アルバム全曲レビュー * アーティスト名 : ひげ。

Reviewer:14th. 853-855 名無しのエリー2007.05.29.

1.白いバラが白いバラであるように ★★
シンプルなメロディとコード進行、皮肉っぽい歌詞が印象的なダルな曲。
サビでギターが爆音になり、メロディもオクターブ上に移行するわかりやすいエモ・ロック。
バスドラの音が小さかったりと、ゆったりとしたテンポを支えるほど演奏に芯がなく、単なるくどい曲に聞こえてしまうような。
方向性は間違っていないが、このままの状態では成立しないか。
2.髭は赤 べートーヴェンは黒 ★★★★
怪しいコーラスがスパイスとして効いた曲。スリラー色のあるギターも面白い。
メロコアみたいな硬質な音のベースが意外。骨太なロックというより、雰囲気重視の感覚的な曲。
3.ダーティーな世界 ★★
ぎこちないアルペジオと滑らかにうねるベースが印象的。
サイケなムードを出そうとして出しきれなかったような半端な曲。
ムードづくりに依存しすぎて現実的な技術がおろそかになっているようなハッタリっぽい印象が。
4.右脳の片隅にて ★★
やはりぎこちないアルペジオと鉄琴(?)の音に乗せて妙な詞で始まるAメロが軽く狂気じみている。
しかしサイケという程でもなく、メロディもオチが分かり易すぎて深みが足りない。
グランジ風な鈍いギターの後奏もあまり必然性を感じないような。
5.ギルティーは罪な奴 ★★★★
分かりやすいアップテンポなロック。かと思ったらコーラスがいい味出してる。
ギターは節々で危なっかしいが、ベースが主軸となって曲を上手く支えている。
ドラムはバスドラやスネアに比べシンバル類がうるさすぎて輪郭が曖昧か。
ポップでストレートな面とサイケな面とを組み合わせた二面性が魅力。
6.首謀者に告ぐ ★★
イントロの作りといい、メッセージ性といい、懐かしい初期レピッシュを思わせる曲。
cuneの「Lion17」を聴いた時も「ユニコーン!?」と思ったが、時代のサイクルなんだろうか。ギターは珍しく歯切れの良い刻みも。
しかしベースのフレーズは全般的にありがちか。聴きやすいが、大きなアピールポイントは無い。
7.Acoustic ★★
オリエンタルな独特なムードの曲。
「このメッセージ聞こえるかい」のフレーズをしつこく繰り返すサビとの相乗効果でさらに怪しく宗教的なムードに。
間奏のギターの掛け合いで単音弾きの方がかなりアバウトなプレイなのがまた怪しい。
さらに単調にして異常に長いアウトロと、異色づくめの曲。
8.アメニウタエバ ★★★
グラム路線の陽気なロックンロール。今作で最も演奏に芯があり、一体感が感じられる曲か。後の髭の原型といえる。
あっさり終わってしまって物足りない印象。
総評.★★★
須藤のカリスマ性にバンドが依存気味な、髭のメジャーデビュー盤。
サンキュービートルズというよりサンキュージョージハリスンというイメージの作品。
詞も演奏も雰囲気重視。ボーカルもまだ太くなく、ドラムも特に良いビートを出すでもなく、といった具合で演奏技術に確固たるものが感じられないので、
個人的には今一つ安心して聴けない感が。
シンプルな曲調がウリとはいえ、メロディもアレンジもかなり単調なので、感覚的な聴き方で楽しめる一部の人以外は飽きるかも。
曲自体が好きで技術は二の次、という人にとっては今の髭となんら変わらない魅力がある作品。
しかし、バンアパあたりのファンからすると無駄だらけな印象かも。
(★5個が満点。)

Reviewer:14th. 710-712 名無しのエリー2007.05.19.

