アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : ゆーふぉにあす。

Reviewer:17th. 502-506 名無しのエリー2008.04.25.

1.ボクノタカラモノ ★★★★★
ゆったりとした幻想的なボーカルから入る。低音ハモリのラインが非常に印象的で、こちらがメインに聞こえるほど。
ストリングスや8BITサウンド、マーチングドラムが代わる代わる曲を彩る美メロポップス。
途中バスドラ替わりに心臓の鼓動音を用いているが、実は正確なリズムに当てはめずに自然な心拍のリズムを優先している。
曲中に数回登場する「チクタク動き出す」というフレーズを効果的に浮き上がらせるために、
その部分では伴奏をストリングスのみにして毎回仕切り直してみたりと、カラフルなアレンジの中にも統一感を持たせる意図を感じる。
作品の世界観にぐいっと引き込む理想的な1曲目。
2.空の影 ★★★★
フレーズよりも音色に遊び心を持たせて透明感を出した、ミドルテンポの静かな曲。
曲の出来は丁寧だが、歌も含め全体に無機質で淡々としており、その平熱感が妙に心地良い。
ボーカルのriyaは技術的には何ら強みは無いが、その透明な声質が曲ごとに勝手に様々な表情を発揮している印象。
3.マルメロ ★★★★★
「黒にそめろ」とかそういう系統の曲名かと思ったが、別に丸める歌ではないらしい。
ここまでの流れ通り音を大胆に絞ったゆったり目の美メロポップスとして始まるが、突然儚い世界の秩序を脅かすような大音量のドラムが加わる。
高めのバスドラ音がドアを荒々しくノックするように繊細な歌声を脅迫する中で、サビでは絶妙な低音ハモリが重なる。
声が綺麗なだけの普通の女の子といった印象のriyaのボーカルを活かす道は、やはりシンガーらしいリアルな叫びより、潔癖でファンタジーな世界観か。
前曲とさして変わらない歌い方だが、何故か切ないほどの無垢さを感じる。
4.リトルマーチ ★★★★
再び落ち着きを取り戻す、木琴の音が印象的な音数絞り目のミドルテンポ曲。
暗めの描写で入るAメロから少し意外な音で繋がるBメロを経て、サビ前で光を集めるようなきらびやかなシンセが入り、
一気に世界が開けるように明るくキャッチーなサビへ。
例によってriyaの歌い方は変わり映えしないが、何故かちゃんと無邪気で嬉しげな感じに聞こえる。菊地版の童謡といた印象の曲。
アレンジはシンプルでボーカル重視の曲が続くので、ボーカルの声がダメならこの辺で挫折するかも。
riyaの声がより魅力的に聞こえる作りにはなってると思うが。
5.journey song ★★★★★
作曲もriyaが手掛けた、今作中では最もアッパーな曲。
8BIT音にボーカルが絡む形で静かに始まるが、サビで加わるベースが爆発。
オーバードライブした音でブンブンうなるが、リズム楽器としてよりメロディ楽器として捉えているようで、
ケルティックで弦楽器が担当するメインの旋律をベースで弾いているような感覚。
サビでのコーラスとの掛け合いも陽気で、8BITケルトとでもいうべき不思議な賑やかさを発揮した曲。
6.光の果実 ★★★
ティンパニの連打で物々しく始まるマイナー調の曲。
今作の流れ通り、生演奏をほとんど意識せずに作られており、常にピアノかギターにコードバッキングをさせたり、
音を絞る部分でもベースとドラムも一応参加させたりといった「取り敢えず」感がない。キッパリ音数を絞る。
おかげでボーカルで魅せるための舞台装置はバッチリ機能しており、鮮やかな情景の変化が楽しめるが、
個々のパートのフレーズを聴き込むとさほど珍しいことはしてないかも。
コピーして弾くにはやや退屈か。
7.ぐるぐる ★★★★★
ピアノのバッキングとマーチングドラムに乗って、ゆったり目のテンポで悠然と進んで行くポップな曲。
ウッドベース(コントラバス?)の弾力のある音とストリングスアレンジでやや堅い印象を出す一方、
あどけないボーカルとテンポよく展開するメロディが無邪気な明るさを演出し、大人っぽいような子供っぽいような不思議な曲に。
テンポが遅くてバラけてしまいそうになりつつも、
とりとめもなく広がる豊富なメロディがギリギリのところで曲を繋ぎ止めている、緊張感のある曲。
8.ホシワタリ ★★★
今作中では癖のあるメロディを有する、ストリングスメインの静かな曲。
後年の作品に比べるとコード運びやメロディメイクの幅はまだ狭いが、それでもマンネリしない作品にはなっている印象。
