MSR(Model Specific Register)を読む・書く

いきさつ

　AMDのK6-2の新コアにはMTRR(Memory Type Range Register)なるものがあり、Write-Combiningの設定ができるようになっている。うれしいことにWAmonitorIIなるツールがあって簡単に設定できる。振り返ってIntelを見てみると、もっと前から同様の機能を持っているのだった。実際にはPentiumPRO以降のP6family(PenPRO,Pen2,Celeron,Pen3)ではMTRRが使えるようになっている。こいつらの設定はMSR(Model Specific Register)というCPU上のレジスタをいじるようになっている。そこでうちのCeleronマシンではこのMTRRがどのように設定されているかを見て、もしもうっかり設定されていないようなら設定を追加してパフォーマンスアップをはかってやろうと考えたのである。
　MSR自体はPentium以降で使えるようである。ここで登場するのはMSRを手軽に読み書きする簡単なプログラムである。
MSRRW.EXE(34.5K)
　使い方は下のMSRrw98.exeまたはMSRrwNT.exeを参照のこと。

９９年２月１５日
　K6-2を手に入れ、Write-combiningなる機能を知る。

９９年２月１９日
　このWrite-Combining(WC)なる機能をWebで検索しているうちにIntelのページに当たり、 Write Combining Memory Implementation Guidelinesなる資料を見つけた。これによるとWCはP6family全般に用意されているらしい。そこでうちのCeleronマシンではどのような設定がなされているかを知りたくなった。まずはこの資料から読む。この資料にはPCIのバスをちゃんと使うには普通にライトしているのでは駄目で、WCを使えば100MB/s以上を出せるようになる、から始まって、WCの機能、WCの設定は誰がいつやるか、WCを有効に使えるH/Wの設計、WCの設定例などが出ている。が、設定はMTRR(Memory Type Range Register)で行うとしか出ておらず、MTRRとは何か、どのように使うかといった話は出てこない。

９９年２月２２日
　そこでIntelのページ内で他の資料を探す。見つけたのは Intel Architecture Software Developer's Manual Volume1からVolume3。CPUのS/Wに関していろいろ出ている。Volume1では基本的なアーキテクチャ、Volume2は命令セット、Volume3は使い方に関していろいろとなっている。ここでMTRRを探すとVolume3の9.11からMTRRについて出ている。ここではMTRRはFixed RangeとVariable Rangeがあることと、MTRRのレジスタの中身についてが出ている。K6-2にあったのはVariable Rangeということになる。が、MTRRのアクセス方法はここには出ていない。

９９年２月２３日
　 Intel Architecture Software Developer's Manual Volume3のAppendix BにMSR(Model Specific Register)の一覧としてMTRRが出てくる。そしてVolume2を見ると、RDMSRとWRMSRという命令でMSRをアクセスできることが出ていた。これはユーザプロセスからはアクセス不能のため、何らかのドライバ（仮想ドライバ）が必要そうである。

９９年２月２４日
　ぼんやりと探していると、WCPUIDにはWCPUID.VXDなるものがあり、この中にRDMSR(命令コード0F 32)とWRMSR（0F 30）があるのを発見。中を覗く。どうやら汎用的にMSRをアクセスできるように作ってありそうである。が、どうもWRMSRの方は（バグがあって）うまく使えない気がした（杞憂かもしれない）。そこで似たようなツールであるWAmonitorIIを見ると、MSRRing0.vxdなるものがあり、しかもMSRRing0.txtなる使い方のドキュメントまで付いているではないか。更にはNT用のドライバ(MSRTouch.SYS)とドキュメント(MSRTouch.TXT)、ドライバ設定ユーティリティ(MSRTouch.EXE)まである。これを利用してMTRRを見るツールを作ることにする。

