VOL.29

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【この辺クルクル】

 「あれま、いつもの運転手さんじゃない!」
「こんちは、今日はどこ行くの?」
 顔なじみのバアちゃんが乗ってきた。
「今日はすぐそこで宅配便出すだけなんだけどさ・・・運転手さんヒマかい?」
「アハハ、いつもヒマさあ!」
「じゃ散歩でもしとくれな。今日はアタシがヒマでさあ・・・」
「で、どこ行くの?」
「この辺まわってくれりゃいいからサ」
 こんな場合、会社になんと言って出発すりゃいいんだろ・・・と、考えてる間に会社のほうから無線が入った。
「○○号車、行き先は〜?」
「あの・・・この辺クルクルですけど」
「ハ〜イ! クルクル了解〜!」
 なんだ、それでわかっちゃうわけ?!
 話し相手がほしいご老人は多いんだよね。 よし、こんど聞かれたら”デート”って答えよう(^^;




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