VOL.41

信州に移住してからの数年間、タクシー運ちゃんで生計を立てながら人間ウォッチング。
カルチャーショックにおびえながらも 絵を描き始めるきっかけになった時代です。



【整体師】

 それはわが家の増築中のこと。
重い材木を持ち上げたとたん腰に走った電流! シマッタ! 時はすでに遅し。 階段も上れぬでくの坊になりさがってしまった。
 妻が近所の人から聞きつけたのが、山むこうに住むという出張出前の整体師さん。それも本業は養豚業とか。
 すがる思いで呼んでもらった整体師さんは軽トラでさっそうと来た。
 食肉加工寸前のブタ気分でころがる僕の背骨を親指でなで下げる・・・。
「ん、ここね!」
 あとはテキパキもみほぐす。
「ハイ、おしまい! 立ってみて」
「え?・・・あ、立てた」
「そのまま両手を床までつけてみて」
「つくわけないでしょ・・・え!? ついちゃった」
「ご主人、日ごろから体きたえにゃだめダニ!」
 そう言い残すと軽トラはさっそうと去っていった。
 田舎には、いまだ魔法使いのオジさんが住むという・・・。




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