1.Mr.アメリカ ★★★
オープニングらしい陽気なロックンロール。
シンプルな歌メロをどっしりと中心に固定させ、コードのほうが周りを回るロックらしい作り。
奇抜な要素や個人のバカテクで気を引くような曲ではないが、聴きやすいのでつかみとしては充分か。
2.ロックンロールと五人の囚人 ★★★★
独特なうねりを効かせたベースのフレーズが印象的な曲。サビのドラムフィルに合わせたうねりベースが妙に息が合っていて面白い。
ロックらしい歪み声のボーカルは強力。さらに語感の良い歌詞が乗り、結果として初期オアシスを歯切れ良くしたような個性が出ている。
特にずば抜けた技術の持ち主はいないが、結果バンドが変な方向にそれずに、一体化した芯の太いロックをやれているような。
3.ネアンデルタール Punk Fuck Off! ★★★★
70年代的グラムロックに得意の歪み系ボーカルがマッチした曲。
歌メロがやりすぎな程曲の中心に組み込まれていて、歌だけバラ売りでも聴けるようにしとこう的な保険要素がない正統派ロックンロール。
飽きる人は飽きる、と割り切った作りの曲。
4.せってん ★★★★★
個人的にはこのバンドの説得力の中核をなしているように感じた曲。あくまで由緒正しい正統派ロックなミディアムスロー。
タムを組み込んだリズムパターン、少しづつ表情を変える2本のギターと、新鮮さは無いが密度の濃い王道な演奏。
ここに独特の言葉選びが面白いボーカルが乗ってバンドのカラー完成。歪み系のボーカルがサビの高音で聴かせる綺麗な声も印象的。
正しい意味で歌が中心にあるバンドだと感じる曲。
5.ハートのキング ★★★★
ダルなドラムパターンがサイケな曲。
やはり一本芯が通っており、メンバー間で目指すゴールが同じ場所にあるような以心伝心さが感じられる。
自分たちが消化できないような遊び要素は入れない硬派な作り。
ベースは忠実に曲を支える部分と、ベースならではの音質を活かしたフレーズを弾きに回る部分を上手く分けたプレイ。
このバンドらしさを最後に決定付けるのはやはり独特の語感の良い歌詞か。
6.MASSIVE ATTACK ★★★
前曲のサイケなムードを引き継ぎ、味のあるリフを軸に何となくけだるいまま乗りきるインスト。
トレモロしてみたり、変なタイミングでシンバルをうるさく鳴らしてみたりとある意味70年代的なアバウトな曲。
7.デーモンサタン ★★★★
とぼけた調子で「デーモンサタンゆーらゆら揺れてる」と歌うサビは思わず口ずさみたくなる出来。
むしろ敢えて口ずさんで、友人に「何歌い出したのお前!?」と突っ込まれたいような。
ミスチル等が持つポップス的メロディアスとは逆のベクトルで結果的にそれに匹敵するロックのキャッチーさを体現した曲。
スカスカしているようで緻密なAメロもカッコイイ。
8.ヒサシ.カリメロ ★★★
Aメロからあっと言う間にサビの、シンプルなUKロック。
基本的に彼らの詞には深い意味はないように感じるが、この曲は何となくメッセージ性も感じられる。
曲自体は特筆するほどではないが、外さない手堅さはあるので安心して聴ける。
9.壁に話しかける普通の朝、僕はただの男 ★★★
虚ろなピアノと低音で固めたギターで重苦しく始まり、そこに語りが乗るサイケな曲。
語りでありながら文脈につながりが無く、
あらゆる場面で思ったこと、口にしたことをいっぺんに表現しようとしてごちゃ混ぜになってしまったようなサイケな倒錯感がある。
音色の違うドラムが途中から入ってきて初めてツインドラムの効果を認識した。
10.ランチ ★★
スムルースの曲にブラー的なコーラスを乗せたような、あまり噛み合いの良くない曲。
粘り気のあるギターは面白いが、全体的に彼らにしては浮ついている印象。
11.Good Feelin ★★★
「リボルバー」の頃のビートルズを思わせる曲。
ツインドラムがステレオで聞こえる心地良い曲。ボーカルの引出しも豊富でいい感じ。
最初に期待したよりメロディがあっさりしていて、若干肩透かし感が。
総評.★★★★
モッズ、グラム、サイケといった70年代ロックの要素だけで仕上げた、かなり図太い芯が通った王道ロックンロール。
団結力は抜群で、個々の奏者が勝手に「俺はこんなのも弾けるぜ」的に自己顕示欲を出す場面がなく、すべてバンドのためのプレイになっているように感じた。
今の方向性に限ればボーカルの能力も他バンドに比べ傑出しているのでは。
民生や吉井が回り道しながら辿り着いたシンプルなロックスタイルまで、寄り道せずにまっしぐらに向かっているようなバンド。
その分得意分野はかなり限られており、今作でも彼らのロックンロールが最も魅力を発揮すると思われるミドルテンポの曲がズラリ。
スピードをウリにした曲も、ポピュラーなスローバラードもない。さらにはっきりした主張も、あたりまえに共感できる詞も少ない。
あくまでオーソドックスなロックスタイルのため、目新しい要素もなく、ツインドラムも音的に必然性は弱い。
聴き手によっては同じような退屈な曲が並んでいると感じるかもしれない作品だが、少なくとも音は商業主義ロックでは無い。
数少ない武器を磨きながらここまで戦い抜いて来た骨太なバンドであることは間違い無い。
邦ロックのビート系や歌謡曲バンドには飽き飽き、という人にならお薦め。
(★5個が満点。)

Reviewer:16th. 349-352 名無しのエリー2008.01.13.