いつの間にか鳴り出しているタンタンタン…という8ミリ映写機のような音がノスタルジック。
メロディは非常に連続性があるが、サビの繋ぎなど、節々でアレンジがあっさりしすぎていて勿体無い気が。
サビ頭のトリッキーなメロディは滝本晃司そのもの。接点なさそうだし、偶然同じようなセンスを持っていたのだろう。
どんだけいるのか知らないが、滝本ファンなら今作は気に入るかも。
9.つなぐ空 ★★★★★
フィナーレに向けて儚く美しい世界観に変化が見え始める曲。
時折鳴る狂ったような電子音が不安な心理を煽り、曲後半では歪んだギターと荒々しいドラムが、静かに紡がれてきた世界を蹴散らして回る。
1曲目では「夢から覚めないで キミのとなりにいたい」と歌われていたが、
ここで「僕は一人残されて もう見ないで行ってよ」と決別が告げられる。riyaの声も心なしか哀しげ。
最後は文明の終焉を告げるようにコンピューターがデタラメな電子音を鳴らし散らかして曲が終わる。
10.アルタルフ ★★★★★
何も無くなった世界に空しく響くかのような、虚ろに残響する歌声が印象的な、実質的な結びの曲。
旋律的には今作の曲の中でもかなりシンプルだが、静寂の使い方が効果的で、印象としては重い。
音数を絞ったアレンジで落ち着いた雰囲気を出した曲が多い今作だが、この曲では音の隙間が喪失感を演出しており、悲しい印象。
1曲目では夢の中でずっと一緒にいる事を望んだ「僕」が「ここから二人で見た景色を お願い 君は忘れて」と歌い、
自身も「永遠の地」という、死地ともとれる場所へ赴く。
ここまで作り上げられてきた美しい世界は全否定されて儚く消え、ひとまず短い夢のような今作の世界観は幕を閉じる。
11.rond et rond ★★★
M7の別バージョン。
何語ともつかない言語で歌われているが、歌詞カードには「イメージ詞のため歌詞は掲載しません」とある。
仮歌のようなものか、はたまたオリジナル言語として成立しているのか。
今作中で最も生演奏感の強い爽やかなボサノバアレンジで、化粧品のCMで流れてそうな清涼感のある曲。
基本この人達の曲はことごとく日常に合わないので、実はこれは快作かも。1分半しかないのが勿体無い。
12.marumero ★★
M3の別バージョン。やはりイメージ詞。
ピアノ弾き語りでシンプルに仕上げているが、手作り感を出すための意図的なものなのか録音環境が悪い。
そしてやはり1分半しかない。まあ前曲含めボーナストラックだし。
総評.★★★★★
ボーカルriyaと作曲家菊地創のユニットeufoniusが、メジャーレーベルと契約中に自主制作でリリースした作品。
後年の「metafysik」がコードやメロディの繋がりをたぐって外へ外へ開けていく探求的な作品だとすれば、
この作品はriyaの声の魅力を最大限に引き出すことを大前提に、まとまりのある世界観を築こうとした作品、という印象。
楽曲は王道美メロポップが多く、あまり無茶せずに高いアベレージでまとめている。
アレンジはバンド色を廃して、「常に鳴らす音」を設けずに流動的にパーツを組み合わせて仕上げており、絞りどころも騒ぎどころもかなり大胆。
riyaの詞がファンタジー全開であることを考えれば、ライブ性が薄く現実から遠い打ち込みアレンジは正しい判断だろう。
ライブは多分CDより悪くなるだけだろうな、と思ってしまう面もあるが。
さて肝心のriyaのボーカルだが、基本的にはただ歌ってるだけという感じで、大袈裟な表情の変化は見せてこない。
しかしその淡々とした声が時に幼く、時に大人っぽく、優しく、一途に、切なげにと、何故か曲ごとに違ったニュアンスを感じさせる。
役者の動き次第で無表情な能面が様々な表情を見せるように、
彼女の声は曲や詞から聴き手が受けるイメージに素直に乗っかり易い、中立的な声なのかも。
また今作では一人称を「僕」に統一しているが、これも潔癖な世界観を築く上で大きかったかも。
女性が「僕」で歌うと、性欲を全く感じさせない中性的な男子像が出来るが、この虚構の世界には等身大の女性像なんかよりそっちのほうがよほど合っている。
とにかくriyaという素材を活かし切った作品だが、いくら曲の出来も良いとはいえ、彼女の声がどうしてもダメな人にとっては総崩れ。
隙間の多い作風が苦手な人にも薦めにくい。しかも入手もやや面倒。
もし知人が持ってたら、せっかくだから借りてみるのもいいかも。
どこまでもファンタジーを貫いた、虚構ならではの綺麗さに満ちた一枚。
(★5個が満点。)

Reviewer:17th. 545-548 名無しのエリー2008.05.03.

