アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : どーぴんぐ・ぱんだ。

Reviewer:14th. 594-597 名無しのエリー2007.05.10.

1.High Pressure ★★★★
まず1曲目はおそらく彼らの王道であろう、シンセベースがファンキーなデジロック。
これでも結構な完成度だが、今作ではこの基本スタイル+αの仕掛けを次々に放ってくる。その幕開けの曲。
2.Introck ★★★
滑らかなギターのフレーズで始まるスピーディなロック。デジタルっぽいイメージを覆す王道HRなプレイ。
ベースとドラムが音量的に控えめで軽く感じる所もあるが、その分モッサリ感がなく、ウラ拍の16分で合わせるキメもシャープ。
ドラムが暴れるタイミング早いな、と思ったら1分半で曲終了。ラストも余韻なしでビシッと止める。
3.Blind Falcon ★★★★★
お次はメロディアス・レゲエロック。ギターの残響が心地よいBメロから目の覚めるようなサビの美メロへの繋がりは見事。
アルバム通してファンキーなラインを聴かせるベースだが、この曲のようなシンプルなロックは苦手そうなのが面白い。
しかし美メロ。
4.MIRACLE ★★★★
今度はパーカッションに金属的なエフェクトをかけた試みが面白いラテン・デジロック。
やはり空間系で攻めてきたBメロから、キャッチーなメロディとリフを組み合わせたサビへ。
基本的にロックだが、サンバのリズムも軽く意識し続けて聴くと味わい深い曲。
5.The Fire ★★★★
アラーム音からスタート。さらにそこから疾走するファンク・デジロックへ。
押しの強い「Fire~」のフレーズと切れのあるカッティング、ファンキーなベースがナイス。
メロディレスなアドリブ感のあるボーカル等、ファンクの要素がかなり活かされており、融合具合が面白い曲。
6.Get You ★★★
ここで変化球のファニー・ボーカルもの。海外の掘り出し物バンドによくある、「変声がダサカッコイイ」路線を狙ったものか。
同じような狙いをみせるのは売れてる中ではピロウズくらいしか浮かばないので貴重かも。
サビは2ビートに変声シャウトというハジけぶり。
3枚目路線やりそうもないクオリティのバンドなだけに面白いアクセントになっている曲。
7.Moralist ★★★★★
ここまでハイスピードで突っ切ってきたが、ここでボサノバ風ギターイントロ。
「やっと止まった…?」と思ったらドラムが入ってみればやはり疾走。似たテンポが続いても飽きさせない懐の深さは見事。
ボサノバのままでもバッチリハマったであろう渋い美メロは秀逸。
取り敢えず高音を張り上げてサビをサビらしくでっち上げる幾多のバンドとの格の違いを見せつける曲。
最後に余韻程度にボサノバを「こうだと思ったでしょ」的に演ってみせるユーモアもある。
ボサノバもいいが、ドラムのパフォーマンス聴いたら疾走で良かったな、と思わされる。
バンドの実力に納得させられる曲。
8.Hi-Fi ★★★★★
練るメロディも得意だが、シンプルなメロディを多彩な味付けで楽しませる技術も抜群。
というか後者のイメージだけが強かったので余計メロディの多彩さに驚いた。
頭から登場するキャッチーなサビメロと、連想したイメージと一味違う大人めのAメロの表情の違いが面白い。
へヴィなロック、爽やかな女性コーラス、果てはライトハンド奏法と、様々なアイデアを出し惜しみなく注ぎ込みながら、
核である「I Love You~」のリフレインも曲の芯から揺るがない完成度の高さ。
9.I'll give(this happy time for you) ★★★★★
トッド・ラングレン的な、トータルの流れの美しさを意識した美メロ。
そこに今作最高級にソウルフルなベースが乗って完成したファンキー・ポップチューン。
徐々にジャムセッション的なムードになり、ベースが弾いていたラインをギターも一緒に弾き出し、
そのフレーズを曲のテーマのように組み上げていくドラマチックな曲。
とどめの結びメロが終盤に登場して完結。
10.Snow Dance ★★★★
ここでようやく落ち着きを取り戻す、ミドルテンポの上質ポップス。
タイトルに反しサマーポップテイストの曲に、今作唯一の日本語詞が乗る。
アウトロのストリングスは曲中から違和感なく繋がる必然的なもので、巷の安いクリスマスソング等にありがちな後から付け足した感は感じられない。
11.Tell My Speaker Box ★★★★★
再びテンポアップして、かなり高い年齢層にも訴えかける魅力がある普遍的なメロディのポップス。
意外性のある3連のピアノリフがマッチした面白い曲。メロごとにパターンを固定せず、多彩なパターンにトライしたドラムが秀逸。