1.黒にそめろ ★★★★
アクモン的なタム捌きから入り、パンキッシュ・グランジとでもいうべき展開をみせる曲。
コードの鳴りも手伝って、サビのギターはまとわりつくように重い。
1st時に比べると音の輪郭がはっきりしており、サイケ色が薄れた印象だが、演奏の不出来をごまかす側面が無くなったという点では進化といえるのでは。
詞は攻撃的かつ自虐的という、今作全般の詞世界を象徴する出来。
2.ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク ★★★
王道グラムにパーカッシヴな遊びを加えたような曲。
ドラムのフィルを入れるべき箇所をパーカッションで代用しており、聴き手をはぐらかすようなコミカルさが出ている。
押韻によるリズム感や人を小馬鹿にしたようなヤギ風ビブラート等、取り敢えずテンションの高い曲。
3.GOO ★★★★
非常にシンプルなメロディでコンパクトにまとめたパンキッシュな曲。
キャッチーなコーラスが乗り「Get up!ポルターガイスト」と繰返すサビは思わず口ずさみたくなる出来。ていうか起こすなよ…。
ノリノリになってると知らぬ間に背後に恐怖が忍び寄ってそうな、今作らしい二面性のある曲。
4.溺れる猿が藁をもつかむ ★★★★★
グランジ風ギターをバックに展開するアッパーな曲。教祖と信者のような、コーラスとの掛け合いが肝。
単なるハーモニーに留まらないがツインボーカルとも違う、独特なコーラスの立ち位置が面白い。
他人も自分も否定してしまっているが卑屈さや厭世感は無く、ぬかるみ爆走系とでも言うべき喜劇的な疾走感を生み出しているエンタテイメント曲。
5.ドーナツに死す ★★★
メロディはシンプルだがリズミカルに韻を踏みながら曲に乗ってくるためテンポの良い曲。
音作りがクリアになった分、色々と想像を膨らませる余地が無くなり、曲が似通って聞こえる面が出てきたか。
毒+キャッチー+パンキッシュ+へヴィという組み合わせに何となく聞き覚えがあったのだが、この曲で思い出した。
THE WILDHEARTSだ。「FISHING FOR MORE LUCKIES」の頃の。
6.100%太陽 ★★★
キャッチーなメロディが多い今作にあって異色な、カート的オチ不透明サビメロが印象的な曲。
今作中唯一のラブソング(とおぼしき曲)だが、粘着質なアレンジにすることでアルバムのトータルカラー内に自然に収まっている曲。
7.ボニー&クライド ★★★
バンド自体は気持ち良いビートを出すようになったが、曲自体はかなり普通。今作中最もクセの無い曲か。
ロカビリー調なサビのベースがナイス。
明るくポップな曲調だが、須藤の詞と斎藤のギターが鬱な要素を差し込んでくるため、突き抜けた明るさにはならない。
ある意味髭バランス。
8.B級プロパガンダ ★★
やはりパンキッシュでキャッチーな曲、かと思ったらサビメロが一癖ある曲。ギターソロはピロウズ風。
インストパートがあっさりしすぎていて物足りない部分も。
フィリポのドラムはシンプルで思い切りのいいハッキリしたプレイで、悪くはないが飛び抜けて良い部分もない印象。
他曲のドラムも似た感じ。だからコテイスイが必要なのかも。
9.ダブリン ★★★★★
ごくありきたりなイントロで入り、今作の例に漏れないキャッチーなメロディを展開する曲。
サビのギターがテンションで鳴らす音が心地良い。
ギターソロは入りの部分だけ聴くと普通っぽいが、何と2小節分の全く同じフレーズをソロパート中弾き倒す。やりやがった。絶妙にカオス。
