VOL.38

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【カモシカ】

 近くの星友達がやってきた。
「宮坂さ〜ん、うちの庭に天然記念物のカモシカが来てるんだ。それも足にケガしてる。どうしよう!」
「役場で保護してもらうか?」
「きょうは、日曜日だよ」
 ならば警察署ということになり電話した。 30分ほどで来るという。・・・そこでふと気がついた。 彼の家には精巧なモデルガンがいくつも飾ってある。これをオマワリさんに見られたら・・・。
「エェーッ! あらぬ疑いをかけられたらどうしよう!?」
 冗談を言ったつもりが、彼、あわててかたづけはじめた。
 気がつくとカモシカの姿がない! そんな時にかぎってパトカーはやってくる!
 オマワリさんに事情を話すと
「ハハハ、私らをわざわざ待っててくれるカモシカもいないワイ。ただし・・・」
「はい・・・ただし・・・?」
「発砲事件などでなければ良いのですが・・・」
 なまつばを飲み込み、言葉を失う二人であった。




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