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銅と銀と食塩水の電池

                           

 銅と銀をリード線でつなぎ、食塩水に入れますと、ごく弱いながらも電池になります。銀が正極、銅が負極なのですが、いったい何が酸化剤になっているのでしょうか?私は、食塩水に溶けている酸素ではないかと思い、次のように実験しました。

【準備】
『器具』 三角フラスコ、ゴム栓、バーナー、三脚、金網
『試薬』 銅板、銀板、食塩水(濃度は任意)

【実験方法】 
(1) 銅板に銀板を巻き付けたものを二つ用意する。

(2) 二つの三角フラスコに食塩水を入れる。そして、一方に銀を巻き付けた銅板を入れ、ゴム栓をする。

(3) もう一方の三角フラスコは、バーナーで加熱し沸騰させる。十分沸騰したら、銀を巻き付けた銅板を入れ、すぐゴム栓でふたをする。

(4) 両方のフラスコを3,4日放置すると、写真のような違いを生じる。(左が沸騰させたフラスコ)

【参考】
 写真のとおり、沸騰させないフラスコでは、銅がイオンになって溶け出します。沸騰させた方は、変化がありません。
 単純に標準電極電位を比べてみましょう。
  2HO + 2e = H + 2OH−  (−0.83V)
  Cu2+ + 2e− = Cu         (0.34V)
  O + 2HO + 4e− = 4OH− (0.40V)
  Ag + e = Ag           (0.80V)
 このように、食塩水の中で、銅を酸化できるのはHOではなく、Oであることが裏付けられます。なお、食塩水は中性ですからHの濃度が小さいため、
  2H + 2e = H (0.0V)
 の反応は考えなくても良いと思います。この反応が起こるのは、おおむねpH2以下の強酸性溶液でのことのようです。

【参考文献】
 渡辺正「電気分解:虚像と実像−電気化学(その2)」化学と教育、44、656(1996)