ワンマンでなく、このバンドあってのカラフルなサウンドであることを印象づける曲。
12.Teenage Dandyism ★★★★
最後は原点回帰のデジロック。シンプルでストレートなサビメロは、聴き手を選ばない、外の世界に開けたキャッチーさ。
媚びて自分たちのスタイルを崩すまでもなく大衆性を発揮できる実力をみせた曲。ライブの締めにも良さそう。
総評.★★★★★
聴き手を全く選ばない、という訳ではないが、個人的には減点のしようがない出来。アーティスト側としてやるべきことは尽くしていると感じた。
これが彼らなので、あとは聴き手の好み次第ですよ、とプレゼンできるレベルまで固まっている。
聴いていて「もっとこうした方が」と首を傾げる箇所がまるで無く、逆に「その手があったか」と思わされる。
技術の高さも節々で感じるが、調子に乗って弾きすぎるような身勝手さが無く、バンド全体を考えて見せ場を回し合うような舵取りが出来ている。
色々と意見しようのない、自分の手には余るバンド。
捨て曲もないように思えるが、もしかしたら彼らにすればいつでも出来る程度の曲も混じってるのかもしれない。
しかし自分のレベルでは捨て曲と思えないので有難く拝聴しているのかもしれない。
自分の手に余る状態なのでバンドの欠点は指摘しようがないが、
好みの問題としてはいわゆる歌謡曲要素はまるで無いので、人によっては買ったきり決まった曲以外聴かないハズレ盤になるかも。
また、「せっかく美メロなんだからゴチャゴチャいじらずに普通に歌って欲しい」という意見もあるかもしれないが、
美メロがウリのバンドは他に豊富に居るので彼らの立ち位置は今が正しいように思える。美メロに専念するのは、美メロしかないバンドが消えてからでも充分。
とにかく自分の感想としては今作はバンドの今後をおおいに期待させる1枚。
(★5個が満点。)

Reviewer:17th. 288-291 名無しのエリー2008.03.24.

1.A.O.D ★★★
前作のオープニングチューンでも聞き覚えのある英語ナレーションが入る、短いオープニング曲。
ほぼ打ち込みで成立しており、古川色の強い今作を象徴するようなデジタルな曲。
あまり音を詰め込んでおらず、すっきりシンプルな曲。非常にポップなようで節々で微妙に気持ち悪い音も盛り込んだクセのある曲。
2.nothin' ★★★★
蒸気機関車のようなSEから入り、80年代的なシンセを乗せたアッパーなロックへ繋がる。
Bメロから加わってくる電子パーカッションを前フリに途中からサンバ調の曲へ変化する。
ミュートしてリズムを刻む箇所がほとんど無く、ほぼ実音のところしか弾かない古川のギターは、いわゆるバンドのギタリストとは一風変わった印象。
自身でプログラミングをしているし、他の電子音との噛み合いのバランスを考えて、
取り敢えずのリズムの刻みよりいっそ休符を取ることを選んでいるのかも。ベースの8分弾きも小気味良い。
サンバパートのドラムはスネアの当てがい方がシンプルすぎていちいち流れが止まってしまう印象。
パーカッションのパターンももっとバリエーションが欲しかった気が。
3.I'll be there ★★★★
打ち込み強めな今作でも特に傾向が顕著な曲。
わざとらしいリフレインやブレイク後の残響等、派手で大味なユーロビートへ回帰した、バンドサウンドとしては異色な曲。
確かに同じベクトルを持ってるロックバンドは少ないかもしれないが、生演奏が映える曲ではなく、聴きしろが浅いため飽き易いか。
前作でファンキーなプレイを披露していたベースも地味なプレイに終始。
4.call my name ★★★★
ミドルテンポのギターポップを思わせるイントロから入るが、Aメロが始まるといきなりテンポアップ。
どちらが主旋律ともつかない、ツインボーカル的な音量バランスで調整されたAメロのハモリが印象的。
サビのメロディは前曲からほぼ流用し、リミックスのような形で仕上げている。
全体にテンションは高いが、サビの頭打ちドラム時にバスドラを踏まなかったりといった事が影響し、曲通して低音が薄い。
ラストではベースがうっぷんを晴らすようにスラップ。
5.we won't stop ★★★★
今作は80年代的な大味なアレンジを盛り込んだ曲が多いが、この曲もその1つ。
ベースのスラップはニューレイヴというよりダンスミュージックそのものの王道に近い硬派なプレイ。そこに古川がやたら尖った音のロックギターを絡ませる。
ギタリストとしての古川は自由に曲に乗って表現するタイプではないが、
デジタルな音を指標とするだけあってリズムが非常に正確で、現実的な性質の持ち主という印象。