1.リリア ★★★★★
アコギと8BITを中心に据えた大部分は明るい曲。
歌詞は一部暗い側面を持ち合わせているが、時に鳴らされるノイズがその世界を端的に表している。
驚くようなコード進行はそれほど無いが、要所要所のキメが気持ちいい。
ベースラインは下で支えることよりもメロディを奏でることに重心がおかれているようだ。
2.スバラシキセカイ ★★★☆
前曲から8BITを抜いて、ピアノを入れた編成。
Aメロはピアノとドラムのみで構成されているが、Bメロ中盤でストリングスが入り曲に広がりを持たせ、サビでの盛り上がりを演出している。
歌詞は産まれてくる子供に向けた母からのメッセージソングのように解釈でき、その内容と同様に曲調は今アルバム中1、2を争う明るさ。
ただ、タイトル曲の割にイマイチ印象に残らない。
3.ぼくらの時間 ★★★★
一転、ゆるやかなバラード。サビでは曲の盛り上がりと転調を同化させる得意の手法を取る。
アコギとストリングス、ドラム・ベースというシンプルな編成を、完全に役割を分担することで生かし切っている。
その少ない編成の中でも演奏しないパートを導入、曲にある種の寂しさを漂わせている。
今作は生音が重視されているようで、打ち込みはおそらくパーカッションの一部のみである。
4.ぐるぐる ~himawari ver. ★★★
自主制作アルバム「eufonius+」Tr.7のバージョン違い。元曲からテンポが少し上がり、歌詞も一部変更がある。
元曲のまったり感は欠片も残っておらず、ただの落ち着きがない曲になってしまった。
メロディラインは面白いが、それ以外に特筆すべき点はなさそう。元曲を知らない人は評価+☆~★かもしれない。
5.はばたく未来(album mix) ★★★★
サビでテンポ半減、曲の雄大さは一級品な今曲。
Aメロで細かく鳴るノイズが加速感を出し、その流れでBメロになだれ込み、サビで一気に視界が開ける。
歌詞は抽象的ながら、辛いことがあっても逃げないという明確なメッセージを持つ。riyaの詞としては少々見慣れない現実感がある。
eufoniusらしくない詞の世界に引っ張られたのか、曲の変化も甘めである。
6.バランス ★★★★★
メジャーレーベルでもやっちゃった、思い切りダウナーソング。
なかなかの暗さな詞に加え、隕石でも降るかのようなSE、悲痛な響きのピアノに転調の嵐と、「自主制作でやれ」と言いたくなるほどの壊れっぷり。
他の曲は全て生音で出来そうだが今曲はエフェクトかけまくり、明らかにアルバム内では浮いている。今作で一番eufoniusらしい曲だが。
非常に鬱になれる一曲。配置としては大正解かも。
7.柔らかい風の中で ★★☆
最後はバラード寄りのミディアムソング。コード・メロディ・アレンジのどれを取っても独自色がない、eufoniusにしては珍しすぎる曲。
前曲バランスの後を受けるにはこういう曲しかないか。でもこっちが先に作られてるよな…?
