Reviewer:24th. 329-333 名無しのエリー2010.11.21.
1.Hello Sadness ★☆
イントロからこのシンセの古臭さは一体・・・。なんか初代プレステのRPGのラスボスの部屋でかかってそうなチープな壮大さ。
発音がヌルッとしていて早口が苦手な中村が、サビで早口のメロディに挑戦。イマイチ。何で自分の不得手なメロを作ったんだろう。
ベタだし、勢いしか聴くべきところがない。と思ったらその勢いもAZUKIの詞のハマりの悪さにより2コーラス目で死んだ。
詞曲アレンジと、三者三様に連携が取れていない一曲目。
ところで曲名は詞中にも名前が出てくるサガンの小説だが、だから何だという感じ。これについては総評で。
2.百年の孤独 ★
スローで泥臭い曲。おお、バンドサウンドっぽいぞ!メロディも特に新しいとか優れてるわけでもないけど丁寧。
と思ったら大サビで前触れなくしれっと謎のテンポアップを見せる。不可解。これ初めて聞いて「えっ」て思わない人いる・・・?
これって普通にダメだろ・・・。「練りに練った結果こうなりました」もまったく無し。
単純に手数が増えて、打ち込み故の無機質さが目立つのも・・・。生奏者呼んだ方が良かったと思う。
そしたらテンポアップにも疑問を呈されてマシになった可能性もあるし。
3.花は咲いて ただ揺れて ★★★☆
イントロのアコギとピアノ、キーボードの絡みが美しいバラード。中村はこの曲みたいに音を長く伸ばして歌う曲が単純に合ってる。
歌詞も個人的な感情を歌うよりはこういう感じの、現象を切り取って感情表現一歩手前で止めるようなものの方がグループの雰囲気ともマッチ。
まあそれでも2コーラス目の締めの歌詞は失笑寸前。タオル?1曲目もそうだけど、AZUKIってこういうメロディとの関係を考えない粗雑な歌詞を書く人だっけ?
ギターソロも2箇所あるけど前半くらいキーボードに丸投げしても・・・そもそも必要?
4.Elysium ★★
躍動感の薄いドラムに対して色々ゴテっとした上モノの組み合わせのイントロが何だかなーなベタなミディアム曲。
「愛したら裏切られる」とか「永遠なんてない」とかの歌詞は一定の層に好まれそうかも。中学校二年生あたりとかに。
ていうかタイトルからして・・・。しかも曲自体がタイトル負けしてる気も。
5.Doing all right ★★★★
ドンドンパンッという手拍子入りのリズムが印象に残る、堂々とした明るい曲。ライブ用?
盛り上げるには刺激は少なめだが、1、2曲のように基本的に伴奏に大きな欠陥は無し。
サビが2段構えになっていて、力強いリズムを主軸にしたパートと、クールダウンする様な憂いを帯びたパートの対比が凝ってる。
特に後半部分はメロディも良い。が、終盤ではそれをまるっきり捨てて締めに入る。
盛り上げ役の曲として徹底させたいという感じは受ける。英断。
今作中では珍しくギターソロが印象に残りやすいというか、まだ必要だと思わせる部類に入るかも。
6.ON THE WAY ★★☆
短調ながらも爽やかなスピード感があり、ポップな曲。
中村はボーカルとしてレベルが高いとはあんまり思わないが、コーラスは独創的で綺麗。
と思ったら歌詞がアレレな感じ。終電も過ぎたような深夜に老婦人っている?
7.Stay ★★★★
ピアノ中心から徐々にバンドサウンド編成になっていく、ゆったりとしたバラード。
珍しく中村のボーカルが映えるサビが核。
波のようにメロディが上下しながら、その時の解釈次第でリズムを崩して自由に歌えるような作りになっている。
声は太いがリズム感覚の良くない中村とかなり相性が良い。
これで打ち込みドラムさえこんなにも淡々としてなければ、と惜しくなるけど。
8.日々のほとり ★★★
和やかな雰囲気のミドルテンポ曲。アコーディオンやベル、コーラスにギターと優しい音を集めたアレンジの出来が良い。
歌い口も比較的柔らかになってる。でもAメロに入る時の転調に何か一展開すっ飛ばしたような違和感。
音を多目に使っといてそのほとんどが打ち込みだが、この曲はこれで十分。
9.夢のひとつ ★
奇妙な浮遊感(モッサリ感?)のあるミディアムバラード。
お得意のパターンかと思いきや、1番サビ終わりから2番Aメロに入る時の転調がヤバい。いくらなんでも無理やりにも程がある。
2曲目とかでも思ったけど、普通に聴いてて戸惑わない人はそういねぇだろってレベル。
思えば前作『LOCKS』の時にも転調がムリヤリな曲はいくつかあったが、
その時は中村の暴走を古井のアレンジとAZUKIの作詞がその転調を説得力のあるものに聴かせるようなフォローに回って、
その構図の面白さを評価したくなる曲はあった(『最後の離島』『世界はまわると言うけれど』『ふたり』あたり)。
この曲はそれすらできない。単純に転調がヒドイ。
「ああこれは主人公が夢からふと醒めた瞬間を表してるんだな」みたいにこじつけるのも無理がある。それくらいヒドイ。
10.Fall in Life ~Hallelujah~ ★★
今作中で一番ポップでスピード感のある曲。ごく普通の軽いビートロックミーツガネクロといった趣で、見どころは特にない。
けどこれはメロディは割と良好に思える。やっぱアレンジが薄いのが痛い?