2度目に聴く時にはそのフレーズが曲の頭から必然的に乗るリフとして脳内で鳴る。
アウトロはエフェクトを駆使してサイケなムードに。
10.T/M ★
小物インスト。これは意図がよく分からない。
好き放題というほど奔放にやり倒している印象もなく、半端な曲。
11.寄生虫×ベイビー×ゴー! ★★★
静動はっきりした曲。
歌メロのリズムの組み方自体はあまりいじらず、メロディだけすげ替えてサビを作っている。メロディもまあ似たり寄ったりだが。
いきなり「寄生虫 おまえのことさ」とくるが、だんだん逢えて嬉しいとかぬかしだして、サビでは結局「寄生虫ー!!」と叫ばれる。
とにかく今作中一貫して自他問わずに毒をまいて回っているので、不安定なようで安定している。
不安定な状態で安定している、という方が正しいか。
12.マヌケなクインテット ★★★
キャッチーだがコード進行から展開まで普通な曲。
「エンドレスでフレーズを」「ココロの中にはもう銭ゲバの亡霊が」といった具合に、詞の自虐ぶりは非常に分かり易い。
とはいえその皮肉が自分達だけに向けられているとは限らないのが今作でもあるが。
自分を卑下しながらも周囲をも広範囲で巻き込んでいく今作らしい曲。
13.電波にのって ★★
今作中歌詞が最も抽象的なラストナンバー。楽曲はブラー風。
意味深なフレーズが次々登場し、恐らく須藤本人的にはラストに配置すべく配置された曲なのだろうが、
正直洞察が及ばないため個人的には印象の薄い曲。そのうち何かのタイミングでお気に入りになるかもしれないが。
深読みを楽しみたい人向け。
クーラシェイカー的な宗教色のあるアウトロで締め。
総評.★★★★
個人的にCIAと略称で呼んでいる髭の4th。
前作「PEANUTS FOREVER」収録の「ランチ」で歌われていた「林檎 ピーナッツも 皿まで食べちまおう」の林檎のほうなのかも。
ベタベタした印象の「PEANUTS…」と比べるとさすがにシャキシャキしており、甘くて消化が良いが毒入り、という作品。
技術は向上したが、腕に自信をつけた分だけ、音作りのみで魅せる曲が減った印象。
怪しさや泥臭さが抑えられたクリアな音作りがもたらした恩恵は、やはりキャッチーなメロディがシンプルに聴き手に届くようになったことか。
随分聴き易くなり、大衆的なバンドになった印象。
そこはそれで、甘いラブソングも応援歌も願い下げの詞世界が世間に媚びへつらわない姿勢を表しているが。
須藤の作曲はコンパクトでキャッチーだが長いメロディを作るのは苦手で、
サビメロの導き出し方が上手いいわゆるBメロメーカータイプでもないため、楽曲はマンネリ気味。
押韻のリズム感を軸にすると自然と短いメロディの反復が増えるのは避けられない、という部分もあるが、
相変わらず聴き手次第ではどの曲も同じにしか聞こえない側面はある。英語圏のバンドっぽい手法ではあるが。
髭は技術を目的化するタイプのバンドではないため、いざという時に個人技で局面を打開できる存在(テナーでいう日向)がいないのも苦しい。
しかし斎藤のギターは髭の音を構成する要素として幾つかの決定的な仕事をした印象。
アルバムトータルのカラーもまとまっている。
誰が聴いてもほぼ同じ特徴を感じ、好きな人は同じ部分に惹かれ、嫌いな人はこぞって「そこがイヤ」と言いそうな作品。
(★5個が満点。)

Reviewer:21st. 59-62 名無しのエリー2009.03.05.

