VOL.26

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【カッコーの獲物】

 さむ〜い冬の早朝、駅前で広告入りティッシュをくばる女性たち。プルプル体を震わせて悲しいほどに寒そうだよね。僕ら運転手もトイレに行くときはこのティッシュのおせわになっている。
「ティッシュもらえますか?」
「どうぞどうぞ、こんなもんでいいですか!?」
 アレ、五個くれたよ!僕らって優遇されてるのかな・・・。
 そのうち女性たちの方からタクシーに寄ってくるようになった。へたすると10個も20個もくれる。そして、あっという間にティッシュカゴを空にして彼女たちはうれしそうに去っていく。もらった大量のティッシュはあっても邪魔だし、乗ってくれるお客さんにサービス品として配るしかない。
 考えてみるとカッコーがほかの鳥の巣に卵を産みつけるのと同じわけで、僕らが彼女たちの代わりに配ってるようなもんだよな!
 結局、今日もティッシュをくばり続ける僕らって”カッコーの獲物(?)”だったりして!
 ・・・なさけない。




バックナンバー閲覧

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50

Return to the Top Page
All Right Reserved,copyright(C)Shigeto Miyasaka/2021