総評.★★★★
ボーカルriyaとキーボード菊地創によるユニット、eufoniusのメジャー1stアルバム。
全体にeufoniusとしてはクセが弱い曲が多く、先にmetafysikを聴くと曲の方向性に戸惑うかもしれない。
メジャーレーベルということで抑え気味に作ったのか。
しかし、アレンジこそ違えどメロディラインには転調がふんだんに使われているし、バックの楽器が一個の部分もあり、と菊地創らしさは失われていない。
後の課題はライブで盛り上がれる曲を作ることか(昨日のライブでは全体におとなしかった)。コンサート向きなユニットだが。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:16th. 391-394 名無しのエリー2008.01.20.

1.Turning world ★★★★★
メルヘンチックな柔らかい音作りでまとまったメロディアスな曲。
Aメロ、Bメロとも、終わり際から次の展開を引っ張ってくるメロディの繋ぎが非常に綺麗。
単純に同じメロディのセットを2回繰返して順にAメロ、Bメロ、サビと切り貼りして組み上げるようなインスタントさは感じられない。
かなり貪欲な作曲ぶり。サビも、ひとしきり完結かと思ったタイミングでもう1段階展開を広げてくる。
J-POPのヒット曲には、サビは長いがインパクトは冒頭に集中していて後半はただのまとめ、という曲が多く、
事実そちらの方がCMやチャート番組、着うた等ではウケが良いのだが、彼らの曲はまさに真逆。
サビの「遠ざかる~」でベースラインに対してメロディが♭5になる瞬間が心地良い。
2.キミのカタチ ★★★★
Aメロラスト4小節でBm→C#m→Dときて、次はEかなと思ったらBm♭5・A#ときてサビをG#で始めるという流れに個人的にグッときた曲。
サビもまたもや終盤で別の表情を盛り込む。
ベースラインは全般で非常に綺麗だが、ベースがボサノバ風フレーズを弾き出しても
ドラムはそれ以前から続いてる元気なロックドラムのままだったりして、噛み合いが疑問な部分も。
詞が壮大すぎて現実のシチュエーションに置き換えにくいのも気になる。
「どんなに時が過ぎて世界が記憶を消してしまっても 多分いつだってキミを思い出せる」
例えがデカすぎて現実には言う事も言われる事もメールでやりとりする事もなさそうだが…。
3.Apocrypha ★★★★
ドラムの打ち込みが放ったらかし気味で表情に乏しく、合わせ方もベタなのが気になるが、サビメロの広がり方は今作中でも目覚ましい曲。
ピアノ弾き語り状態で始まり、打ち込みが入ってピアノが低音でコードを連打し出すと徐々に緊迫した雰囲気に。
Bメロはリズム楽器を抜いて荘厳なストリングスをメインに。
サビに入った時点で既に広がりを感じるが、メロディが曲を牽引して更にもう一段階開けた世界を見せる。
サビの最後まで手抜きなしの密度の濃い曲。
4.ノクターン ★★★★
歌とピアノだけでシンプルにまとめたバラード。
素朴で透明なボーカルの声質を最大限に活かすべく、複雑に展開させずに優等生な美メロで固めた心安らぐ曲。
riyaは朗々と歌い上げるタイプのシンガーではなく、声優的なスタイルだが、こうした曲には適している印象。
5.遠い夏空 ★★★
シンプルでどことなくキュートなエレクトリックアレンジをあしらった曲。今作中ではメロディの作りは普通な部類に入るか。
優しいギターソロとバックの電子音の不思議なバランスが面白い曲。
ロック調の曲でもテクノ調の曲でもリズムの駆け引きがあまり無いのはやや物足りないか。
6.resonanz ★★★★★
アニソン質なマイナー調シンセが印象的な曲。Aメロ終盤のメロディをきっかけに転調し、サビは3拍子に。
サビもまとめに入る頃、またもや一癖あるコード運び。
恐らく一度完成型にした曲を土台に、さらに突き詰めてコードやメロディを分岐させていく作曲方法なのでは。
弾き語り一発でコレはまず無理。
7.Idea ★★★★★
金属的なエフェクトのかかったボーカルでスタート。
今作全般の例に漏れず、メロディがうなりをあげて無数の分岐の中を突き進み、その先の展開を切り開いていくような作り。
実際はコードが先なのかもしれないが、印象としてはメロディが先導している感じ。
リズムのアレンジはともかく、旋律の引出しはやたら広い。
サビは最初の2小節を聴いた時は「ほぼ同じメロディをもう2小節反復するかな」と思い描いたが、
