VOL.2

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【86歳歩く歩く】
 このバアちゃんは御牧ケ原という山の中から小諸まで10数キロメートルの道のりを、7時間かけて歩いてくる
「バアちゃん、山を何時に出てくるんだい」
「朝の三時だ」
「懐中電灯がないと歩けないだろに」
「そんなもん無くとも道はわかるだ。そんなデケエ声張り上げなくとも聞こえるよ。もっと静かにしゃべっとくれな」
「ところで何歳だい?」
86だ。まだ若え者にゃ負けねえダ」
 バアちゃんは週一回、小諸の病院にやってくる。行きは歩き、帰りはタクシー。ツエといえば枝をナタで落とした棒きれ一本、モンペ姿は泥だらけ〜。バアちゃんを降ろしたあと後部シートは砂と泥で真っ黒けになっていた。

「長生きしろや、バアちゃん!」




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