VOL.21

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【わかるかなぁ】

 たまにはとんでもないお客もいる。
「それがのゥ、住所がわからんの。名前も電話番号もわからんの・・・」
「ハ・・・?」
「俳優さんでいうと○○さん似の人でな、ホレいたじゃろう私の若いころ・・・」
「まだ僕は生まれてなかったの!」
「ホレ昔は佐久市に住んどった人じゃよ。小さい頃はよく川で遊んだ人じゃよ。な!知らんかのゥ・・・」
「無理だよ。ほかにはないの?」
「昔、一度来たことあるんじゃが、確か坂道を上ったような気がする・・・」
 下れば川。上れば山。これで市内の半分は捜さずにすむわけだ。
「しだれ桜がキレイでのゥ。歩きながらまぶしくてのゥ・・・」
「バァチャン、それは朝だった? 夕方だった?」
「確か朝、早う来た・・・」
 ウム、しだれ桜のある所から東に向かったということらしいぞ・・・。てなこと繰り返してやっと捜し当てた時は、バァチャンの喜んだこと!




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