VOL.13

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【一万両】

 タクシードライバーを始めたころ、たまたま乗せたおばあちゃんが一万円札を出し
「はいな、一万両でお願い!」と言うのである。
 こりゃ冗談好きなばあちゃんだと思い、こちらも「じゃ、9380jお返しね!」と言って釣り銭をやった。
 ところがこのばあちゃん
「ばかにすんでねエ!」
 と言うなり泣きだした。
「ええか! オラみたいな人間は昔からビンボー続きで大金を見たことがなかったダ・・・。だから一円のことは一両と言い、百円は百両なんだ。オメエにそれがわかるかッ!」
 ・・・二の句も出なかった。
 「両」という言葉にそれほどの重みがあるとは思わなかった。 以来、この「両」という言い回しが街のあちこちで使われているのに気が付いた。若い人もけっこう使っている。
 それからというもの、小諸という街に、人に建物に歴史の重みを感じるようになった_。




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