■ WHITE MARCH
「では、これの手配は明日で良いんですね」 「……ああ」 随分と不機嫌そうに上級天使が回廊を歩いている。 一歩遅れて後ろに続きつつ、スケジュールの確認をしている秘書との姿は教団内の者には見なれた光景だ。 しかし、今日はいつもと何かが違う。 回廊をすれ違う人達が非常に意外そうな顔をして振り返るのも、そして、上級天使の姿が見えなくなると例外無くひそひそと何事かを囁き合っているのもそれが原因で。 その事が上級天使の苛々をますます募らせる結果になっているのだ。 人気が無くなった回廊の端で、とうとう上級天使は後ろを振り返った。 自分より少し高い位置にある相手の目を射殺さんばかりの勢いで睨み付ける。 「お前、一体今日はどういうつもりだ」 「天導天使に頼まれましたから。今日は特に重要な用事が無いから、と」 彼女が居ない間のお目付け役みたいなものですね。 そう言ってコリエル12号はおかしそうに笑った。 「よりにもよってどうしてお前が天導の代わりをしている」 「どうしてと言われても……ご指名ですから」 文句を言うなら僕じゃなくて今日休暇を取った天導天使に言って下さい。 悪びれずに言って、人畜無害な笑みを浮かべる12号を前にして、どうにも腹の虫が収まらない。 「……昨日は二人とも一言も言わなかったくせに……」 「え?」 「……何でもないッ!」 まるで拗ねているような自分の言葉に少しうろたえながら、上級天使は足早に歩き出した。 「そろそろ、出掛ける用意をした方が良いのではないですか」 外での仕事が一段落して、執務室に入った途端にそう言われた。 「…………。」 「外で、約束してるんでしょう?天導天使と」 「…………。」 「そう照れなくても良いですってば」 異常に楽しそうに、にこにこしている12号に思わず胡乱な目を向ける。 こいつ、今日は性格が違う。 その前にどうして今日の予定がバレているのだろう。 「あのな……だから、お前がそんな思っているのとは違って……その……労いの意味でだな……その……」 自分でも何を言っているか分からなくなってきたようで、そこで上級天使は口を噤んだ。 何とか笑いを噛み殺しているような表情の12号に向かって、うらめしげな視線を向ける。 「……言い訳は良いのですけど、本当にそろそろ何とかしないと彼女が今日休暇を取った意味が無くなってしまいますよ。目立たないようにと先に外に出掛けたんでしょう?」 ここからは僕が責任を持って、ばれないように外に出してさしあげますから。 「そう、天導天使と約束してますしね」 随分と楽しそうな12号を見ているうちに、何だか悔しくなってきて、言わなくても良い事がぽろっと口から転がり出た。 「……本当にお前達は仲が良いんだな」 「え?」 「お前と、天導」 「そう、ですか?」 本当に以外だったようで、12号はきょとんとして上級天使を見つめた。 「違うのか?」 こちらは時々頭の上で会話が成立してしまっているのをとても歯痒く思っているのに。 そう上級天使が言外に言っているのを何となく理解したのか、12号は彼が良くする曖昧な笑みを口元に浮かべた。 「そうですね……僕達はある意味共犯者ですからね」 「何のだ」 「それは、秘密です」 「…………。」 恨めしそうにこちらを見ている上級天使に、12号はいたずらっぽく笑った。 「ほら、早く」 一年に一度だけ。 今日は好きな人に、感謝の言葉を。 |
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END
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ホワイトデーネタになる筈でしたが……何か全然わかんない話になってマス(大汗)ゴミ小説にしたほうが良かったかも…… うちの主人公君は食わせ者ですので、ちょっと気を抜くと上様がやられっぱなしになってしまいます。 気をつけねば…… 上級天使は、結局自分を抜かして2人がツーカーなのに拗ねてるんです。ウチの上様対人関係子供だから。 『共犯者』というのは別にナニという事では無く、主人公と天導天使の上級天使に関する共通認識が同じ、という事です。 なので、割と上級天使絡みの事は2人で結託して行動していたりしています(笑) そして上様はまた拗ねると。 03.03.14UP |
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