WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎月1日、16日更新)
第5回 1977年 出典:77年11月29日「若いこだま」
DJ矢野顕子 ゲスト吉田美奈子(NHK第1ラジオ)
後半
(”恋は流星”が流れる)
矢野(以下A)「”恋は流星”でした。これは自分で多重録音してたんでしょう、声を?」
吉田(以下M)「山下くんとボクとで、やってんの。」
A 「何個重ねたの?」
M 「12個だから、ディレイ(Delay)というのがあって。ちょっと遅らせて、移すって
いう奴で、24個」
A 「24!24人分 へえ〜」
M 「そう(笑)」
A 「すごいねえ。よく混乱しないでできるね」
M 「次のレコード会社移ってねえ、多重録音、何回もやってるでしょう?細野さんの曲
とかユーミンのとか以前のアルバムでのコーラスの方が簡単なの!アー とかウー
とか」
A 「何よりも」
M 「言葉でハモっていくより、コーラスでアーとかウーとかの方が簡単だから、まだこ
ういう方が楽なの」
A 「そうか。美奈子のこと いつもうらやましく思うのはアーとか延ばして時にも声が
均一で、上から下まで同じ質で厚みで ポー と出るのが不思議だなあ?と思うわ
け。そういう人、本当に美奈子しかいないし、でも美奈子の声って太いのよね、結
構。そう思わない?自分で」
M 「最近ねえ、太くなってきたんだよね。前は細かった、もっと細かった。高い声にし
ても声がキーキーしててね 糸みたいなの。最近はロープのような声(笑)」
A 「年齢とるに従ってさ、私もそうだよ。」
M 「女の人もね、変わるんだよね。ずいぶん声が」
A 「やっぱりそうかねえ。同じようにやってるつもりなんだけど、昔の録音聴くと、自
分の声、全然ないみたいなの。同じように歌え!と言われれば歌えるんだけど。」
M 「ちょっと、違うんだよねえ。中からでてくるものがちょっとずつ変わってくるの」
A 「やっぱり女の年輪が!(爆笑)…ミナコ いくつになったんだっけ?」
M 「来年で25になるの」
A 「そー、まだそんなもの?」
M 「最近ねえ、ボク、地方とか行くでしょう。すると、”お姉さま”といわれるの」
A 「私も言われるの。不思議だと思わない?」
M 「大して年齢、変わらないのにねえ。男の子が”お姉さま”って言うわけ」
A 「どうしてだろう?今、お姉さまの時代?(笑)」
M 「そうなの(笑)」
A 「頼れるお姉さまが欲しいんじゃないの?美奈子は頼れるんだよ」
M 「あんまり頼られたくはない」
A 「自分をあんまりそういう風には思わない?」
M 「あんまり頼られたくないよ、やっぱり」
A 「そりゃそうだよね(笑)頼られたら困るもん。でも、一般のイメージとして、ここ
に”くぼまさる(WHO?)”さんの絵があるように「大人のおんなのにおい」を
ワーって発散するというようなイメージがあると思うよ。」
M 「そう?」
A 「私よくわかんないけどね。そばの周りの人間が見るのと、レコードとして商品にな
った時の女のイメージと全然違うと思うのね。そういうのを持てるというのは特権
だと思うのね」
M 「アッコちゃんは。ボクなんかはジャケットの方が美しいけど(笑)アッコちゃんは
実物の方が美しいと思う。写真映りが悪いとかいう意味じゃなくて(笑)実物の方
動いている方が美しく見える人間と写真に納まった方が美しく見える人間っている
じゃない。ボク、写真映り悪いけど… アートの人が上手いからよく映っているけ
ど、比較的、ボクとかアッコちゃんは動いている方のを見てる方が絶対!いい」
A 「みなさん!!コンサートに来て下さい!(笑)暗に、そういうことをほのめかした
りして(笑)そうねえ、割と、ミナコも活動的だもんね、いろんな意味で。座って
待っている、待っている詞って多いでしょう?」
M 「ボクは動かないで、周りが動く」
A 「というのは、止まっているんだよね。私はそうじゃないかと思う。それが本心じゃ
ないかと思う人間の。ただ、非常にワガママなもので、(笑)勝手に動いちゃうか
ら。本当は待っていたいんだけど… 」
M 「それとは別に 活動的なところがあるんだよね」
A 「それはあんまり、売り物にしたくはないんだけど、困っちゃうんだけど、それが」
M 「ボクはそうでもないよ」
A 「やっぱり待っているイメージから?全国のみなさまどうでしょう?」
M 「待ってるイメージというより、そばに寄るのみんな怖がるんだよね」
A 「なんで?」
M 「知らない!別に取って食おうって訳じゃないのに」
A 「あんまり ワーって話す方じゃないからじゃない?」
M 「人でもねえ、紹介されないと話しできないのよねえ。人見知りなのよ。紹介されれ
ば”こんにちわ”とか言うけど、それ以外は…口開かない」
A 「全国のみなさん!これから吉田美奈子に近づく場合は、どうかあなたの方から話か
けてくだされば、ニコやかに応対いたします。(笑)」
M 「(笑)」
A 「そうなのよね。面倒臭いわけでもないし、でも社交家っているじゃない。自分の方
からホスト、ホステスの役をできちゃう人ってうらやましいねえ」
M 「そうね」
A 「では、非常にまとまりのない話でどうもすいませんでしたが、”恋” この曲でお
別れしたいと思います。どうもありがとうございました。」
M 「いえいえ」(”恋”が流れて フェードアウト)