９９年２月２５日
　でもってVC++でちゃっちゃと作ってみる。実のところMSRring0.txtにも細かい使い方は出ていない。少なくともVxDを使えることを前提に書いてある。で文献を探すと「仮想デバイスドライバの作り方（CQ出版）」なる本があり、これにちょろっとVxDの呼び方が出ていた。SDKの資料にももちろん（英語で）出ている。それによると、
- VxDのロード～CreateFile()
- VxDの呼び出し～DeviceIoControl()
- VxDのアンロード～CloseHandle()
といった手続きで行うことになっている。MSRRing0.TXTに出ていたControlCodeとInBuff、OutBuffというものはDeviceIoControl()で使うものである。

　そこで次のようなMSRの読み出しプログラムをさらっと書いてみた。（動くようになるまで結構かかっているのだが．．．）
これはVariable MTRRを８セット読むプログラムである（Intel P6Family用）。
```
        #include <windows.h> #include <winbase.h> #include <stdio.h>
        main() { 　　int i; 　　HANDLE hVxD;
        　　int InBuff[0x10]; 　　int OutBuff[0x10]; 　　ULONG BytesReturn;
        　　hVxD = CreateFile("\\\\.\\msrring0.VXD", 0, 0, NULL, 0, FILE_FLAG_DELETE_ON_CLOSE, NULL); 　　if( hVxD == INVALID_HANDLE_VALUE){ 　　　　printf("VxD Open Error%d\n",GetLastError());
        　　　　exit(1); 　　} 　　for(i=0x200;i<=0x20f;i++){ 　　　　InBuff[0] = i;
        　　　　DeviceIoControl( hVxD, 　　　　    2, // control code:Read 　　　　    InBuff, 0x4, 　　　　    OutBuff, 0x40,
        　　　　    &BytesReturn, 　　　　    0); 　　　　printf("%04X %08X:%08X\n", 　　　　    i, OutBuff[2], OutBuff[1]);
        　　} 　　CloseHandle(hVxD); } 
```
ちなみにライト系は
```
        InBuff[0] = iMSRAdd; InBuff[2] = iMSRHigh; InBuff[1] = iMSRLow; DeviceIoControl( hVxD,
            3, // control code:Write InBuff, 0xC, OutBuff, 0x0, &BytesReturn,
            0); 
```
のようになる。
　

MSRrw98.EXE

　ここまでで動くことを確認できたので、ちゃんとした読み書きプログラムを書いてみたのが、これ。MSRを連続して読みこんで表示する、またはレジスタを指定して値を書きこむことができます。どこのアドレスにどのようなレジスタがあるかはIntel Architecture Software Developer's Manual Volume3のAppendix B（Intel CPUの場合）などをお調べください。今のところWindows95/98のMS-DOSプロンプトでしか動きません。NTに関しては研究中。
　またMSR自体はPentium以降のCPUにあり、このツールが使えますが、CPUのモデルにより内容が違います。PentiumやK6-2/3にどのようなMSRがあるかは調べてみてください。

MSRrw98.exe(34K)

フリーウェアとして使用料は無料としますが、配布不可にしておきます。
　このプログラムを使った結果がどうなろうと製作者は一切責任を負いません。すべての責任は使用者で負っていただきます。CPUIDもなにも見ていないし、MSRアドレスの範囲チェックも行っていないので、なにも知らずに使うと青画面連発となることでしょう。