実際はその短3度ハモリのラインを主旋律としてメロディを膨らませてきた。
更にその下に6度ハモリのコーラスを入れる等、少なくとも自分の予想を覆す出来。
ロード第1章と第2章のサビを無理矢理くっ付けたような出来、とでも言えば少しは分かり易いか
(2章のサビは1章のサビの3度ハモリのラインを主旋律に持ってきただけ)。
詞は「明日この街が灰になっても 何千回でも走り続けてきっとまた逢える」といった具合。
どんな時にそんな事を思うのか感情移入しがたいが、どうも美男美女限定臭というか、夢見がちな感じが。
8.wish ★★★★
ハープや木琴(鉄琴?)、オルゴールのような音色等でお花畑なアレンジに仕上げた曲。サビのメロディはやはり後半に一ヤマある。
今作全般の大袈裟な詞世界を自分なりに解釈するキーになった曲。
「ほんとは私だって 素敵な恋をしたいけど」と素朴に歌うさまから浮かび上がるのは、
時間の果てや絶望の果てを知りながらもなお愛を貫ける女性像、ではなく、そんな壮大な恋をしてみたいと憧憬する、恋に恋する少女像に思える。
ある意味現実味が薄いことこそ売りかも。
9.eidos ★★★★
delofamiliaのようにミニマルな電子音と、今作中最もシンプルなメロディですっきり組み上げた曲。
音を削ることで生み出された緊張感の上に、
「こぼれた想い出から真実が飛び立った どこまで行けるだろう 何も持たないままで」と詞が乗る。
真実という言葉は今作中頻繁に登場するが、その行方が不確かな状態を描写しており、
曲の雰囲気からも「真実」が誰とも出会わずに永遠に周回し続けるような乾いた印象を受ける異色曲。
10.恋するココロ ★★★
丁寧にまとまっているがアレンジが全般的にベタな為、今作中ではやや印象の薄い曲。それでもハズレらしいハズレでは無いが。
等身大の恋心を歌っているが、ポジティヴ妄想がたたってリアリティを欠いているのは相変わらず。
フラれた時のことを思って不安になったりするようなネガティヴ要素なし。
必然的に、小さな事で一喜一憂してポジティヴとネガティヴをせわしく往復するような描写もなく、一途さがなにやら盲目的で怖い曲。
11.楽園 ★★★
ラストに相応しく王道にまとめたポップなバラード。
AメロやBメロの締めでは例によってメロディが表情を変え、次の展開へと導くが、他曲に比べ先導が優しく、甘い感じ。
シンプルにノれる曲が少なく(個人的にはゼロと思ったが)、旋律の情報量が異常に多い今作は、かなり聴き疲れる作品のため、
スタンダードな癒し曲で締めたのは正解では。
総評.★★★★
アニメやゲームへの楽曲提供等をメインに活動する、ボーカルriyaと作曲家菊地創によるユニットのメジャー2nd。
まず、竹善アニソンカスタムとでも形容すべき菊地の作曲能力が印象的。
リズムトラックに関してはドラムは蚊帳の外気味、ベースもかなりフレーズ偏重で、両者の駆け引き要素も薄めなのだが、
それを補って余りあるメロディメーカーぶり。
そもそもJ-POP全般で、リズム放ったらかしでメロディだけ練り込むタイプが多いのだが、ここまでメロディの選択肢が多い人も珍しい。
今のJ-POPが洋楽に迎合せずに生き残れるとしたらこんなカタチなのかも。ある意味次代の邦楽の担い手。
菊地の作曲は髭の須藤と全く正反対のタイプで、言葉遊びと押しの強いリフレインだけで縦のノリを生み出すようなライブ質な曲を作るのは苦手なようだが、
意外な型で次々とコンボで繋がっていくメロディは爽快感があり、固定観念で固まったロック脳がほぐれる心地良さを体感できた。
気になるのは、ボーカルとの相性を考慮してか、大風呂敷で潔癖な詞が多いこと。
BGMとして日常のどのシーンにも合わず、聴いてると高速で現実から引き離される。そのための音楽のつもりなのかもしれんが。
もしかしたらタイアップのために曲を書き下ろすスタイルで活動していて、実際提供したアニメやゲームでの曲のハマリ具合はバッチリなのかもしれないが、
タイアップでの使われ方を1曲も知らない自分からするとやはり詞のスケールでか過ぎ感はしっくりこない。
その辺はアニソン全般の弱点なのかも。ドラマタイアップの曲でも、ドラマ観てないと納得できそうもないヒット曲があるが。
ともあれ今作はタイアップと無縁でも充分楽しめる作品では。
声質的に近いRYTHEM辺りのファンに薦めるのが妥当か。大穴すぎた1枚。
(★5個が満点。)

Reviewer:18th. 208-211 名無しのエリー2008.06.23.

