Reviewer:24th. 182-189 名無しのエリー2010.10.25.
1.RAZZLE DAZZLE FRAGILE ★★★
クラシックのような荘厳なメロディをどこかチープな音質の打ち込みで鳴らした小品インスト。
こういうのが得意なアレンジャーとかに任せればもっと壮大で迫力ある仕上がりになった気もするが、
結果的にはこの抜けた感じが彼ら流のデカダンス・ポップを思わせる出来に繋がったといえるか。
2.RAZZLE DAZZLE ★★★★★
ちょっと間抜けなカウベルのカウントから入る80's邦ニューウェーヴテイストの曲。
無意味に派手なオーケストラヒット、半音下りのコード進行でのキメ連発と、何ともアホっぽいアレンジで幕を開ける。
ギターも本領発揮というべきか、いい音とか悪い音とかいう話よりとにかく曲に合った歪みぶり。
ちなみに上手いか下手かの話なら確実にキャリアに見合わない下手さ加減だが、
今井の存在はギタリストというよりサウンドエフェクト担当者なので曲にフィットする音を探してきた時点で大役を果たしてる印象。
ベースはちゃんと上手いし、押しの強いアレンジとの相乗効果で力強いグルーヴが出ている。
櫻井の歌い口調もそこはかとなくコミカルで、古き良きパンクを思わせる。
メロはあんまりこねくり回さずシンプルに仕上げていてリズムとの噛み合いが良いが、
いわゆるメロだけで成り立つようなメロディアスさではなく、バンドありきのパーツなので、歌がダントツに立った音楽を好む人には物足りないかも。
どこかネタっぽいくらいのエンタテイメント性があるバンドの方が好き、という人なら問題なく聴き進められるのでは。
3.狂気のデッドヒート ★★★★★
今度は00年代ニューウェ―ヴリバイバルって感じの、感覚的でパンキッシュな曲。
過剰なエフェクトや感極まった奇声で攻める櫻井が、カッコイイんだか頼りないんだかのNYパンク風バンドアンサンブルを彩る。
ヤガミはテクニカルなドラマーではないが、こういう8ビートには妙に適性がある。
シンプルなフレーズを堂々と繰り返す思い切りの良さが潔く、打ち込み音楽のようなミニマルさも体現している。
まあ演奏の歌心とかは無いので、いわゆる歌伴のスタジオミュージシャンとしての適性はまるで無いが。
そして裏を返せばセオリーを学んだスタジオマンがあまりやらないアレンジを体現している。
活動25周年にして未だにCD屋がプッシュする感覚系の海外若手バンドの、しかも当たりの部類に匹敵するセンスを発揮した曲。異能。
4.独壇場Beauty(R.I.P.) ★★★★★
フレーズというより音の断片を貼り付けて組み上げたような打ち込みが印象的な、ダンサブルな曲。歌詞も妙に曲調と合っててカッコイイ。
メロの組み方もリズミカルで、ライン的に同じようなメロが続きがちなのにも関わらずサビがきちんとサビらしく聞こえる。
曲は意外とスタンダードだけど、アレンジの遊びで各メロの表情を上手く分けてる感じ。アタックを強調した、サビでの櫻井のボーカルも迫力充分。
基本的に同じようなコード進行で統一感を持たせながら展開するが、終盤ではリハーモナイズドしてもうひとヤマ設けている。
しかもリハモ後のコード進行や女性コーラスの影響で「お願いセニョリータ」にちょっと似る。まさかのレンジ路線。
5.羽虫のように ★★★★
ソフトバレエのような、音色的にはちょっと懐かしい感じの打ち込みが印象的な準4つ打ち曲。
今までに比べ丁寧にまとめにかかってる感じのアレンジになる。
ディレイの効いた打ち込みフレーズが曲をきらびやかにし、ギターも概ね普通の演奏に。
と思ったら終盤のギターはメロをひたすらなぞる奇妙なプレイに。しかも25周年のバンドじゃなかなか聞けないようなぎこちないプレイ。