使い方（Windows95/98編）：
1. まず、WAmonitorIIをダウンロードして展開します。そこにはMsrring0.vxdというファイルがありますので、上のMSRrw98.exeと同じディレクトリに置きます。WAmonitorIIの他のファイルは使いません。
2. そしてMS-DOSプロンプト上でMSRrw98.exeを実行します。vxdが読めないエラーのときは
  NET HELP 番号
  を実行してエラー原因のヒントを得てください。
3. うまく実行できていれば次のメッセージが出ます。
```
MSR read/write Ver.1.00 MSRrw R Add1 Add2          :  Read MSR Add1 to Add2 MSRrw W Add RegHigh RegLow :  Write MSR Add RegHigh:RegLow 
```
4. ここでMSRを見たいときには、
  MSRRW98 R アドレス１　アドレス２
  を実行してください。Rは大文字です。アドレスは16進数です。たとえばCeleronでMTRRを見たいときは
  MSRRW98 R 200 20F
  です。
5. MSRを設定したいときには、
  MSRRW98 W アドレス　データ上位　データ下位
  を実行してください。Wは大文字です。アドレス、データは16進数です。たとえばCeleronでMTRRの1番目に00000000:00000006を設定したいときは
  MSRRW98 W 200 0 6
  です。
　ここからは本来の目的であった「P6family」のMTRRに関して書いておく。
MTRRはMSRの0x200から0x20Fに設定する。まずはそこを読み出してみる。うちでは
```
MSRRW98 R 200 20F MSR read/write Ver.1.00 0200 00000000:00000006　　メインメモリ(00000000-07FFFFFF) 0201 0000000F:F8000800
0202 00000000:E2000000　　82443BX Processor to PCI Bridge(with GART support)(E2000000-E27FFFFF) 0203 0000000F:FF800800 0204 00000000:E2800001　　同上(E2800000-E2FFFFFF) 0205 0000000F:FF800800
0206 00000000:E3000001　　82443BX AGP controllerとRAGE PRO(E3000000-E37FFFFF) 0207 0000000F:FF800800 0208 00000000:E6000001　　Voodoo Graphics 3D Accelerator(E6000000-E6FFFFFF) 0209 0000000F:FF000800
020A 00000000:E6000000　　同上(E6000000-E6000FFF) 020B 0000000F:FFFFF800 020C 00000000:00000000　　未使用 020D 00000000:00000000
020E 00000000:00000000　　未使用 020F 00000000:00000000 
```
と出た。隣には使っているデバイスを書き加えてある。レジスタは２つ１組で、１つ目の0000000X:XXXXX000がベースアドレス、00000000:000000XXがメモリのタイプを表す。メモリのタイプは
　0 Uncacheable(UC)
　1 Write Combining(WC)
　4 Write Through(WT)
　5 Write Protected(WP)
　6 WriteBack(WB)
　2,3,7-255 Reserved
となっている。
　２つ目は0000000X:XXXXX000がマスク、00000000:00000800のビットが有効=1／無効=0を示している。

　例えば上の例で、
```
0206 00000000:E3000001 0207 0000000F:FF800800 
```
とあるが、これはメモリのE3000000からE37FFFFFをWriteCombiningにするという意味である。上ではE6000000からE6000FFFが他と重なっているが、このようにWCとUCが重なったときはUCになる、とDeveloper's Manualには出ている。

　ここで200のエリア（00000000から07FFFFFFまでのメインメモリの空間:うちは128M実装である）をUC(Uncacheable)に設定してみるには、
```
MSRRW98 W 200 0 0
```
とする。とたんにめちゃくちゃ遅くなるだろう。なんせL1キャッシュが効いていないのだから。戻すには
```
MSRRW98 W 200 0 6
```
だ。（ライトバックである）

　上の例では、重要なアドレス空間である0A0000から0FFFFFの設定がないことに気づく。00000000から000FFFFFの1M空間は特別にFIXED MTRRとして、1M空間を4K,16K,64Kごとに区切って別の設定ができるようになっているのだ。MSRアドレスは250-26F（実際には飛び飛び）を使う。

　まあこいつらの情報を元に適当に設定をいじってみるのもいいだろう。ビデオカードのメモリアドレスをことごとくWCにするとか。いじるときの注意としては、先に１つ目の設定を行った後で２つ目の設定を有効にして設定する、あるいは２つ目の設定を先に無効の設定にしてから１つ目の設定を消すということがある。間違っても２つ目の設定が有効のまま１つ目を設定してはいけない（希望しない設定が効いてしまい、思わぬ結果を出してしまうことがある）。