1.flare ★★★★
オープニングはriyaの澄んだ声質を活かした、ゆったりと荘厳なアイリッシュ・ポップ。導入用の短い曲だが、作り込んでも良かったような。
大まかな印象としてはエンヤ路線。直接の影響というより、ケルトっぽさが似た雰囲気を感じさせるといった感じ。
ちなみにエンヤにも造語で歌う曲が存在し、十代の頃は「CLANNAD」というバンドに在籍したらしい。
2.Indelible name ★★★★★
引き続きシリアスなストリングスアレンジで周囲を固めた、北欧+ロシアな印象のマイナー調美メロポップ。
Bメロ以降、どこで落ち着くのか予測不能なほど次々に新しいメロディが噴出する贅沢な曲。
短いメロディの反復に次々に動詞を乗せて、聴き手が一緒に口ずさみたくなるような親しみ易いフレーズを作ろうとしたのが「リフレクティア」だとすれば、
この曲は逆のベクトルの美メロを目指したものという印象。
どっちもやれるのは強みだろう。締め方も秀逸。
3.ラクガキ ★★★★★
サビの頭打ちリズムパートのメロディが非常に印象的なミドルテンポのポップス。
半音下りでマイナーコードを2小節並べているのだが、パッと聴きの印象だと部分的にメジャーなメロディに聞こえるため、
一聴目では思わず「今どうなったの!?」と巻き戻して確認してしまった。
イントロのチップビートのとこからもうよくわからんと思っていたが、まさに魔性のメロディ練成。
しかもサビをまとめに入る流れの時には、来た道でAマイナーだったとこがAメジャーにすり替わっていたりして、尚更ややこしい。
詞中の「繋がるメロディ」という言葉が耳に残る。中毒性のある曲。
4.letter ★★★
一気に落ち着きを取り戻し、比較的シンプルなバッキングに様々なSEが絡む形で進むゆったりした曲。
そしてついに恐るべき歌唱力を小出しにすることを覚えたriyaが、水面が揺らぐようなゆるやかなビブラートを披露。
しかし以前に比べ高音発声時にはっきり発音できずに鼻声っぽくなる箇所が増えたような。
詞はいつも通りファンタジー色が濃く、何の歌かもよく分からないし、詞からすぐに曲名が連想できるような印象もあまりない。
5.メトロクローム ★★★
得意のメルヘンチックなトイポップに生ギターが乗るまったりした曲。コロコロと転がるようなサビメロをriyaが歯切れよく歌う。
終盤で曲が様変わりする点以外は王道な曲で、温もりのあるアコギの音がriyaの声やサビの鉄琴と相性よく絡むが、
エレキが優等生すぎるフレーズのため何となくありがちな印象を受ける曲。
6.plage ★★★
ゴスペル調のコーラスワークのみで仕上げた、30秒ほどの繋ぎ曲。初期L⇔Rのアルバムの組み立てを思わせる。
短いが密度は濃い。riyaの低音が想像とちょっと違って面白い。
7.夕空ワルツ ★★★★★
アイリッシュ・トラッドど真ん中のケルトな曲。
丁寧なメロディの周りを、次々と増えていく管弦楽器のオブリのラインがくるみながら展開するが、音数詰め込みすぎにはなっておらず聴き易い。
メロディ勝負の印象が強い菊地が、バランスの良いアレンジでも力量を見せた曲。
要所を締めるシンバルはスティックで叩くヤツじゃなくて両手でジャーンと鳴らすヤツっぽい。
riya自身がエレキギターよりもフルートやバイオリンの音色と相性が良いようで、綺麗な印象の曲。
8.シラタマ ★★★★★
