「罪と愛」
「ああっ! すみません!」
なんだよいきなりやぶからぼうに。
「だってあなた、今、ため息をついたでしょう」
そりゃため息もつきたくなるさ。この暑さだ、むしろそれすらためらっちまうね。
「いいえ、僕には分かっています」
何をだ。
「罪はすべて、あまりに美しく創られてしまった僕にあります。それなのに、あなたの瞳にうつってしまった僕に」
古泉お前、大丈夫か?
「大丈夫なわけがありません。どんな罰でも受けたいと願うのに、そんな僕に与えられたのは、世界中の愛が降り注ぐことだったのですから」
おい。
「それがあなたを、こんなにも苦しめている…!」
暑さにやられるにしても、もっとましな方向性ってやつがあるだろうよ。
「ですが、ご安心ください。それでも僕は、世界中の愛に目をつぶってでも、あなただけを愛すると決めています」
…短い付き合いだったな。
「いいえ、あなたが苦しむ必要なんてないのです」
病院なら一人で行けるだろ? なんなら、タクシー止めてやろうか。
「僕に心を奪われてしまったあなたは、何も悪くなんてない。僕に惹かれてしまうのも、触れたいと思ってしまうのも、僕がいけないのですから…」
やっぱり付き添ってやった方がいいか?
「ありがとうございます。では、参りましょうか」
おい、車拾うんならそっちじゃねえぞ。
「車? どこへ行こうと言うんです?」
いやだから、れいの御用達の病院にだな…
「僕の部屋では不都合でしょうか」
ちょっと本格的に診てもらった方がいいと思うんだが。
「何をおっしゃっているのか分かりかねますが、」
その台詞そっくりそのまま打ち返してやるぜ。
「あなたが少しでも心安らかになれるよう、僕の、いえ僕たちの愛を確かめ合うのが手っ取り早いかと」
暑さか? 暑さが悪いのか? 夏のせいか?
「さあ、行きましょう! 僕は一刻も惜しいのです」
…頼むから古泉、そういう分かりにくいバテ方はやめてくれ。あと手は離せ。
(2007/08/13)
もしも古泉が、殿(@桜蘭)のキャラソン風だったら。暑さのせいです。