　うっかりMSRが設定されていないMSRアドレスでアクセスする（リードでもライトでも）と即座に青画面を拝むことになる。Enterを押せば何事もなかったかのように元に戻るが、なんかしら被害を被る可能性もあるので注意されたい。まあIPLすれば元に戻る程度だとは思うが。
　と、ここまでやっておきながら、私の場合は新たに設定してもさっぱり効果が見られなかった。元々必要そうなところ（RagePROとVoodoo）にはWCの設定が入っちゃってるので仕方がないか。

９９年２月２６日
　さてＮＴである。WAmonitorIIにはMSRTouch.sysというNT用のドライバーも入っている。そこでMSRRW98.EXEをNTでも使えるようにしようと考えたが、どうもかってが違う。まずはCreateFile()でデバイスをオープンできない。そこを何とかしたらDeviceIoControl()でパラメータエラー。そこをクリアしたらブルースクリーン。で、ようやく使えるようになった。何のことはない、MSRRING0.VXDとMSRTOUCH.SYSとではDeviceIoControl()のパラメータが違っているのだった。
　NTで動くサンプルを載せる。やっていることは上のWindows98版と同じである。違うところは赤で示し、更にコメントを付けている。
※WAmonitorII 2054では下のようにすればよかったが、2055a以降（2055含む）ではMSRTOUCH.SYSが変更されている。2/28参照。
```
#include <windows.h> #include <winbase.h> #include <stdio.h>
main() { DWORD i; HANDLE hVxD;
    DWORD InBuff[0x10]; DWORD OutBuff[0x10]; DWORD BytesReturn;
//ドライバの名前とオープンのパラメータが違う
    hVxD = CreateFile("\\\\.\\msrtouch", GENERIC_READ|GENERIC_WRITE, FILE_SHARE_READ| FILE_SHARE_WRITE, NULL, OPEN_EXISTING,
        FILE_ATTRIBUTE_NORMAL, NULL); if( hVxD == INVALID_HANDLE_VALUE){ printf("device Open Error %d\n",GetLastError()); exit(1);
    } for(i=0x200;i<=0x20f;i++){ //InBuffの順番が違う　0=下位のデータ、1=MSRアドレス、2=上位のデータ
        InBuff[1] = i; DeviceIoControl( hVxD, 0x85002000,  //コントロールコードが違う(Read)
            InBuff, 0x10, OutBuff, 0x10, &BytesReturn, 0);
//OutBuffの順番も違う　0=下位のデータ、1=MSRアドレス、2=上位のデータ
        printf("%04X %08X:%08X\n", i, OutBuff[2], OutBuff[0]); } CloseHandle(hVxD);
    exit(0); } 
```
ちなみにライト系は
```
//InBuffの順番が違う　0=下位のデータ、1=MSRアドレス、2=上位のデータ
    InBuff[1] = iMSRAdd; InBuff[2] = iMSRHigh; InBuff[0] = iMSRLow; printf("%04X %08X:%08X\n",
        InBuff[1], InBuff[2], InBuff[0]); DeviceIoControl( hVxD, 0x85002004,  //コントロールコードが違う(Write)
        InBuff, 0x10, OutBuff, 0x10, &BytesReturn, 0);
```
のようになる。
これを動かすにはドライバを組み込んで再起動する必要がある。この点については下の配布版を参照。

MSRrwNT.EXE

　ちゃんと動くことを確認できたので、簡単な読み書きプログラムを書いてみたのが、これ（WindowsNT用）。MSRを連続して読みこんで表示する、またはレジスタを指定して値を書きこむことができます。どこのアドレスにどのようなレジスタがあるかはIntel Architecture Software Developer's Manual Volume3のAppendix B（Intel CPUの場合）などをお調べください。

