アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : こめいじひろや。

Reviewer:21st. 54-56 名無しのエリー2009.03.05.

1.the lost garden(studio rec version) ★★★☆
いきなり低い囁きで「in my lost garden(失われた庭で)」と始まり、
そのまま低い囁きで「with bled(血を流しながら)」と終わる、冒頭からズンドコに突き落とされる英詩曲。
そんな低い声で「you're so pretty(君はとても綺麗だ)」なんて歌われても、ねぇ。 途中、僕はまだ正気かい?と問い詰めた挙句に太陽の下で土に還るし。
確実に聴く人を選ぶであろう、このアルバムを象徴する一曲。
2.acrobat(make me green) ★★★★★
前曲とは対照的な、三拍子のザクザクとしたギターストロークに救われる。
決して歌詞は明るい訳ではないのだけど、アイリッシュなバイオリンも相俟ってノれる一曲。
ふと気が付けば口ずさんでたりとかして。
3.夢のかげ ★★☆
特徴ある前後曲に挟まれて影が薄い。歌詞は相変わらず内向的だが、このアルバム中ではまだマシな方。
ヘヴィな次曲までの箸休め。
4.SWEET RAIN ★★★★☆
平和な、何もない街にやってきた神の子キ×××が、「"奇跡を見せろ" "血祭りにあげろ"」と退屈に喘ぐ群集によってはりつけにされ、
「錆びたカミソリでつばさを裂かれ 血の気が失せて」ゆく、物語風超問題曲。
「"気がふれた世界で正気を保つこと それこそが狂気だ"と誰もがうそぶく」という言葉がひたすらに痛い。
そして歌詞カードに吐露された、声にならない叫び。外界に覚える、静かな怒り。こんな曲よく収録できたな…。
5.星の埋葬 ★★★★
ノスタルジーな3拍子曲。このアルバムのクライマックス。
それなりに展開を見せてるし感動的にしたいのは分かるんだが、9分曲でアウトロが4分以上ってのは流石に冗長…。
そのままアルバムが終わるかと思った。いや、とってもいい曲なんだけどね。
6.花が咲いたら ★★☆
アイリッシュな3拍子曲。珍しく平和に「君の中で眠り続けたい」と歌いこの曲はあっさりと。
7.ライラックの庭(album version) ★★★☆
岡村美央嬢のバイオリンがとても綺麗。徐々に音が重なっていく展開もいい。
流石にシングル曲なのでズンドコではないけどもやっぱり歌詞は内向的。どこまでネクラなんだコイツ(褒め言葉)
8.ghost ★★★
またしても3拍子曲。個人的に3拍子が好きだからいいんだけど。
「暴かれた隠れ家 八つ裂きの花束 静かに気がふれてゆく神の子供たち」ってシングル曲なのにまたさらっと問題発言を。
曲が暗くないのが救いか。
9.メランコリー(part2) ★★★★☆
「メランコリー(part1)」との同詩異曲。最後まで3拍子。
破壊的音圧の打ち込みバスドラムが響き渡りつつも、白鳥麻衣佳のコーラスも相俟って、静謐な賛美歌のよう。
総評.★★★☆
2001年リリースの1st fullアルバム。一旦廃盤後、移籍先で2004年に再発。
彼の、閉塞的世界観の最高到達点。とにかく内向的。そして不器用。
この暗さは、復活後やたら健全になった"沖縄のユタ(巫女)"某あっちゃんや腐敗した世界に堕とされた挙句休眠中の"神の子"某束に通じる面もあるが、
己の感情を叫び痛みを叩きつけてなぎ倒す前者や世界の嘆きを執拗に訴えかけて打ちのめす後者とは異なり、
彼は外界を上手く往なせない自分自身と愚直なまでに向き合い、喚き嘆くでもなく、もがくでもなく、ただ己の悲しみを、世界の闇を、絶望すらも淡々と紡いでゆく。
また、サウンド面では無骨でとにかく低音を協調する音作りをしていて、それが救いようのなさと閉塞感を助長している。
ドラムまでもが独特の暗く濁った音色。あと所々で若干アイリッシュなのは尊敬するHEATWAVE山口洋の影響か?
…という感じでハマる人はとにかくハマるとは思うが万人にオススメはできない典型的スルメ盤。
彼の他作品が気に入った方は是非。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:20th. 290-292 名無しのエリー2008.12.27.