サビとかありがちなりに良い感じで終わったなと思ったら、蛇足的な締めのメロがもう一つ。これは余計。
11.Rainy Soul ★☆
「月夜に響き出した 狂った旋律のピアノ」
ここまで歌詞を乗せておきながらすっごいありがちな単音ピアノが鳴る。なんか本当にアレンジ気が利かないな・・・。
本当にメチャメチャ狂った旋律乗せたり、逆に意表をついて一切ピアノ鳴らさなかったりとかそういう選択肢は・・・。
最後のフレーズのエコーとかも気持ち悪くて何だコレ。中村イジメ?
ABメロは暗めのメロディ、サビは明るめのメロディという対比を効かせた曲かもしれないけど、作詞は暗いまんまだわ、編曲はどっちつかずで煮え切らないわで、
本格的に意思疎通して制作できてないんじゃって気分になる。
12.恋のあいまに ★★★★★
ネオアコの雰囲気も漂う、ゆったりしたラストナンバー。
それのみで完結しそうな哀愁漂うAメロから、新たな仕切り直しのように歯切れの良くなるBメロへの繋ぎが面白い。今作で一番メロディの運びが良いかも。
最後はサビ半音上げをもう一度繰り返す雰囲気に一瞬なるが、実際にはボーカルだけが去り、半音上げの演奏だけが残る。
この歯がゆさが、歌詞のテーマにも通じる、恋のままならなさ的なものと捉えられる気もする。絶妙。
総評.★★
正直言えば、これが10周年を今にも迎えようとしている(今作発売時点で)プロの作品なのかと思ってしまった。
全体的に平凡なポップスの範囲で収まりながら、詞曲アレンジのいずれにも、メンバーの力量を本気で疑うような部分が存在する。特に古井は今作の戦犯。
バンドサウンド重視っぽい曲が多数ある中で、それらをすべて打ち込みで再現している。
生は岡本のギターくらい。キーボード担当が2人もいるのに、恐らくピアノすら打ち込み。
別に打ち込みでバンドサウンドを構築する選択肢は全然あっても良いと思う。でもその出来が良くないのなら話は別。
こんな半端な仕上がりになるくらいなら絶対打ち込みで支配しない方が良かった。
実際今作の中には、部分的に生音にするだけでも出来がグッと良くなったはずだと感じる曲がいくつもある。
そこまでしてこのレベルの打ち込みに依存する理由がよくわからん。いくらなんでもそこまで予算無いってことはないと思う。メンドクサイだけ?
加えて今作では、これこそがガネクロサウンドの華とでも言いたげなくらいギターソロが多く盛り込まれているが、音作りとか入れ方とかダダ被り。
古井か岡本かどっちが考えてんのか知らないが、本当にギターソロ聴かせる気があるんだろうか。かなり疑問。保守的過ぎる。
下手ではないと思うが手数の割に印象に残らないし、やればやるほどうんざりするって感じ。
正直この路線で行く限り、いくらガネクロが中村を中心としたボーカルグループだとは言い張っても、
中村のボーカルがどれほど上達しようが作曲が改善されようが関係なく先の見通しは暗いと思う。
個人的には他の何がなくとも中村の独特な声さえあればそれがガネクロだと感じるので、他にも無難な範囲で色々手を出してみたら良いと思う。
古井は綺麗な音色作りに関してはこっそり得意っぽいし、R&Bとかヒップホップとか今より打ち込みに依存したジャンルの曲をやっても良いんでは。
長年のファンからは間違いなくブーイング出ると思うけど、今のままだとあんまり成長性が見えないので。
ここからAZUKI七の詞について感じたこと。
彼女の詞の特徴のひとつに、作家の名前などを盛り込むことが多いことが挙げられると思う。
個人的に、彼女のこの手管が好きになれない。さあ深読みせよと言わんばかりというか。
文学用語を詞に入れるといえばバインの田中あたりが筆頭に挙がると思うが、彼の場合そういう時は大抵の場合アホなダジャレをかけてたりするので、
「まあ田中はいつもこんな感じだし、詞わからなくて良いや」と詞を深読みしないリスナーには思わせて、とりあえずそこで一線引けてる気がする。
AZUKIはそういう仕掛けがない。キーワードを出して放りっぱなし。
今作でもサガンやデュラスが出てくるが、詞世界を厚く見せるための小道具的な使い方。詞を深く理解したいなら彼らの作品を見てくださいねー、というのが前提。
自分はあんまり詞の分析に情熱をかけない方なので、彼女のこの傾向は文学用語を自在に使う私カコイイ的な自己満足的どころか、手抜きにも思える。
文学用語と抽象的な表現を多く盛り込んどけば、後は熱狂的なファンが
「さすがAZUKIさんの詞!深い!スゴイ!ちょっと疑問もあるけど、そこはAZUKIさんなりの考えがあるんだろうな!」
って崇拝してくれるだろ、みたいなことを思ってる可能性を、今作の詞を見るに捨てきれないというのが正直な気持ち。
もちろんAZUKIなりにちゃんと考えて詞を綴ってる可能性の方が大きいが(本来そうあるべきだが)、
そうだったとして、文学用語とか小手先を使うよりもっと何とかすべき根本的な問題を放置したままに思える。
前からこんな人だっけ?昔はもっと良い詞を書いてた気がする。
色々嫌なこと書いたし実際今作はスゴイ退屈に感じたけど、挽回の余地は全然残ってるし、
次作は改善されてることを期待して、以後も自分は彼らを聴いていくと思う。こんなスタンスだけど。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)