MSRrwNT.exe(35.5K)
※公開当時のものとは変更してVer.1.01になっています。

フリーウェアとして使用料は無料としますが、配布不可にしておきます。
　このプログラムを使った結果がどうなろうと製作者は一切責任を負いません。すべての責任は使用者で負っていただきます。CPUIDもなにも見ていないし、MSRアドレスの範囲チェックも行っていないので、なにも知らずに使うと青画面連発（＝再起動）となることでしょう。

使い方（WindowsNT編）：
1. まず、WAmonitorII2055をダウンロードして展開します。そこにはmsrtouch.sysというファイルがありますので、systemroot\SYSTEM32\DRIVERSの下に入れます。systemrootはNTをインストールしてあるディレクトリです。そしてMSRTouch.EXEを実行します。SETをクリックするとドライバ関係のレジストリが追加されます。ここで再起動します。一度組み込めば次からはWindowsNTの起動時に自動的に動きます。WAmonitorIIの他のファイルは使いません。
  　またMSR自体はPentium以降のCPUにあり、このツールが使えるのですが、下に出ているMTRRはP6Familyにしかありません。PentiumやK6-2/3にどのようなMSRがあるかは調べてみてください。
  ※wamonitor2055aからmsrtouch.sysが変わっています。2054以前のものは使えません。上で書いたVxDと.sysとでデータの順番が変わってしまっているのを同じにするような変更が入っています。
2. そしてコマンドプロンプト上でMSRrwNT.exeを実行します。デバイスがオープンできないエラーのときは
  NET HELPMSG 番号
  を実行してエラー原因のヒントを得てください。
3. うまく実行できていれば次のメッセージが出ます。
```
MSR read/write for NT Ver.1.01 MSRrwNT R Add1 Add2          :  Read MSR Add1 to Add2 MSRrwNT W Add RegHigh RegLow :  Write MSR Add RegHigh:RegLow 
```
4. ここでMSRを見たいときには、
  MSRRWNT R アドレス１　アドレス２
  を実行してください。Rは大文字です。アドレスは16進数です。たとえばCeleronでMTRRを見たいときは
  MSRRWNT R 200 20F
  です。
5. MSRを設定したいときには、
  MSRRWNT W アドレス　データ上位　データ下位
  を実行してください。Wは大文字です。アドレス、データは16進数です。たとえばCeleronでMTRRの1番目に00000000:00000006を設定したいときは
  MSRRWNT W 200 0 6
  です。
　ここからは私の会社マシン（WindowsNT,PentiumPRO）に入れてみたときの話を書いておく。グラフィックボードはMillennium4Mである。
MTRRはMSRの0x200から0x20Fに設定する。まずはそこを読み出してみる。
```
MSRRWNT R 200 20F MSR read/write Ver.1.00 0200 00000000:00000006　　メインメモリ(00000000-03FFFFFF) 0201 0000000F:FC000800
0202 00000000:00000000　　未使用 0203 00000000:00000000 0204 00000000:00000000　　未使用 0205 00000000:00000000
0206 00000000:00000000　　未使用 0207 00000000:00000000 0208 00000000:00000000　　未使用 0209 00000000:00000000
020A 00000000:00000000　　未使用 020B 00000000:00000000 020C 00000000:00000000　　未使用 020D 00000000:00000000
020E 00000000:00000000　　未使用 020F 00000000:00000000 
```
と出た。単にメインメモリ（64Mバイト）をライトバックにしてるだけ。レジスタは２つ１組で、１つ目の0000000X:XXXXX000がベースアドレス、00000000:000000XXがメモリのタイプを表す。メモリのタイプは
　0 Uncacheable(UC)
　1 Write Combining(WC)
　4 Write Through(WT)
　5 Write Protected(WP)
　6 WriteBack(WB)
　2,3,7-255 Reserved
となっている。
　２つ目は0000000X:XXXXX000がマスク、00000000:00000800のビットが有効=1／無効=0を示している。