音楽に興味の無い人には分かりにくいようなレベルでやたらリズムがタイトな布袋とタイプが近いかも。
やたらアーハーとか入れる序盤のダサめのメロディから、曲が進むにつれて徐々に美メロが顔を覗かせる作り。
6.thunder ★★★★★
ストリングスと電子音のシンプルな旋律が絡む、緊張感のあるイントロからスタート。
急かすようなアッパーなドラムと対を成すように、ゆったりとしたリフ風フレーズを繰り返すベースが非常に印象的。
詰め込んで弾き倒すベースとは違う、引き算の美学のベースという印象。Jungle Smileの「林檎」のような…どんな例えだ…。
サビメロは1小節ごとにスルスルと裏道へ抜けるように意外な方向へ展開するため、ぼんやり聴いていると振り切られてしまう。
ギター弾きながらコレ歌うのは結構大変そう。
7.good bye to heroes ★★★★★
ギターリフのようなリズミカルな歌メロがthe band apartを思わせるアッパーな曲。
メロディをあまり上下に振らなかったお陰でギターの絡みのメロディアスさが活きた印象。後半のリズムの遊びもバンアパっぽい。
ボーカルとギターのアルペジオがポリリズムを形成し、結局は曲自体の拍子を変えてしまう。
ドラムのリズムの正確さではバンアパよりドーパンに分がある印象で、タイトなビートが楽しめる曲。
8.coffee high ★★★
落ち着きのあるメロディに、元気にリムショットでリズムを刻むドラムが加わる、ほとんどシンセなしの曲。
途中ギターも裏ノリになり、ホーンも加わってスカともレゲエともつかないムードに。さらにベースがオクターブを往来するディスコビート的な面も顔を出す。
どこで盛り上げるでもなく静かなAメロへ戻る流れが繰り返される、まったりした曲。
テンポは速いが、ここまでの流れからすると箸休め的な曲か。
9.summer song ★★★★
切れのあるカッティングと弾力のあるシンセベースの音が印象的なミドルテンポの曲。途中リズム体が表情を変えレゲエに。
ストリングスでのアレンジは、仰々しくならないように、短めのフレーズを曲の周りに肉付けするような形で仕上げている。
終盤は歪ませたギターをきっかけにドラムも派手に。
10.crazy ★★★★
イントロの素朴な電子音からアンビエントな曲調を連想したが、すぐにテンポアップしてドーパンらしいパンキッシュでキャッチーなロックに。
ボーカルの声質の影響か、重量感が不足している気はするが、リズム体の演奏はタイト。
ギターについても、ボーカル兼任ということを考えれば充分過ぎるレベルでは。
終盤の若干もたつくようなドラムフィルは狙いか。
11.way back ★★★★
意外に暗い方向へ広がるAメロが印象的な、生演奏主体の曲。Aメロでの和音弾きやサビでの歯切れ良いプレイ等、ベースの活躍が際立つ。
前作のようなファンキーな曲が減ってベースの存在が地味になったから余計そう思うのかも。ポップな曲に不似合いなギターソロも面白い。
12.kiss my kiss ★★★
犬のような謎の「ヘッヘッへッ」のコーラスがキモいアッパーチューン。
途中のスキャットも含めややクセのあるメロディにはなっているものの、作中に似たテンポの曲が多いため、ややもたれる。
シンセ抜きで、ドラムをフィーチャーしたバンドサウンド勝負の曲で締め。
総評.★★★★
ビッグマウスで有名な古川を中心に、ベース北條、ドラムのハヤトからなるDOPING PANDAのメジャー2nd。
1stで見せた選択肢のうちファンクを切ってデジタルを伸ばしてきた印象で、ロックを土台にダンスミュージックを取り込む以前の姿勢とは逆に、
ダンスミュージックを軸にロックで味付けした曲を作るアプローチが出てきたように思える。
パンキッシュな曲が増え、古川色が濃くなる一方でリズム体2人の色が薄くなったか。
曲のレベルは総じて高く、実験的な要素もきちんと消化できていて、相変わらずハズレが無い印象。
eufonius菊地が旋律重視のメロディメーカーだとすれば、古川はリズム重視のメロディメーカーといった感じで、
他パートとの駆け引きで曲をスリリングに仕上げるセンスに長けているように思えた。というよりバンドが優れているのかもしれないが。
メロディは綺麗だがボーカリストとしてはバラードを歌いこなすようなタイプではなく、実際スローバラードには一切挑戦していないのが勿体無いか。
これだけのギターを弾きながら複雑なメロディを歌いこなしている現状以上の要求をする方が酷かもしれないが、
歌唱力が伸びれば特定の曲だけギターを置いてじっくり歌うという選択肢も出てくるし、メロディをもっと活かせるようになる気が。
取り敢えず古川の声や態度がムカついたり、英詞メインが嫌いでない限りはほぼ外さない出来では。
(★5個が満点。)