逆にさすがの安定感、といいたくなる。
ベンベンとオクターブを上下するベースも妙に耳に残る。シンセベースのような音色に聞こえるが、これ弾いてるんだろうか。
モンテビじゃあるまいし、ベースいるのにわざわざ打ち込みはしないか。と思ったがむしろ両者は近しい存在のような。打ち込みだなこりゃ。
6.妖月 -ようげつの宴- ★★★★
櫻井がアタックを抑えて徐々に声量を上げる歌謡チックな歌い口になり、
禁断症状みたいな小刻みビブラートや変なエフェクトと相俟って不気味な存在感を放っている曲。BT流ブリストル・ポップといった印象。
墓場の効果音みたいなフィヨフィヨした音やディレイで遊んでるリードギターもさることながら、無機質なバッキングギターも何だか怖い。
今作中では上品で、BTのいわゆる暗そうなイメージどおりの曲。
7.BOLERO ★★★★★
ここでまた振れ幅が大きくなる。
タムを落ち着いてじっくり叩くようなリズムパターンから入るため、また妖しい曲調かと思わされるが、
「ダッドゥビーダッ…」と陽気なフレーズが始まり、何だかコケティッシュで可愛い曲になってしまう。何というベテラン。ていうかアホ。
BTにそれほど詳しくないので、これが当たり前なのを単に自分が知らなかっただけなのかもしれないが、
あの毒々しい見た目からこの曲調が出たら誰しも最初はビックリすると思う。事実毒々しい曲をやってるし。
ポップで明るい曲調ながらどこか気持ち悪く、実は歌詞は切なかったりする感じがゆらゆら帝国を思わせる。ていうか歌い方が似てるのかも。
Aメロでのオ段の発音の仕方とか近い気がする。それとも荒く歪んだギターとかが似てるのか。
8.Django!!! -眩惑のジャンゴ- ★★★★★
何その田原俊彦みたいな曲名、と思ったら本当にトシちゃんが歌いそうな4つ打ち+パーカッションのイントロが来てビビる曲。
しかもメロも歌詞もきちんと80年代の男性アイドルが踊りながら歌う感じになっている。振れ幅スゲエ。何考えて作詞してんだ。
何がビビデバビデブーだ。しかもそこだけ三連符で歌ってるのが異様にハマリが良い。さらにそこに乗る「ジャンゴー!!」の男性コーラスがまたアホ。
どうにもネタっぽい今作だが、そのキャラ付けに最も影響している曲か。もしライブを観ることがあれば絶対ジャンゴー言いたい曲。
むしろジャンゴー言うためにジャンゴー代払ってライブ行きたくなる曲。これはアイドルファンの心理なんだろうか。
9.錯乱Baby ★★★★★
一転してブンブンサテライツみたいなイントロで始まる曲。やはりメロのリズムの組み方が良く、演奏と歌のリズムがうまく絡んでいる。
乱暴なギターやシンプルで力強いリズム体もカッコイイ。HIVESとかに近い雰囲気もあるかも。
キメとかはパンキッシュだけどそれがちゃんとダンスビートに乗ってて踊れる曲になってる感じとか。
そしてビブラートとか全然使わない、飾り気のないギターソロ。お家芸。
でも十代の人が聴いても割といい印象を持つような曲なのでは。前曲は十代にはスベるかもしれんが。
ていうかスベるとか以前にBTは別に相手の反応を窺いながら曲書いてる訳じゃないだろうけど。
むしろ「マイペース」の長所と短所をどちらも極例で見せつけるくらいマイペース。
10.PIXY ★★★
久々にいわゆるBTっぽい耽美さの出た、りバーブ強めの曲。
ただここまでの流れが流れなので、「普通じゃん!!」とツッコミたくなってしまう。
丁寧にアルペジオ鳴らし、きちんとしたラインの打ち込みで脇を固めた王道曲。と思ったらサビの詞が何気にすごいことになってる。