ここで変な方向にそれて、気まぐれな猫の生態を描いた遊び心満載のポップス。
まあ曲順含め気まぐれという事なのだろう。ギャップが凄い。
Aメロが回ってくる度に色んな音を試しているが、菊地は音数や音量で迫力を出して押し切るタイプではないらしく、すっきりした出来。
短めの音符で歌い、時に歌い尻をひるがえすriyaのボーカルがキュート。
9.sign ★★★★
一気にシリアスに寄り戻し、ポツポツと呟くように鳴るピアノを軸に幾つかのSEを絡ませ、張りつめた空気の中で進行する曲。
メロディはかなりシンプル。riyaの声質の特徴の一つである、泣き疲れて観念した後のスケープゴートのような悲愴な声が印象的で、
延々サビが繰り返される構成と相俟って凍てつくような質感を発揮した曲。
10.白い箱庭 ★★★
温もりを取り戻して、優しいメロディと生楽器主体の音で奏でられるゆったりめの曲。
と思ったら後半でドラムが倍テンポになり、熱いギターソロが乗るという、eufoniusらしからぬ展開へ。なんか今回自由だな…。
曲の流れは綺麗だが、ギターソロが上手いには上手いもののベタだったり、riyaにパワーや強弱表現の技術が不足していてアッパーな曲に不向きだったりで、
同じような曲を演る他アーティストと比較しても特に強みのない印象の曲。彼らのバックは技術屋よりもアイデアマンの方が向くのかも。
生のドラマーを起用して色々アイデア出してもらっても結構違うものになった気が。
11.ちいさなうた ★★★
前曲で疾走して行き着いた先は、過去に自主制作で発表した曲の再録だった。ピアノのみをバックに優しく歌う、どこか懐かしい王道ポップス。
Dメロには菊地らしいひねりも。しかしアルバム全体の雰囲気からはやや浮き気味。
スタート地点の確認というやつだろうか。ここまでで自分達の活動を一旦総括して、今後全く新しい展開を見せてくるのかも。
総評.★★★★★
ボーカル・作詞のriyaと作曲の菊地創によるユニット、eufoniusが自主制作でリリースした作品。
riyaの声質を活かした丁寧な曲と、より攻撃的で新しい試みに挑んだ曲とをバランスよく配分している印象で、
メジャーレーベルからリリースされても違和感のない出来。
軽く聴く印象でも綺麗で、色々と考えをめぐらせてあるため聴きしろも多い。しかし基本的に流行りは無視。
またriyaについては、菊地とセットで魅力を発揮するという印象が強かったが、今作では本人が自発的に歌い分けをしている印象も受ける。
アニソンやゲーム音楽を主戦場とするため知名度は高くないが、作品のレベルは高い。
特に菊地は相当な曲者で、全く方向性の違う曲でそれぞれ成果を出している印象。
ケルトの要素が強まったことで世界遺産系の番組に使われそうな感じになってきたが、
どうも名声に興味がないらしく、今回も流通量の少ない自主制作盤でのリリースとなっている。
性格的にひっそりと庵を結んで歌い暮らしたいタイプということなのかもしれないが、
あまり入手しづらいと単純に人に薦めにくい(アニソンの人が自主制作で出してる、という時点で既にあらぬ誤解を受けやすく、説明が面倒くさい)。
普通に良い作品だと思うが本人的には自己満足の域を出ないレベルという事なのか。
伏龍が庵を出る日は来るのか。
(★5個が満点。)

Reviewer:22nd. 378-381 名無しのエリー2009.11.09.