1.daydream ★★★★☆
タイトルトラック。新曲。シンプルなアコギをバックに、優しい声が沁みわたる。
サビで遠くから響く声と重なる流れがいい。
2.こころ(new version) ★★★☆
「賛美歌I」より。
呟くように唄われる低音が中心のメロディは高音を張り上げる流行の音楽とは対極だけども、彼の声はそこが魅力なんだと思う。
3.僕が死ぬまで(new version) ★☆
「hallelujah」より。
余計なエコーで強調された声の擦過音(特にS行)が耳に障る。アウトロのリフレインの意図も不明。元曲はスルメだったんだが…
4.メランコリー(part1 new version) ★★☆
「ghost/ライラックの庭」より。スタンダードな古明地節。可もなく不可もなく。
余談だが幾つかの歌詞からも分かる通り、彼はどこまでも真摯で、だからこそ物凄く不器用なんだと思う。
5.君の声 ★★★★★
「hallelujah」より。シンプルな宅録。
通常であればマイナスである筈の、時折混じるノイズや崩れるリズムでさえも彼の不器用な言葉を胸に響かせる効果的な要素となる。
「撃鉄を起こしたまま眠るのは怯えてるせいだよ」
6.欲望(new version) ★★
「賛美歌I」収録の名曲。
低く囁くように唄われる祈りと想い。そして決意。"POPS"でこんなメロはアリなのかと、とにかく低い声に衝撃を受けた憶えがある。
が、突然割り込むアタック強めのドラムと金属音(ハーモニカ)が耳に障って仕方が無い。おまけに付け加えられた最後のサビ(高音張り上げ系)も蛇足。
感動的に盛り上げたいのは分かるんだけど、個人的にはシンプルな元アレンジの方が好き。
7.See Rosalie burns down this world(new version) ★★☆
「賛美歌I」より。中途半端にゴテゴテとしたアレンジが息苦しい。
いや、元曲がどうしようもなく絶望的な世界観だっただけに、中途半端な救いは用意しない方がいいと思う。
8.tears in the morning(new version) ★★★★☆
「hallelujah」より。優しく幻想的なストリングスと囁く声が賛美歌のよう。
そして静謐な祈りを内包したまま、静かに幕は下ろされる。
総評.★★★★
2003年リリースの、新曲+過去作品(含リアレンジ)収録のミニアルバム。
自我と世界の境界線を極限まで凝視していた宅録音世界から一歩外に出て、前盤hallelujahで垣間見えた、深呼吸を始めた彼を前面に押し出した一枚。
内面世界を見つめているのは相変わらずだけど、どこかに救いが用意されているというか、想いの丈を「君」に伝えようという意志を感じるというか。
音が変わるだけでこんなに印象が変わるとは。
故に感じるのは、生々しい温もり。ざらついた、でも柔らかな声。ただ暗く静かなだけではない、そこに在るのは、力強さを秘めた願い。
兎にも角にも、邁進する宵闇への祈りdaydreamで始まり静謐な夜明けへの祈りtears in the morningで終わる、
白昼夢かと思いきや気づけば夜を越えて朝を迎えてたよ!的内面小旅行を体感できる一枚。是非お試しあれ。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)

Reviewer:18th. 358-361 名無しのエリー2008.07.15.