1回目で「kiss kiss kiss」と歌ってるとこを2回目で「チューチューチュー」に差し替える荒技。今回カワイイ路線推しなのか。
11.くちづけ(SERIAL THRILL KISSER) ★★★★
そしてまたもチュー。これも割とV系の延長上っぽい、オーソドックスな短調のロック。ベースもV系っぽいブリブリの音に。
ハキハキした頭打ちのスネアに絡む、迫力があるというよりはだらしないギターが彼ららしい。
「こっちの闇は甘いぞ」「あっちの闇は苦いぞ」という独特の詞も彼ららしい。竜王ですら持ちかけない、闇と闇の2択。
でも結構人生ってそんな消極的な2択ばかりだし、なんか深いとこを突いてる気がしてくる。
どうもネタっぽい印象の強い櫻井のボーカルだが、ちょっと歌い方が特殊なだけで実は上手いんじゃないかと思えてくる。
ビブラートの振幅の間隔とか、なんかちゃんと曲のテンポに対して16ビートを刻んでるように聞こえる。スゲエ。そういうとこだけ佐藤竹善みたいだ。
ビブラートの技術単体でみれば水樹奈々とかの方が上手いが、
彼女の場合曲のテンポに対してビブラートの振幅を大きくしすぎて歌のリズムだけを孤立させがちなので、
実戦でビブラートを使ううえでの勘みたいなものでは櫻井に軍配があがるかも。
12.月下麗人 ★★★
引き続きV系のスタンダードっぽいミドルテンポ曲。
リバーブの効いたギターのアルペジオと耽美な歌詞を絡ませるいかにもな曲だが、アルペジオじゃないほうのギターが余りに情けない代物なので何だか感動する。
そんなんもっとスマートに弾けるだろいくらなんでも。すごいプロだ。
思えば今井が「これでもプロになれる」という前例となってくれた事で、後のモンテビ三好誠やレンジNAOTOにもプロへの道が開かれたのかも。
でもこん中で1人がキライな人は3人ともキライだろうし、その人にとって今井は諸悪の根源だけど。
13.夢幻 ★★★★
妙にピコピコムニュムニュと可愛らしい電子音で始まる爽やかアッパーナンバー。一気にアクアタイムズとかみたいな青臭い感じに。
しかし歌のほうでは得意の違和感が炸裂。とにかく色々エフェクトをかませ過ぎてエグイ事になってる。
特にオクターブ上の歌声が異様な存在感を放ってる。ビブラートかけるとさらに気持ち悪い。
どっかで演奏もぶっ壊すのかと思えば、最後まで疾走感を維持して爽やかに駆け抜ける。
なんかこのボーカルの浮いた感じが、自分が既に死んでるのに気付かず現世をうろついてる人の歌声を特殊なマイクで拾って、
住職や神主のバンドと共演させてるような奇妙な光景を思い起こさせる。アンデッド・ビート系。
14.TANGO Swanka ★★★★★
髭でいう「ダーティーな世界」みたいな雰囲気の、低音強めのどっしりした曲。
とはいえ別に髭そっくりとかではなく、きっちりBTのカラーが出てる。
要はそのくらい最近のバンドと比べても古さを感じさせない音楽をBTがやってることに驚いた、ってことで。まあタンゴじゃないけどコレ。
相変わらず本人なりに計算し尽くしたのかまぐれ当たりなのか分からない、奇妙な打ち込みが耳に残る。ギターもSE的に遊んでる。
とにかくやり切る行動力があり、迷いがないのがいい方に転んでる。Aメロではラップまで登場。
サビの「路地裏太陽 足がもつれて」という落ちぶれた太陽の描写が個人的に好き。遊助に捕まんぞ。
「こめかみバンバン」も秀逸で、こめかみを何でどうするのかは述べてないがこれだけでもほとんどの人がイメージを共有できそう。
しかも英詞っぽいリズミカルさもあって思わず歌いたくなる。
彼らは日本語詞とかなり上手く向き合ってるのでは。
15.Solaris ★★★★
ラストはブラーにありそうな、フワフワした感じのバラード。割と音数を絞り込むところもあり、起伏に富んでいる。
