VOL.12

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【6時20分!】

 夕方、めずらしく路上で手をあげてくれる客がいた。乗り込んだ客は大きくため息をつく。
「あーよかった。これで間に合う」と、うれしそう。
「そりゃよかった。私ももう上がるところだったんで、本日ラストのお客さんかな」
「ま、ゆっくり走っていいからさ。7時に着けばいいからさ」
 ・・・ドキ。自分の時計では7時を10分も過ぎている!
「お客さん、すでに7時は過ぎてるよ・・」
「ワッハッハ、冗談でしょ。まだ6時20分じゃないか」
 なぜ? ど〜して? 時計はどう見ても7時10分! ダッシュボード回りを見渡すと料金メーターが目に入った。 走り出したばかりでまだ「620円」・・・。
「お客さん、ひょっとしてコレ・・見たの?」
「だろ! 6時20分だろ! ・・・エッ!それって料金かい! 運転手さん、急いで! 飛ばして〜! 」




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