　例えば上の例で、
```
0200 00000000:00000006 0201 0000000F:FC000800
```
とあるが、これはメモリの00000000から03FFFFFFをWriteBackにするという意味である。

　グラフィックメモリの設定がなかったので追加する。Windows診断プログラムを使ってリソースのメモリを見る。ここでは40000000から403FFFFFの4MをMillenniumが使っていることになっていた。ここをWrite-Combiningに設定してみる。202には00000000 40000001を、203には0000000F FFC00800を設定する。
```
MSRRWNT W 202 0 40000001 MSRRWNT W 203 F FFC00800
```
としてみる。なんとなく速くなった気分。なんかわかりやすい違いはないかと探してみると、ウインドウの内容を表示したままドラッグが明らかに速い。今まではウインドウの跡の書き換えがもたついて白く残像が残っていたのが、ほとんどなくなってごく普通に使えるようになった。明らかな改善である。
　一方でうちのマシンではいくらMTRRを設定したところでこの「表示したままドラッグ」テストは遅いままだった。この遅さはどこからくるのかよくわからない。ＯＳなのかグラフィックボードなのかドライバなのか設定なのか。うちにあるもう一台のMillennium+Windows98+K6-2 333マシンにWC設定を施しても、表示したままドラッグはやっぱり遅い。

　うっかりMSRが設定されていないMSRアドレスでアクセスする（リードでもライトでも）と即座にブルースクリーンを拝むことになる（と思う）。 WindowsNTでは再起動するしかない。まあIPLすれば元に戻るのだが。
　おっとWindowsNTなのでDual CPUの場合もある。この場合はどうしろという注意がIntel Architecture Software Developer's Manual Volume3の9.11.8に出ている。私はDualで使っていないのでまったく読んでいない。Dualの人は一読しておくことを勧める。

９９年２月２７日
　うちではWCの設定はいまいちだった。他に何かないかと探してみると、FIXED MTRRの設定がある。まあ内容としては上のVariable MTRRと同じで、指定する範囲が0-FFFFFの１Ｍ空間であるってだけである。
　使うMSRは、
250　　　00000-7FFFFを64Kごとに設定する（8つ）。
258,259　80000-BFFFFを16Kごとに設定する（16個）。
268-26F　C0000-FFFFFを4Kごとに設定する（64個）。
となっていて、それぞれの範囲を１バイトで指定する。

　私のWindows98マシンでは、
```
250 06060606:06060606 258 06060606:06060606 259 01010101:00000000 268 05050505:05050505
269 00000000:00000000 26a 00000000:00000000 26b 00000000:00000000 26c 00000000:00000000
26d 00000000:00000000 26e 00000000:00000000 26f 00000000:00000000 
```
だった。頭の640K空間はライトバック、VRAMはWC、VIDEO BIOSとSCSI BIOSはライトプロテクト、他はキャッシュしないになっている。まあ効果はわからないが、
```
259 01010101:01010101 269 06060606:06060606 26a 06060606:06060606
26b 06060606:06060606 26c 06060606:06060606 26d 06060606:06060606 26e 06060606:06060606
26f 06060606:06060606 
```
としてみた。
また、うっかりMTRRを使わない設定になっている可能性もある。次を参照。
```
0FE 00000000:00000508　MTRRcap 2FF 00000000:00000C00　MTRRdefType 
```
MTRRcapの0400ビットはWCをサポートしている、0100ビットはFIXED MTRRをサポートしている、08はVariable MTRRの使える数を示している。
MTRRdefTypeの0800ビットはMTRRを使う／使わない、0400ビットはFIXED MTRRを使う／使わない、00は設定のないエリアのタイプ（アンキャッシュ）をあらわしている。