ロングトーンでキレイに始まったかと思うと途中からわやくちゃになるラストのギターソロもなかなか意味不明。バラードのギターソロとは思えない。
歌詞は一気にピュアになり、歌い方も詞世界とリンクして不器用さを演出するようにビブラートを控え、リズムにも遅れ気味に乗る感じに。
やっぱり歌上手いかも櫻井。技術的な事より、場面ごとの使い分けの判断がいい。
ベースはサビで結構刻んでるが、そのおかげでボーカルのゆったりした感じが引き立てられてていい感じ。
総評.★★★★★
活動25年目を迎えたベテラン、BUCK-TICKの18th。
いぶし銀の技術とかはほぼ期待できない代わり、過去の栄光にしがみ付かずに次々と新しいことに挑む積極性が聞いて取れる、というのが大まかな印象。
技巧派でないながらも、自分達の音楽に必要な限りでの創意工夫には手を尽くしており、無理に背伸びして上手くみせようとしてる感じがない。
今作には小難しいコード進行もなければトリッキーな変拍子なども無く、容易に歌いこなせないような複雑なメロディも無い。
シンプルなメロディと素直なコード進行、単純明快な8ビートが全編で繰り広げられている。土台の部分は案外普通。
それでも今作が面白いのは、音作りに遊びを持たせたアレンジによって曲間に明確な境界線が引かれているからではと思う。
それでいてリズムのシンプルさが貫かれたおかげで力強いビート感が作中維持され続けていて、手数の割に効率よくダンサブルな作品。
音楽性も凝り固まる様子がなく、熟年だが成長過程にあり今後も期待できる晩成型。
曲調のみに留まらず歌詞も自由度が高く、見た目のイメージを逆手に取って意外性のあるフレーズを放ってくる。
単に裏をかくだけなら簡単そうな気もするが、長年かけて培ったキャラを覆す勇気は中々出ないものでは。
例えば「会いたい」キャラが定着してきた西野カナが「別に会いたくない」とかいう曲を出したら、
その曲単体は面白がられるかもしれないが今までのキャラは一度ご破算になるので、選択肢としてはかなりリスキーだと思う。
ていうか元のキャラがどんなであれビビデバビデブーの出る幕は普通ない。
デビュー直後でキャラが立ってない状態とかならやれるが、そのままビビデバビデブーの似つかわしいキャラを続けざるを得なくなるので、これまたリスキー。
そういう詞を平然と入れるところに、周囲の評価など気にしないBTのマイペースさが出ているように思う。
ここにきてまだ化ける可能性があるというのは凄い。
しかも今なお可能性を秘めている理由が「生まれ持っての才能が有り余ってるから」ではないところが、ベテランとして模範に思える。
ソングライティングのアイデアが枯れてどこかへ消えてしまったバンド達とBTを比べたとき、BTが前者の何倍もの才能を有しているとは思えない。
BTも今作に入ってるような曲を最初からやれた訳ではない。
才能で書ける範囲の曲が尽きたとき、そこで止まるか、いくつになっても貪欲に新しいものを吸収して
それを糧に次の作品を生み出していけるかが分かれ道になっていると思う。
デビュー後しばらくはBTも先天的な才能で持っていたのかもしれないが、今のBTがあるのはやはり後天的な努力の賜物に感じる。
今も先天的なものが影響しているとすれば、彼らは生まれつき他の人達より音楽が好きだったのかもしれないという点くらい。
総じていい意味でベテランらしからぬ作品。
80年代ニューウェーブが好きな人に薦めるのが無難だが、他にも色々なバンドとの共通点を感じるし、高尚でとっつきにくい感じもないので、
割と色んな人に気に入られる作品では。
歌謡曲的な泣きメロが好きな人には不向き。ジャンゴー!!
(★5個が満点。)