1.想いが言葉に変わるとき ★★★★★
アコギで鳴らすたった4つのコードストローク。これだけを武器にして、現代ポップの戦場に突っこんでいった「孤独の音楽」。
「詞」と「歌」だけの肉弾戦で、シンガーソングライターはどこまでいけるのか。少なくともこの時この曲で、彼は想いを歌に変える事に成功した。
2.クロエ ★★★★
自分を変えるのを嫌がって、世界を変えようともがく不器用な君を全部許す歌。
それでいいよ 君を見てた 君が好きだ
アコースティックなアルペジオに、遠雷のように鳴るファズギターが優しい。
3.素晴らしい嘘 ★★★★★
3曲目にしてバンドサウンドが全開になって、このアルバムの最高到達点へ。
「素晴らしい」のは手に入れるたびに重ねていく嘘のことなのか、詩中で繰り返される「僕に出来ることを考えてた」という過去形の言葉自体か
この世界を君に届けたいという自分自身への言葉まで嘘なら、この曲はやはり「素晴らしい嘘」でいいと思う。
4.dialogue(can you hear me?) ★★★★
「君の秘密を打ち明けてほしい」とハイペースで呼びかける言葉が、
「ミスってない、ミスってなんかない」少しずつ「ただ友達でいたいんだ」自分を追い込んで、
「もうだめだ さよならだ 君がその傷口を隠し続けるのなら」相手へ責任を擦り付けて自らを追い込んでいく。
1:14にガタンと世界が崩れるような音がメタファーとして秀逸。
5.太陽のまばたき ★★★
ピアノとアコギのアルペジオで一気にテンションが落ちたのだが、この孤独感はまったくぶれない。曲調の暗さゆえに落ち着く、夜のような曲。
夜には目を閉じる、暗い時には目を閉じる、歌っているのはそれだけ。
6.i miss you(from my bedroom) ★★★★
3拍子のアコギでベッドルームから「おやすみ、君がいなくてさみしいよ」と唄い続けるだけのネガティブソング。
校内放送のような音の響き方が、ベッドルームと言うよりも自分の殻の中から言葉を発している印象を与える。
「いつになったら僕は君に会えるんだろう」間違いなく、自分からそこを出なければ会えないことを知っている。
7.嘆きの天使 ★★★
たいていの場合「天使」と歌うときは女性の比喩になっているものだが、この曲も例にもれず。
ドラムや鍵盤隊を用いた明るい曲。「泣き喚いてた、傷ついた天使が光を感じていった」という前向きなはずの曲。
けれどどうしても最後の「すれ違うばかりの世界だったとしても」の一文が、救いには聞こえない。
8.waltz(for the star) ★★
♯6と違い、メジャーなコード進行で、明るく進む3拍子。アコーディオンや重なるアコギがヨーロッパの街角のよう。
「いつも探していた」壊れかけてまで、夜明けまで探した君には、最後まで会えない。
「いつも探していた」同じリズムでひたすら繰り返す彼はすでに。
9.無知の涙 ★★★★
まだ足りないと あなたは言うけどもう要らないと僕は思う
君に刺さるように(実際に刺すような悲壮感を持って)歌う言葉は 君のために、君を突き放す言葉なのだろう。
相変わらず暗く穏やかに進む曲だが、とても暖かい。
10.孤独の音楽 ★★
悲しみと手を取り合って歌えるならば、それはもう愛と勇気だけが友達なのと何の変わりも無いのかもしれない。
夢から覚めたらこの歌を歌うよ、と彼は言う。
目が覚めた世界に彼女が在るのかは読み取れないタイトルチューン。
11.君を見つけたよ ★★★★
オリエンタルな雰囲気のアコギと詩世界でICOのような空気を描くラストチューン。世界との結び目を見つけたと、それは君だったと彼は歌う。
“君”は、特定の女性ではなく、孤独の音楽に触れた人たちのことなんじゃないだろうか。
総評.★★★★
孤独の音楽は、孤独を感じている人に手を差し伸べる作品ではない。孤独のシンガーソングライターが孤独を歌っただけの作品である。
しかしながら、落ち込んでいる人の背中を押すような応援歌とは全く逆のベクトルで、誰かを孤独から救うことが出来る稀有な作品である。
僕も孤独だよ!と露骨に声をあげるような愚策を用いず、
ただ他にも孤独な人の存在を知らせるだけの、それだけのことで世界と彼とをつなぐことが出来たマスターピース。
美しいメロディだけを目当てに聞いても、きっと印象に残らない。
このアルバムを偶然手に取って、部屋に戻ってヘッドホンをかけた人だけに刺さる。そういう音楽。
(★5個が満点。)