WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第50回 記念
出典:「サウンド&レコーディング」
1990年12月号
吉田美奈子VS清水靖晃
(2回連続の1回目)
資料提供:三浦豊樹さん
Q 『清水さんが最初に美奈子さんのアルバムに参加したのはいつ頃でした??』
清水(以下S)「遠い昔で忘れちゃった(笑)。」
吉田(以下M)「『モノクローム』は入ってなかったっけ?」
S 「うん。マライアでやってた時、コーラスに参加してもらったのが81年?(註:清水靖晃
のソロ4枚目のアルバム『IQ179〜愛究壱百七拾九』)」
M 「そうか。同じ頃だったよね、たしか。ライブでやったのはもっと早いけど、アルバムと
しては81年くらいだと思う」
S 「知り合ったきっかけはTVゲーム……じゃなくてね(笑)。でも何かきっかけって言った
って、人間のきっかけってわかんないよ」
M 「紹介されたんだよね、きっと。ああ、靖ちゃんさ、あれやってたじゃないカクトウギのバ
ンド。」
S 「うん。それとかKYLYN。」
M 「そうそう、KYLYN。あの辺だとね、会ったのはね。それで”こんにちわ”って言ったり
で」
S 「初対面の印象は覚えてますよ。あの時代に集まってた人の印象ってみんな強かった
から… あの辺のソサイエティがあったでしょ。どんな印象って言ったら”強い”印象(
笑)。たぶんね、僕のことはチャランポランなヤツだと」
M 「そう(笑)。でも、お互いやってるジャングルは関係ないもんね。だからこいつはジャズ
のバンドマンだとか、そんなのはあんまりなくってミュージシャンとして紹介されている
から、お互い何やっているかは知らなくても”この人はちゃんとしたミュージシャンだ”と
か、”そうでない人だ”っていうのはわかるでしょ、雰囲気で。だから、それで話したりす
ようになって。ねえ」
S 「そうだね。だから、あんまり音楽のことなんか話さないよね(笑)。音楽のことじゃなくて
例えば、”ああいうヤツはヤだね”とか」
M 「誰かの悪口とかね(笑)」
S 「悪口言って、自分のディレクションを決めていく(笑)」
Q 『あの頃のライブでは、清水さんはずいぶんキーボードも弾かれましたね』
S 「キーボードに轢かれてた(笑)」
M 「よく下に入ってとよね(笑)。でもサックスだけブリブリ吹いてても能なしだもんね」
S 「何か性に合わないんでしょうね」
M 「キーボードっていっても、ノイズを出したり、びっくりさせるような音を出したり、アンサン
ブルっていうよりも、エッジを靖ちゃんが作ってた」
S 「邪魔してる」
M 「そう(笑)。あと、靖ちゃんの大笑いって… 」
S 「いっぱいあるからさあ(笑)」
M 「いやあ、さすがすごいなあと思ったのはねえ、”BLACK EYE LADY”のイントロは
ね靖ちゃんから出るんですよ、パラララ〜ラララって。あそこでね、靖ちゃんパララの音
のね、キーが違ってたの。そしたら即座にバーンとダウンビートになってって、後ろでバ
シッと合ってたからね。あれ、0コンマ何秒だよって(笑)… 偉い!頭のキッカケだけ転
調してるんだ(笑)。ねえ、覚えてる?」
S 「覚えてる。そう言えばそういうことあった」
M 「歌詞を忘れたこと?私はフォークですからね(笑)、歌詞を見ながら唄うんですよ。”今日
はフォークだと思って聴いて下さい”って言って歌詞を見ながら唄うんです。」
S 「人より8小節くらい早く唄わなきゃなんないんだよね(笑)」
M 「そう(笑)。前のお客さんの口を見て唄うとかね、いいかげんなんです。スイマセン。歌
詞を書くとか曲を書くとかいうことって、ミュージシャンの日常…だと言うと言い過ぎかも
しれないけど、ゴハン食べるのと変わんないみたいな感覚があるんですよ。例えば、去
年の今頃書いた詞を全部言えというのと、詞を書いたことのない人に去年の今日、食べ
たゴハンはなあに?っていうのが同じ様な感覚なんですよ。だから、すっかり忘れるって
いうかね」
S 「でも時々、すごく覚えているのがあるじゃない。去年の何月にあそこのレストランに行っ
た時、隣にいた人が何を食べていたかとかさ」
M 「本当?」
S 「まあ、ほとんど忘れているし、別に印象があるわけじゃないけどさ。そこだけ覚えている
とかさ、そういうことない?」
M 「デジャヴじゃない?それ」
S 「特に食べ物の時は(笑)」
Q 『今度の【GAZAR】には久しぶりの清水さんやビルラズウェルも参加していますね』
M 「久しぶりといっても、去年靖ちゃんのコンサートでボクがバックアップボーカルをしている
し… 。それにビルはいいアーティストだよね。」
S 「まあ、基本的なタイプとしていわゆる違う肌合いの人なんだけど、共感ないしすごく感銘
するところあるよね。そうすると音楽は後についてくるんですよ。そういうところに立って
人を見ると、やっぱり音楽はどうでもいいなって思えてきますよね」
M 「音楽が人間より後ろにくるんでしょ。靖ちゃんは、前、ビルと仕事してたじゃない!で、ボ
クは実際ビルとセッションしたのは初めてなんだけど、その前から人間は知ってて、いつ
会っても”この人は素晴らしい”って思うよね。」
S 「ああいった恰好してるけど、すごくチャーミングな人なんだよね」