９９年２月２８日
MSRrwNT.exe(35.5K)
　WAmonitorIIは2055a（正式版は2055）からNT用ドライバのMSRtouch.sysが変更されている。DeviceIoControl()のInBuff,OutBuffの順番がWindows用VxD(MSRRING0.VXD)と同じになったのだ（コントロールコードは違う）。ここでMSRrwNT.exeも変更した。間違った組み合わせだと必ずブルースクリーンになると思われる。現在上で公開してあるものは2055用のものに差し替えてある。

９９年３月１日
　今日、RagePROとMonsterSound MX300のドライバを入れかえてみると、なぜかカードのリソースが変わっていた。仕方ないので自動起動していたパッチファイルを作りなおす。ついでに他のカードもWC設定にする。今は次のようになっている。

msrrw98 W 202 00000000 E6000000    Intel 82443BX Pentium(r)II Processor to PCI bridge(with GART support) msrrw98 W 203 0000000F FFE00800 msrrw98 W 204 00000000 E6200001    同上 msrrw98 W 205 0000000F FFE00800
msrrw98 W 206 00000000 E2000001    Intel 82443BX Pentium(r)II Processor to AGP controllerと msrrw98 W 207 0000000F FF800800    RAGE PRO TURBO AGP 2X(English)(DirectX) msrrw98 W 208 00000000 E5000001    Voodoo Graphics 3D Accelerator msrrw98 W 209 0000000F FF000800
msrrw98 W 20a 00000000 E5000000    同上 msrrw98 W 20b 0000000F FFFFF800 msrrw98 W 20c 00000000 E6400001    Monster Sound II Multifunction Parentと msrrw98 W 20d 0000000F FFF80800    Monster Sound II PCI Audioと
                                   Adaptec AHA-2040/AHA-2040W PCI SCSI Controllerと TVチューナー＆ビデオキャプチャボードGV-BCTVシリーズと PCI Fast Ethernet DEC 21143 Based Adapter

９９年３月７日
MSRrw.exe(35.5K)
　DeviceIoControl()のパラメーターの順番が95/98とNTとで同じになったので、２つに分けている意味がなくなった。そこで１つのプログラムにまとめることにした。CreateFileは相変わらず違うものなので、GetVersion()でNTか95/98かを切り分けている。

９９年８月２４日
　ところでWriteCombiningについてだが、単に「まとめて書くからいい」と単純に思っていたのだがこの認識はちょっとおかしかったようだ。少なくとも普通のメモリに関してはライトバックなキャッシュのほうがいいことは誰でもわかる。結局のところWriteCombiningのおいしいところは、PCIデバイスに割り当てられたメモリ空間にアクセスする場合である。その理由としては途切れ途切れに細かにPCIメモリにアクセスしていると、PCIバスを占有する時間が増えてしまって他のデバイスが使える時間が減ってしまう、結果としてPCIバスの使用効率が落ちてPC全体のパフォーマンスを落としてしまうことに問題がある、ということのようだ。WriteCombiningで一定量を一気に転送することによって、PCI占有時間が減りPCIバスの使用効率が上がることが一番の目的であったようだ。まあSCSIボードなんかがバスマスタ転送を使ったりしているのも同様の理由がある。
　従って、ウインドウの移動が速いとか単純なベンチ結果が上がったとかいった、わかりやすい結果が現れるものでもないようだ。まあPCIバスをフルに使うような状況の時にははっきりとした違いが出るはずなのだが、Windowsでクライアントで使っているとそのような状況にはなりにくい。今ではグラフィックアクセラレータもAGPに逃がしてよりPCIバスの負荷は減っているし。（ほんとはそれほど落ちはしない）グラフィックをいじりながらディスクアクセス速度を測ったり、サーバマシンでトランザクション性能を測ったりするとわかりやすい違いが出てくるのかもしれない。

http://www10.plala.or.jp/p205tb16/msr.html

坂井瑞穂

MSR(Model Specific Register)を読む・書く

MSRrw98.EXE

MSRrwNT.EXE