998,12,20)

原子力発電の最大の問題は、放射能でしょう。それが事故によってもれるおそれ、そして廃棄物からもれるおそれがあります。放射能は、減っていくのを時間をかけて待つしかないこと、つまり次の世代への負の遺産になることを知らせました。
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