1.ダイアリー ★★★☆
いきなりマイルドな歌から入る、ドリーミーでベルベッツな曲。
後ろに入ってる鉄琴の音とか、トレモロが深く掛かったギターの音とかが今回の路線を表す。
歌詞は前作の自虐路線を保ったままダウナーで正直になったようなやるせなさがある。
アルバムのテーマである「夢」という言葉が、諦観に満ちた情感で歌われる。
2.家 ★★★★★
力強くもゆったりとしたバンドサウンドが展開される、USインディっぽいっていうかスマパンの『Today』とかっぽいナンバー。
ギター二本の住み分けが凄くそれっぽくて良い。サビのリフレインがマイナー調になるところが非常に良い。
帰る家を見つけたと言いながらもやはり「毎日は曖昧なDAY&DAY」と、どこか迷いとそれに対する諦めを思わせる歌詞。
3.オーバーグラウンド/アンダーグラウンド ★★★
前作『Chaos In~』よりも前の作品にあったようなサビ無しな感じで進んでCメロで世界が広がる感じの曲。
須藤のボーカルの後ろでずっとコテイスイがコーラス(?)をしているのが印象的。
「辺りは暗くて 見失ってしまうよ」と、迷ってる感じがここでも吐露される。
4.髭よさらば(album ver.) ★★★
先行シングルにも収録されなんかタイアップもついた、髭らしい良い意味でジャンクなナンバー。
ドラムが重たいところなんかはサバス風。ギターもそんな感じで重く鋭かったり。しかし全体としては非常にファニーな仕上がり。
シングル盤との違いはそんなに感じない。PVの悪ふざけ具合は大好き。
5.ミートパイ フロム ロシア ★★
彼等の初期によく見られた、なんらかのリフ(今回はベース)を軸に作り上げられたねじくれナンバー。
しかしいかんせんフックが無い。盛り上がらない感じを狙っているのだろうけど、適度なアングラ感は出してるけどなんか足りない。
終盤のファズいベースは良い。
6.D.I.Y.H.i.G.E. ★★★
今作では唯一のシンプルなグランジナンバー。相変わらずシンプルなリフの上にしっかりポップなメロディを載せてくる。
途中からのサイケな展開によってアルバム内での整合性を維持している。サビの拍子足らずな合唱がポイント。
7.タイポグラフィー ★★
彼等のアルバムに必ず一曲はあるインスト。ベースの宮tea作曲。
このアルバムのテーマは「夢」らしいが、この曲を聴いてる限り、やはり奇麗な夢ではなく、かなり不安定で自家薬籠的な感じがする。
8.嘘とガイコツとママのジュース ★★★☆
ずっと繰り返されるギターやベースのリフやメロディ、そして単調なリズムで展開される、今回のカオス曲。
一応サビもあるがそれも突き抜ける類のものではなく、とてもねじれている。
ベルベッツの『Sister Ray』とかゆら帝のここ数作とかにも繋がるようなカオス具合。個人的にはもっとぶち壊れて欲しかったかも。
9.夢でさよなら(album ver.) ★★★☆
先行シングルにもなった曲。「歌謡曲っぽい」と自称するメロディとテンポ正しくゆったり疾走するギターロックが噛み合った曲。
淡々としたリズムギターと所々でユニークにぶれるリードギターのズレが良い。
歌詞を見ると、確かにこの曲が先行シングルというのは正しかったのだなあと思わせる。
夢で得る自由と諦観に満ちた歌詞は確かにアルバムのテーマを表している。
シングル盤とはMixやギターの歪み具合などが異なる。
10.イカしてる俺は××× ★★
何だこの曲……?ペイヴメントのアルバムに時々入ってるぶっ壊れた勢いとユーモアだけで出来た曲みたいな感じ。歌詞は自分に対する皮肉か。
暴走というよりは、迷い狂ってるようなイメージに思える。
11.ミスター・タンブリンマン  ★★★★
アルバムの締めは、だらしなくも情け無いリフと拍子狂わせな歌が流れるAメロから穏やかに浮遊するサビに移行するミドルテンポな曲。
ドリーミーなサビからまたリフに戻って行くところのぐにゃっと潰れていくような感じがなんとも虚しい。
そして最後のサビの後の高揚感。ギターのサイケな音作り。
夜明けという「夢の終わり」を、ロマンチックでどこか逃避的な世界観でもって歌うのもまた非常に虚しい。
総評.★★★☆
髭(HiGE)のメジャー5枚目のアルバムはセルフプロデュース(前作前々作はアイゴンこと曾田茂一をプロデューサーに迎えて作られている)を
何故か前面に押し出したアルバムとなった。
前作が切れ味とポップさに長けたアルバムであったのに対し、
珍盤『Electric』を挟んだ今作は「夢」をテーマとしたサイケでドリーミーな感じ(これは昨今のネオサイケブームの影響か)を強調している。
しかしその夢は逃避的で、その逃避は酷く諦観に満ちていて、おまけに楽曲は初期の自由なサイケ感なんかも標榜しながら、どこか力の抜けた作りで、
なんとも弱々しくも切ない、悪く言えば「迷走」しちゃってる雰囲気が香る。
確かに前作のはっきりとした作風が髭のキャラクターをある程度作り上げてしまったので、そこからの脱却の必要はあったのだろうが、
それにある程度苦しんで(あるいはその苦しみを利用して)いるような感じがした。
前作、今作と来て、なんだか髭というキャラクターが行き詰まってしまいつつあるような感じはする。
だからこそ、これから彼等がどんな路線に進むのかは悩ましいとともに、非常に興味深いところでもある。
(★:2点,☆:1点の計10点満点。)