1.scape ★★
映画の導入のBGMみたいな始まり方をする、造語のみの小品。
グリッサンドチックに動くボーカルのラインなど面白い箇所はいくつか存在するが、音の数が多めでなんとなくとっ散らかった印象の曲。
2.アネモイ ~album mix~ ★★☆
弦楽器のアンサンブルで大仰に始まるが、SEを挟んでいつものeufoniusらしくなる。
相変わらずメロディは安定した出来だが、上下に飛び回っていてすごく歌いにくそう。
サビの締め方が過去作とかぶっているが、マンネリ化の前兆だろうか。
間奏ではサビメロに違うコードを重ねてきたりと面白いアイデアも。
3.碧色の空 ★★☆
懐かしい響きのギターイントロが耳に残る、落ち着いたテンポの曲。
ひたすらサビが長い。1分10秒くらい使ってる。Bメロと合体してるのかと思ったがそういうわけでもなさそう。
同じようなセットを繰り返すが、少しずつメロディーを変えてくるので思うより飽きはしない。
珍しく転調はゼロ。それでも綺麗にまとめてくるのは菊地の手腕か。
4.Gebiet ~album mix~ ★★
一瞬コード一発系かと勘違いしそうになるウエスタンチックな曲。
パワーコードの上に9thのコーラスを重ねてきたりする斬新なアレンジがいい。
だが、全般にシンセパッドで音を埋めてしまうのがもったいない。可能な限り音を絞って来るのが長所のはずだったが…
山場をしっかり作ってくる構成だが、その分最後が尻すぼみに聞こえてしまうのがもったいない。
5.elekto ★★★★☆
前作metafysikにはなかった、完全なバラード曲。
全編で鳴っているバスドラの5連打が大胆。世にはびこる、サビが本番+ABメロはお飾りみたいなバラードとは一線を画す。
最初から最後まで手抜きなしの、密度の高い曲。ハナミズキのサビみたいなAメロのスタート以外は文句なしの出来。
6.そのままの僕で ~Piano solo~ ★★
同曲のピアノアレンジ。インスト。riyaは歌わない。というかriya完全に蚊帳の外。
元が1コーラスしかない曲なので飽きかけたときに終わってくれてありがたい。
7.リフレクティア ★★★★★
普段から長いサイクルで重たいメロディの曲を書く菊地が、最長で4小節単位のキャッチーなフレーズだけで組み切った意欲作。
この手の曲は往々にして飽きやすいのが世の常だが、Aメロ→Bメロ、Bメロ→サビでそれぞれ違う転調をするのでいい感じ。
普段は歌詞と曲が分離しがちなeufoniusだが、この曲ばかりはriyaの作詞が曲の意図を汲み取ったと見える絶妙な言葉をチョイスしてきた。
Cメロの電子音かわいいよCメロの電子音。
8.Angel on tree ★★★★☆
短調と長調を言ったりきたりするメロディーが不思議な曲。
ふわふわしてとらえどころがないメロディーに呼応するように、偶数拍目の音をスタッカート気味に鳴らすピアノがいい感じ。
アコギのソロもどこか懐かしいような、寂しくなるような、そんなラインを突いてくる。
ラストは表情をガラっと変えてスローテンポになるが、この仕掛け自体Tr.4とかぶるのが惜しい。
9.Aporia ★★★★☆
急に工場の中のような無機質な電子音に満たされる。今アルバムは生楽器主体だっただけに妙に新鮮。
ボーカルの声もほぼエコーがなく、一気に冷たくなった印象。ディレイをかけたエレキのサビも妙に遠くで鳴っているよう。
そしてサビのコードがめちゃめちゃ気持ち悪い。ハモリのピッチさえ合っていれば…!
10.phosphorus ★☆
今度はやけにエコーがかかり、空間的な曲に。
ディミニッシュのコードがアニソンくささを増幅して、なんだか逆にカッコ悪いのが気になる。
ストリングスの絡みとかもありがちで、派手な割にいまいち純粋に「いい曲!」とは言いにくいか。
11.空想庭園 ★★★
ほぼアコギとスネア代理のノイズで構成されるあったかい曲。Tr.9から寒色系の曲が2つ続いたので対比がキマっている。
全体に展開も緩やかで起伏も少ないが、クールダウンとしては十分なレベルか。
総評.★★★
なんかアニメ「true tears」のイメージアルバムっぽいeufoniusの2ndアルバム。
直近のシングル2作が不作で、アルバムではどうなるやらと心配したが水準を割り込むことはなかった。
相変わらず謎の転調を使いリスナーを撹乱させてくる菊地だが、今作ではシンセパッドの多用で常に何かしらの音が鳴っている状況に。
響きは安定したがその分過去に見られたダイナミクスの大胆な推移が少なくつまらなく聞こえてしまう面も。
また、自主製作アルバムだったメトロクロームが色んな方向性の曲が入っていたのに比べるとレンジは狭め。
とはいっても世のポップスに比べれば多彩だとは思うが。
最近のR&Bや着うた系に食傷気味になっている人にこそ聞いてほしい一枚。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)